両者の前回対戦は半年あまり前、第10節までさかのぼる。結果は1−0、ダヴィの鮮やかなシュートによって鹿島が取り、敗れた湘南は公式戦4連敗を刻んだ。ただ、曹貴裁監督をはじめ選手たちも試合後に口を揃えたように、湘南にとっては自分たちのスタイルをコレクティブに表現できたという意味において糧となる戦いだった。単に黒星を並べただけではないことは翌節の結果にも示された。F東京をホームに迎え、逆転勝利を収めたのである。
時が経ち、リーグ戦も大詰めを迎えたいま、鹿島は4位、湘南は16位と立ち位置こそ違えど、両者はそれぞれ目標に向けて勝点3に対する想いを強めている。「内容がいいだけでは終われない」前回の鹿島戦にフル出場し、先発の機会も増えている亀川諒史は言う。
「鹿島は強力な2トップをはじめ個々の技術が高い。今は特に好調だし、立ち上がりの得点も多い。でも僕らもあの時から成長している。最初から飛ばしていかなければいけない。戦術以上に球際や個の部分が大事やと思います」
前節を振り返る。湘南は敵地で新潟に挑み、早い段階で先制を許し、先に3点を奪われた。終盤2点を返し、さらに追いつき追い越しそうな場面をつくりだした粘り強い戦いは見事だったが、届くことは叶わなかった。かたや鹿島はホームに川崎Fを迎え、前半20分に先制すると、その後も効果的に加点し4−1で圧倒した。対照的にも映る試合の推移に、しかし等しく先制点とその先のゴールの行方の大きさが示唆される。
前節からの2週間、湘南は最後の一歩や1対1の対応、また攻撃の最後の部分について意識を高めながらトレーニングに取り組んだ。『歯を磨くように』と、折に触れ指揮官が口にするように、何かを変えるのではなくいっそうの集中力をもって臨んできた。曹監督も、状態の上がっている鹿島に対するリスペクトを口にしつつ、「毎日積み上げてきたことを出していくだけ」と穏やかに語っている。
今節、鹿島には出場停止がない一方で、湘南はウェリントンとハン グギョン、古林将太が出場できない。だが、といって揺らぐことはない。「誰が出ても自分たちのスタイルを出せるし、チームの中では出場停止をマイナスに捉えてはいません」と亀川も語っているように、逆に出場の機会を得る選手たちの意欲はより高まろう。
「勝利以外、考えられないので」そう語るのは菊池大介だ。ピッチに示す気迫が思いの丈を裏付ける。
「いいゲームは多いけれど、勝てていないから今の順位にいる。なによりも結果を求めなければいけない。そのために自分のやるべきことをしっかり果たしたい。鹿島は個々の能力も高く、間違いなく強いチーム。自分たちのやってきたことをすべて懸ける気持ちで闘いたい」
リーグ戦2連敗中だが、黒星のなかにも相手を脅かすだけの好機を幾度もつくってきた。チームとして最後を突き詰め、今節こそゴールに、勝利に結びたい。
以上
2013.11.09 Reported by 隈元大吾
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