長かったリーグ戦もいよいよラスト３試合。この第４０節では現在勝点５７で８位につける札幌が、同７９で２位の神戸をホームで迎え撃つ。今節の結果によっては神戸の２位以内が確定し、来シーズンのＪ１昇格が決定することになる（この試合で引き分け以上の結果を得ることができれば、３位京都の結果は影響せず）。また、札幌のほうはプレーオフ進出圏内の６位との勝点差が３という立場。どちらにとっても負けられない重要な一戦だ。

札幌は前節、ホームで千葉と対戦して１−０のスコアで勝利。プレーオフ進出圏内の相手との直接対決でもあり、ほとんどの選手が「絶対に勝たなければいけない」と強く意気込んだ一戦を見事にモノにしてみせた。

後方からしっかりと攻撃を組み立ててくる千葉の手厚い攻撃の前に押し込まれる時間帯もあった。「特に前半の最後のほうに全然、相手ボールに行けない、奪えない、奪ってもすぐに失うという苦しい時間が続きましたが、そこで失点をしなかったことが勝因につながった」と財前恵一監督も振り返る。だが、チーム全体が粘り強く守備を演じ、拮抗した展開へと持ち込んだことで相手のミスも誘発し、内村圭宏の決勝点を引き出したと言っていいだろう。

前節は試合開始時点での６位（プレーオフ進出圏）との勝点差が６。残り試合数を考えると、千葉に敗れた時点で６位入りの可能性は大きく遠のく状況だった。それが、我慢強く勝点３を掴み取ったことで、終わってみると勝点差を３まで縮めることに成功したのである。プレーオフ進出の可能性も大きく残された。

ただし、今節を前に指揮官はこう口にする。「勝点差を縮めることはできたが、ひとつでも負けると一気に厳しい状況になることは変わらない。絶対に勝たなければいけない試合になる」。もちろん選手たちも同様だ。「負けたら６位入りの可能性がゼロに近くなる」と奈良竜樹。だが、奈良はこうも続ける。「勝つこと以外は考えなくていいので、やることはハッキリしている。その意味では、やりやすいかもしれない」と。札幌は一戦必勝の総力戦で挑む構えである。

一方、初冬の北海道に乗り込んでくる神戸の前節は、ホームで京都と対戦して０−０の引き分け。勝てばホームでＪ１昇格を決定させることができていただけに、安達亮監督も「今日の昇格を逃してしまって、それが一番残念」と悔しがった。

しかし試合の内容に目を向けると、順位がひとつ下の京都に対して多くの時間でゲームをコントロールし、チャンスも多く作った。守備面でも決定的なピンチになる場面はあまりなく、「全体を見て、非常にいいゲームができた」と指揮官は強い手応えも感じたようだ。

そして安達監督はこうも発している。「残り３試合もこれくらいの試合がきっちりとできれば、自然と昇格も付いてくるし、その上も付いてくるかなと思っています」。チームのとしてのクオリティ、パフォーマンスに関してはある程度のところまでは到達しており、あとはシーズンの総仕上げ。自分たちの力を出せれば、問題なく当面の目標は果たせるという感触なのだろう。ホームで大きな歓喜を得られなかった悔しさはあるだろうが、万全の準備を整え、札幌ドームでミッションクリアーをするつもりだ。

さて、そんな一戦だが、ともに昇格レースの輪の中にいるとはいえ、神戸のほうは最低でも勝点１を積みさえすれば２位以内は決まる。その意味では絶対的に勝点３が欲しい札幌とは、僅かながら状況が異なると言っていいだろう。加えて札幌は現在１５得点のエース内村が出場停止となっており、「（内村の）代わりに誰を置くかによって、それ以外のメンバー構成も変わってくる」（財前監督）という状況。そうした部分を踏まえると、アウェイの神戸が札幌のメンバーや出方をうかがいながら慎重に試合に入る展開がまずは予想される。ただし、前出の安達監督のコメントを振り返ると「その上もついてくる」とある。つまり、神戸は２位以内確保だけにとどまらず、Ｊ２制覇をも同時に視野に入れているため、立ち上がりからアグレッシブに前に出てくる可能性も十分にある。

いずれにせよ、昇格まであと一歩に迫った神戸の出方が試合展開を左右する大きな要素になる。そして札幌のほうは敢えて言及するまでもなく、ホームの大歓声を背に積極的に前に出ていくはずだ。

試合当日（１０日）の札幌市内は冷え込む天気になりそうではあるが、札幌ドーム内は間違いなく、熱い戦いが演じられるはずだ。

以上

2013.11.09 Reported by 斉藤宏則