先制点を狙う鳥取のプランどおりの立ち上がりだった。しかし岡山にとってはポゼッションしながら攻めきることの出来なかった過去数試合よりは、攻撃の形を作ることは出来た。「じゃあどう点を取るのか、というところは、我々がもっと踏み込んだ戦い方をしなければいけない」と岡山・影山雅永監督。「なかなか点が入らなくて、どうしようかと思っていた」と1アシスト、１ゴールの活躍をした金民均。

本降りとなった雨の中で始まった。岡山は、この試合でＪリーグ100試合出場を達成した桑田慎一朗と金民均、押谷祐樹の３トップで、田所諒と田中奏一が左右ワイドで先発。鳥取は、久保裕一と住田貴彦の2トップに、廣田隆治が右ＳＨのポジションに入った。出だしから廣田がボールを奪い、左サイドに持ち込んで永里源気に繋いでフィニッシュに持ち込み、また２人がかりの守備で高い位置でボールを奪うなど、鳥取のスタートダッシュが目立ち、岡山は自陣に押し込まれる時間が続いた。岡山は枠を捉えた鳥取のシュートをクリアし、その勢いに冷静に対応しながら、裏に抜け出すチャンスを何度か作り、セットプレーからバーを叩く近藤徹志のシュートもあったが、互いにスコアレスで折り返した。

後半立ち上がり、岡山は金民均からのボールを桑田が前線でアクセントをつけ、走り込んできた島田譲が鋭いミドルシュートに持ち込む。枠を外れたが、これが岡山の攻撃のギアを上げる合図となった。「前半、シュートが打てなかったので、後半はシュートを打っていこうと。ユズル（島田）のミドルシュートなんかが流れを作ってくれたんだと思います」と押谷。さらに、「攻撃のスピードを上げてこい」と後半15分、投入された石原崇兆が、サイドでケアに当たりながら起点を作る。その後、リズムはあるがゴールの生まれない拮抗した状態がしばらく続いたが、ついに後半36分、左サイドにいた金民均からのスルーパスが押谷に繋がった。

みごと先制ゴールを挙げた押谷はこう振り返る。「いいボールが来て、決めるだけでした。キーパーと1対１で、キーパー寄りでちょっと怖かったんですけど」。この先制点をアシストした金民均は2分後、石原からのパスを受け、右サイドから抜け出してゴール。「オシ（押谷祐樹）が先制点を決めて、守るのではなくて、もう1点取りに行こうという空気になった。そしたら取れたので、これはもう本当に最高だった」と金民均。

先週、練習場で岡山の選手に話を聞いた際、竹田忠嗣と島田譲が同じようなことを話していた。「自陣で攻められているところから奪って、ノッキングしないでボールが回った時はチャンスになっている。うちの前は結構スピードがあるので。あえて食い付かせるボールの動かし方も必要かもしれない」と竹田。「ボールを持って動かしてうまくゴールすることはほとんどないと思うので、奪い返した高い位置から攻めたり、相手が準備できない状況で攻めたり、そっちでいけた方がいいかなと思います」と島田。そういう意味では、岡山の目論みどおりにゴールを奪えたゲームだった。しかし前半38分、奪って持ち込んだ実信憲明のシュートを、中林洋次がはじき出すことが出来ていなかったら、そして前半40分、鳥取のＣＫのこぼれ球をもしも千明聖典がヘディングで掻き出していなかったら、流れは鳥取に傾いていただろう。

シュート数は岡山の「９」に対して、鳥取は「11」。鳥取はセットプレーのチャンスも多かったが、決めきることができなかった。スピードがあり、ルールに沿って積極性を表現できるチームが、Ｊ２残留から一歩後退する敗戦となった。岡山は、複数得点が取れたことと同様に、無失点でゲームを終え、プレーオフ圏内出場への望みを繋ぐ大きな意味のある勝利を掴んだ。どちらも残り３戦に向け、存分に戦う姿が浮かんでくる。

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2013.11.04 Reported by 尾原千明