2013年度J2レギュラーシーズンもラスト4試合。特に7位の松本にとっては5位の長崎、6位の徳島との勝点差は3に縮まり、より明確な目標を見据えて戦える段階になってきた。しかし、同時にこの時期に重要なのは星勘定ではなく、目の前の一戦だ。特に、山口素弘監督、反町康治監督の両知将の激突となるこのカードは、常にプレー、采配、メンタルの総力戦となる。これまでの3回の対決は、横浜FCの2勝1分と横浜FCが優位に立っているが、内容を見るとその差は無い。反町監督は前節の福岡戦の試合後に「ニッパツ三ツ沢で暴れてきたい」と意気込みを述べたが、横浜FCのキャプテン・シュナイダー潤之介も「松本から多くのサポーターが来るが、その声援を悲鳴に変えたい」と応戦。ヒートアップする90分になる。
ポイントとなる試合を通じた駆け引き。それが如実に表れていたのが、昨年のニッパツ三ツ沢球技場での対戦(2012年9月17日J2第34節 1-1)。横浜FCが森本良のゴールで先制するが、34分に早くも塩沢を変えると、ハーフタイムには渡辺匠(現・横浜FC)を投入するとともにシステムを変更。試合のペースを一気に逆転させ、70分に木島徹也の同点ゴールで引き分けに持ち込んだ。選手交代とシステム変更で、試合の流れを変えた「マジック」に、山口監督は「大変、勉強になった」という感想を残した試合だった。さらに昨年、今年とアルウィンで戦った試合も、それぞれ駆け引きの妙で接戦となった試合だった。
今節における駆け引きのポイントは、攻守のバランスの取り方だろう。松本は、3バックを基本とするが、その弱点であるサイドのスペースを使われないように、厚い中盤がバランスの良い守備を展開している。一方で、攻撃になった際には塩沢勝吾、船山貴之、岩上祐三の3人を起点に、鍛え上げられた連携でフィニッシュまで持って行くことができる。そして、守るところと行くところの判断が良く、成熟しつつあるチームと言える。前節の福岡戦でも、後半15分の選手交代を機にペースを掴み、岩上のロングスローを絡めて逆転勝ちに繋げている。
この成熟した松本を相手に、横浜FCは攻守のバランスをどう崩すか。シュナイダー潤之介は、第37節に、神戸相手に松本が0-7で敗れた試合を引き合いに出して「前半から果敢に仕掛けることが大事。リードすれば相手は堅い守備よりも点を取りに来なければいけないくなる」と、先制点を大きなポイントに挙げている。さらに先制点につながるポイントとして「船山君がいやらしいところにいるし、塩沢君のゴリゴリ来るところでセンターバックがどれだけ跳ね返せるかが大事。相手がヘディングでクリアしたボールのセカンドボールを拾って、速く、強く出られれば、流れはうちにくると思う」と述べているように、J2第5位の42失点の守備をベースに、機先を制したいところだ。
「速く、強く出る」という点では、2試合連続ゴール中の黒津勝に大きく期待がかかるところだ。「自分のスピードで相手が引いてくれれば中盤が空くし、中盤が空けばいいボールが来る。いいボールが来れば背後を狙える」(黒津)というように、切り替えの後に松本守備陣のバランスを崩すキーマンになる。
松本としては、前節のアディショナルタイムの逆転ゴールを無駄にしないためにも勝点3しかあり得ない試合。横浜FCも数字上の可能性がある限り、当然勝点3をとり続けないといけない。最後、モノを言うのはメンタル。知将・反町監督の記者会見コメントは、戦術的なことよりもむしろメンタル面のほうが多い。それは、この終盤で勝敗を分けるディテールがメンタルの強さでもたらされるからだ。両チーム、両監督の総力戦は、必ず見応えのある試合になるだろう。
以上
2013.11.02 Reported by 松尾真一郎
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