愛媛にとって、今節の水戸戦はおよそ1ヶ月ぶりのホームゲーム。天皇杯3回戦は既に敗退しており岡山、山形とのアウェイ連戦を終えて久々にニンジニアスタジアムでホームゲームが行う。その試合を控えた金曜日、練習の取材で久々にニンスタを訪れるとバックスタンドの工事は着々と進んでおり、日曜日に訪れたサポーターは前回の東京V戦とは違ったスタジアムの光景を目にして、時の流れを感じることになるだろう。
冒頭から話が少しそれてしまったが試合の展望に話を戻すと、まず愛媛は東京V戦後の1ヶ月間、今季初の3連勝を逃したばかりか連勝の勢いを継続することもできなかった。渡邊一仁は「岡山戦、山形戦いずれも全然ダメだった」とこの2試合を振り返るが、最初の岡山戦こそ加藤大のフリーキックでドローに持ち込み、終盤に猛攻を見せたものの続く山形戦は0−3の完敗。その山形戦について東浩史は「跳ね返し切れず、セカンドボールを拾えず、僕自身もほとんどボールに触れなかった。自分たちの形を出せずに終わってしまった」と反省しきり。「何もできなかった」と振り返る石丸清隆監督はチームに再び推進力を与えるべく、スタメンの大幅な入れ替えも視野に入れて今節の水戸戦に挑む。
対する水戸は8月18日の岐阜戦以来勝利から遠ざかっており、こちらも状況はよくない。前節の富山戦もアディショナルタイムに一矢報いたものの、1−2で敗れている。それでも今節は勝ち星がない中で、愛媛には9月7日の天皇杯2回戦で競り勝ったことをポジティブにとらえたい。PK戦での勝利であり、両チームともリーグ戦とはメンバーを変えていたという事情はあるが、そこは今節にも通じるところがありそうだ。というのも、水戸で言えば天皇杯2回戦の前後は控えに甘んじていた三島康平がチャンスをつかみ、ゴールという結果を出した。リーグ残り4試合となった今節は、両者とも昇格も降格も縁遠い状況下でもチームが勝つことを目指すのは大前提だが、選手個人としては来季に向けたサバイバルレースでもある。この試合でチャンスを得る選手たちは天皇杯2回戦と同様、もしくはそれ以上に貴重な出場機会が訪れることになる。
その中で愛媛は今節、前節の戦いぶりも踏まえた上で様々な選手にチャンスが巡ってくることが予想されるが、水戸の三島に対して注目するなら渡辺亮太もその1人になる。ピッチに立つと他の誰よりも頭ひとつ抜きん出て、いるだけで存在感を出せる特別な選手。ここ数試合は途中出場で存在感を増している。リーグ序盤戦はどうしてもサイドに流れてしまうことが多く、肝心な場面でゴールの前にポジションを取れず相手に怖さを与えられていなかった。それでも「監督から相手や味方の状況を見てプレーをしろ、ということを言われ続けてやってきた」という成果がここに来て現れてきた。シュートに対する積極性も増しているし、得点の匂いもしてきた。まだまだポジショニングやゴール前での駆け引きは学ぶべき点が多いストライカーだが、前節の山形戦でも見せたパンチ力のあるシュートやヘディングの強さは彼が持つ天賦の才能。残り4試合で、と言わず今節にもJ初ゴールが生まれれば、それは彼にとってもチームにとっても大きな得点になる。
さらに、どうしても堅い試合になりがちな愛媛と水戸の対戦だけに、彼らストライカーの出来や先制点は勝負に大きな影響を与える。特に今季の愛媛は先制点を奪われるとあまりにもろく、逆に先制点を奪えば自信を持ってプレーをして先行逃げ切りの形を築いてきた。もちろん逆転ができるたくましさが身につけばそれに越したことはないが、勝てる形を持っていることはチームにとって1つの財産。まずは今節も先制点を奪い、さらに追加点を狙う今季の愛媛の形で勝利を目指してホームのサポーターと喜びを分かち合えるか。愛媛のホームゲームは今節を含め残り2試合。その至福の時を味わえるチャンスも、あと2回しかない。
以上
2013.11.02 Reported by 近藤義博
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