前節で残留を決めた富山と、昇格プレーオフ進出の可能性が消えた横浜ＦＣがぶつかる。少しでも良いかたちでシーズンを締めくくるべく、ともに新たな気持ちで勝利を目指す一戦だ。

富山は前節・東京Ｖ戦を２−１で快勝。前半戦途中まで採用したオリジナルの［３-６-１（３-１-４-１-１）］のフォーメーションに戻し、躍動感あふれるサッカーを展開した。前からボールを奪いにいく守り、テンポのよいパスワークから一気にスピードアップする攻めが機能。ＦＷ苔口卓也の今季10点目と、ＭＦソ・ヨンドクとのコンビで中央を突破したＭＦ白崎凌兵の３試合連続ゴールによって難敵を下して２連勝を飾った。

今季開幕時には躍進の予感があった。この魅力的なサッカーが多くの注目を集め、新たなファンを数多く獲得するに違いないと思った。勝負の世界は甘くはなく、結局は苦しい時期のほうが長かったが、前節のパフォーマンスが示すようにチームは成熟期を迎えている。少々遅くはなったが、「汗をかきアグレッシブに、いずれ美しく」を合言葉に日々の鍛錬によって到達した最高の姿を残り３試合で披露してくれるはずだ。自信をもって家族や友人を誘い、スタジアムに足を運んでほしい。「今のカターレは面白い。そして強くなった」と。

残留はノルマであり、達成した今となっては通過点でしかない。安間貴義監督は今週のミーティングで、残留について一切言及しなかった。「チーム力向上のためのトレーニングを今までと変わらずに続けていく。そして、人の心を動かすようなゲームを見せたい」と言う。ソは「自分たちのサッカーをやることの難しさをずっと感じてきたが、今は調子の良い選手がそろっている。それぞれが自らに期待されている水準のプレーを臆せずにやればよい。僕もチームの出来は自分次第であるという責任感をもってやる。あと３試合すべて勝って、クラブの連勝記録（３連勝）を更新したい」と話した。

横浜ＦＣは前節・松本戦に１−３で敗れ、昇格の夢が潰えた。８月下旬から７戦負けなし（４勝３分け）で望みをつないできたが第38節・千葉戦、前節と連敗を喫した。精神的なダメージは小さくないと思われるが、前節にＪリーグ最年長ゴール記録を更新（46歳８カ月）した三浦知良をはじめ経験のある選手がそろっているだけに立て直してくるだろう。山口素弘監督も「プライドをもって残り３試合を戦おう」と前節直後に選手に伝えたそうだ。プロフェッショナルの意地を示すうえで大事な一戦といえる。

富山の安間監督は「横浜ＦＣは昨季の４位で、自動昇格を狙える戦力を整えた強力なチームだ。うちがボールを奪いにいっても交わされてしまう可能性があり、我慢強くやる必要がある」と話した。第20節の前回対戦で１ゴール１アシストをマークして横浜ＦＣに勝利をもたらしたＦＷ黒津勝には今回も注意がいる。同じく先制点につながるロングパスを供給した中島崇典と、市村篤司の左右サイドバックの攻撃力にも注目だ。

富山のホームゲームは残すところ今回と最終戦のみとなった。この２試合で計１万１千人以上が来場すると、シーズンの１試合平均入場者数が過去最多だった2010年の4463人を上回る。「いずれ美しく」を目指した2013カターレの歩みを確かめ、ともにクラブ史に新たな１ページを書きくわえよう！

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2013.11.09 Reported by 赤壁逸朗