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【J1:第30節 甲府 vs F東京】レポート:甲府が勝点3に匹敵する勝点1を守りきった青赤・城福浩ダービー(13.10.28)

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同点に追いつかれたら、心を含めたいろいろなバランスが崩れて負けるんじゃないかと、第17節のアウェイF東京戦の小雨降る味スタでの1−4の記憶がすぐに蘇った先制ゴール。

28分、CKの流れからジウシーニョが右から入れたクロスを佐々木翔が頭でちょこっと触って斜め45度角度でファーサイドに流し、ゴールエリアの角あたりに走り込んでいた平本一樹がワンタッチシュートでGK権田修一のニアを抜いた。佐々木は「常にチャンスのあるスペース。誰がいるか見えてはいなかったけど、入る鉄板の場所」とミートするよりも難しい擦らすテクニックでアシストした。「擦らしてくれればありがたいとちょうど思っていた所に擦らしてくれた。巧かったです、擦らし。試合に出るの久しぶりだし、外しても誰も文句言わないと思って、思い切って打ちました(笑)」とパトリックの出場停止で得た第17節・F東京戦以来の先発のチャンスにやった決定的な仕事。ただ、決まった瞬間に頭に浮かんだのは、第17節のアウェイF東京戦も厳しい戦いになると予想されながらも平本が先制ゴール(1分)を決めていたということ。先制したもののと追い付かれて前回対戦のように4倍返しでひっくり返されるんじゃないのかという気持ちを常に持ちながら続きを見ていた。

青赤の対戦だけあって試合前の山梨中銀スタジアム周辺はミズノかアディダスの違いだけで、この2色が支配していた。フードコートはどの店も長い行列ができていて、F東京のサポーターの旺盛な好奇心と食欲で儲けさせてもらっている感じだった。浦和とはここ何年も山梨中銀スタジアムでは試合をしていないので比べられないが、印象としてはF東京サポーターはスタジアムでも甲府周辺の街中でも客単価が最高でありがたいアウェイファミリー。そんなことを頭の中にメモしながら独りで記者席に向かって歩いていると、F東京サポーターが「You'll never walk alone」を歌い始め、試合が始まる緊張感を急に感じながら席に着いた。
始まってみるとなんだか甲府のペース。(F東京って立ち上がりがよくないんだった)と思っていると「あだっちー」が斜め前に座ったので別の緊張感と隣に座ることに失敗した悔しさで集中力が数分間乱されたが、やっぱり甲府が主導権を持っていた。ランコ ポポヴィッチ監督はこの時間帯のF東京のことを「天候(暖かく快晴)のせいか、眠ってしまっていた」と表現したが、それでもボールを握れば簡単には失わない、一発を含む個のレベルやコンビネーションは見せつけていた。28分に平本に先制ゴールを決められてからは、31分の東慶悟、44分の長谷川アーリアジャスールと決定的なシュートを打っていて、長谷川が、「完璧だと思っていたけどコースが甘かった」と言うように、もうちょっとで同点にできそうな流れで前半を終えた。

後半もF東京に決定機やその1〜2歩手前のシーンが続いた。押し込まれた甲府は立ち上がりからラインを上げられず、ボールを奪っても前に誰もいないし、メッシみたいな選手もいないから、誰かがスペースに走り込む前にボールを奪い返されてずっと守っている気分。メインスタンドの客席から「ライン上げて、ライン上げて」という声が聞こえてきたが、正に適切なアドバイス。心の中では同点になってもショックを受けない準備はしていたが、60分に柏好文が右サイドで絶妙のファーストタッチで出てくるDFをかわして、そのままスピードに乗ったドリブルでペナルティエリアまで進撃した姿を見ると、2−0に対する期待もムクムク。直後に、甲府の左サイドを徳永悠平に連続で突破されると城福浩監督はウィングバックを攻守のバランスが取れている福田健介から土屋征夫に、守備力に軸足を置く交代で対抗。平山相太を62分に投入していたF東京は、72分に甲府のスタジアムDJのオネーサンや公共放送のピッチレポーターのオネーサンが名前を紹介するときに噛むのを怖れていた「ネマニャ ヴチチェヴィッチ」をついに投入。高さもあるし、DFが足を出してもボールごと持っていけるブルドーザーのようなドリブルもできる2枚が加わった。城福監督が「(F東京は)後から入ってくる選手がギアを上げることができる」と話していた、ギアを上げる2枚は甲府のDFを急激に消耗させていった。

甲府はゲームの終わらせ方を決断する時間帯に入っており、城福監督は2枚目のカードに伊東輝悦を選択。土屋、伊東と39歳のまだまだまだまだ動けるベテランを投入してゲームは落ち着く流れに向かっていたが、80分についに同点ゴールを決められてしまう。
中央寄りの右サイドで徳永が持ち上がり、土屋がマークに行くと徳永は外に開いていた東にパスを出した。この瞬間、ここまで何度も決定機的なシュートを打っていた東に甲府の選手の意識が集中する。徳永も「クロスを入れると思っていた」とリターンパスを予測していなかったが、リターンパスが戻ると徳永はフリー。並みの選手なら決められない状況だったが、徳永は特上。落ち着いて打つ余裕のあったシュートは完璧なミートでファーのサイドネットにロケット弾のように飛んで行って、甲府の勝点3を破壊して勝点1の欠片を2つ作った。

(勝点1を守ればいい)と心の中で思いながら次の展開を見ていると、城福監督は保坂一成を下げて水野晃樹を投入する。ベンチに唯一残っていたディフェンシブな選手・盛田剛平を投入ではなく、水野ということはF東京から勝点1を取り上げて甲府の勝点3に作りかえるという意志。熱く熱い感じ。しかし、このギアは気持ちは見せたがピッチ状況と噛み合わず、最後の約10分間はほぼF東京タイム。GK河田晃兵は「地獄でしたね。声出してボールに行かせたり、みんなで声を掛け合って集中力が欠けないようにして勝点を守りました」という内容。河田自身もセーブや早い判断でピンチを防いできたが、74分の山本英臣のスーパーカバー、89分のCKからのピンチの連続を最後は伊東の顔面で防いだ場面を含め、無口なゴールバー含めた全員で守りきった。第17節を含む8連敗時からの違いの一つが、同点に追いつかれたとしてもそれ以上は崩れないという粘り。パトリックがいないことでよりその違いを感じることができたし、自信に加えることができたと思う。湘南が新潟に敗れたため、残留争いを考える上では勝点3に匹敵する勝点1となった。

記者が文字にするときはFやVをつけないと編集者が許してくれないが、F東京サポーターもヒロシも話すときに「東京」としか言わない当たり前感や誇りを、甲府にいる元Vの選手からも逆算で感じ取ることができた対戦。F東京は引き分けて順位を7位から6位に上げたが、3位・広島との勝点差は6ポイントから8ポイントに開いた。残り4試合でACL圏内入りすることの難しさは増したが、諦めれば終わりなので4連勝のために全てを尽くすだけ――捨てる神あれば拾う神あり。両チームのファン・サポーターから愛されるヒロシを巡るリーグ戦の2013年対戦はF東京4−1甲府(第17節)、甲府1−1F東京(第30節)で終結した。リアリスト・ヒロシの姿に、F東京サポーターは城福浩が複数の選択肢があった中でJ1では最低クラスの予算規模の甲府の監督になる決断をした理由を見出せるのかもしれない。「東京」とは違うヒロシを。そして、甲府のファン・サポーターは「東京」の頃のヒロシを甲府で見てみたい。今に不満があるのではなく、将来への希望。もちろんそれは似ていても同じではなく、ライチュウみたいな進化系のヒロシがあることを確信しているから。そのためには残留を決めて、毎年確実に小さな一歩でもいいから右肩上がりの道をヒロシと歩いていきたい。

以上

2013.10.28 Reported by 松尾潤
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