10月27日の第38節・横浜FC戦。千葉は87分のケンペス選手の決勝ゴールで2−1と競り勝った。
その日のニッパツ三ツ沢球技場には、千葉の前身の古河電工サッカー部や日本代表でプレーされた千葉の元クラブスタッフも来場されていた。鈴木淳監督の記者会見が終わったあとに取材エリアで偶然お会いすると、千葉の勝利を喜びながらもケンペス選手の得点をアシストした竹内彬選手のゴール前でバウンドしていたクロスについて「あれは玄人から言わせるとミスキックだろうな。まあ、竹内もプロだから、聞かれたら『狙い通りでした』って答えるかもしれないけど」と言って笑っていた。ちなみに、横浜FCの山口素弘監督は記者会見で「まさか、あのようなボテボテのクロスが上がってくるとは思っていなかった」と話されていたようだ。
あの時間帯にセンターバックの選手があそこまでオーバーラップし、クロスを上げたプレーについては筆者もぜひ聞きたいと思っていた。取材エリアに現われた竹内選手は旧知の横浜FCの選手やスタッフと話をするのに忙しかったが、少し離れたところで話が終わるのを待っていた筆者に気づいたらしく、話が一段落するとそばに来てくれて(ありがとうございます!)、ケンペス選手の得点をアシストしたシーンについて次のように話した。
「展開的にボールを奪ってパスを出したらスペースが空いていたので、そのまま上がって行こうと思いました。得点につながったのは良かったけど、ゲームを全体的に見たら修正しないといけないところがある。前半はウチの背後を突かれましたし、DFの自分としてはそっちのほうをしっかり反省して次のゲームに生かしたいなと思います。相手のパスの出どころにウチのプレスが掛かれば、それが一番いいですけど、掛からない状態でもしっかり守らないといけないので、そこは修正したいと思います。
クロスについて? クロスを上げた場面はまず(得点の)可能性がゼロのボールを絶対に蹴らないように(苦笑)、しっかりとゴールエリアというかあの付近に入れることだけを意識していました。特別狙ったわけではないし、ボールの勢いが余り過ぎて逆サイドに行ってしまったら絶対に得点は生まれないので、とにかく可能性がある場所に入れようと思いました」
「狙ったわけではない」と正直に話し、攻撃面への貢献よりも失点をした守備面について自ら語ったのは、「ボクは守備の人間なので」と口癖のように言う竹内選手らしかった。
横浜FC戦で決勝ゴールをアシストしたのがセンターバックの竹内選手ならば、田中佑昌選手の先制ゴールをアシストしたのはダブルボランチの一角で普段はどちらかといえば守備的な役割の佐藤健太郎選手だった。
田中選手の得点は33分だったが、佐藤健太郎選手は10分にも得点シーンと同じような位置から田中選手を狙ったスルーパスを出していた。そのパスはグラウンダー気味で横浜FCのDFにカットされたが、試合の序盤は千葉のグラウンダーのパスが横浜FCの選手に引っ掛かるのが目についた。もちろん横浜FCの守備の良さもあるだろうが、ボールが速く転がりやすいように千葉が試合前に水を撒くフクダ電子アリーナのピッチの芝よりもニッパ球のピッチの芝はやや長めで、さらに乾いていた影響も少しあったかもしれない。そして、先制点は浮き球のラストパスから生まれた。
「本当にラッキーです。(相手の)裏がチャンスやなというのはありましたし、とにかくボールを蹴っていれば何か起きるかなと思って結構アバウトに蹴ったんですけど、佑昌が粘り強くやってくれたので良かったです」
田中選手の話によると「あの形は練習でもそうだし、紅白戦でもずっと健ちゃんと狙っていた。それがうまくつながったかなという感じですね」と狙い通りだったようだ。
ちなみに、昨季、千葉に加入した佐藤健太郎選手の移籍後初ゴールは、昨季のJ1昇格プレーオフ準決勝・横浜FC戦で、試合会場はこのニッパ球。そのことに触れると、佐藤健太郎選手は「なんかいいっすね、ここ。なんでか知らないけど」と言ってニコッと笑った。また、佐藤健太郎選手は10月13日の天皇杯3回戦から、J2リーグでは10月20日の第37節から山口慶選手とダブルボランチを組んでいる。
「慶くんはすごくボールも取り切れるし、相手へのアプローチも速い。相手に対して圧力をすごくかけられる選手なのでそのサポートをして、慶くんが後ろに残っているのであれば僕がもうちょっと前に絡めればいいかなと思っています。特に意識しているわけじゃないけど、ちょっとだけ自分が前に出られればいいかな、くらいに考えてやっています」
そういった意識があったことで生まれた先制点のアシストだったのかもしれない。
この第38節で首位・神戸と2位・G大阪が勝ち、千葉のJ1自動昇格の可能性は完全になくなった。J2リーグの残り4試合、そしてJ1昇格プレーオフを勝ち抜くためには全員攻撃&全員守備の総力戦が必要不可欠だが、竹内選手と佐藤健太郎選手のアシストはそれに向けての一つの象徴となったように思う。
以上
2013.10.31 Reported by 赤沼圭子
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