苦難を乗り越えて奪い取った大きな勝利だった。チームメイトの不祥事というクラブの危機に見舞われた群馬は、チーム一体となって岡山を迎え撃ち、そして勝利を収めた。クラブの信頼回復のため、J2残留のために全身全霊をかけて闘い抜いた選手たちは試合後、スタンドのサポーターに向かって深々と頭を下げて感謝の意を示した。
群馬は、試合開始前に植木繁晴代表ら幹部がピッチサイドで両チームサポーターに陳謝し頭を下げた。それに対して岡山サポーターから「ガンバレ!クサツ」という声が送られ、群馬サポーターはファジアーノコールで応えた。ピッチ上では対戦相手だが、ピッチ外ではJの舞台で切瑳琢磨する仲間。群馬は、岡山サポーターから送られた言葉を胸にゲームへ臨んだ。
序盤は群馬が劣勢を強いられた。岡山のタイトなプレスを剥がすことができずに自由を奪われると、捕られたボールをサイドへと展開されてラインがじわじわと後退。ボールを奪い返す位置が低い群馬はロングボールでの攻撃が目立ち、単発な攻撃を繰り返していく。だが必死に戦う群馬に、サッカーの神様が微笑みかける。
32分、群馬が前線で失ったボールがレフリーの足に当たって再び群馬ボールへ。そのボールを左サイドで受けた星野悟はペナルティエリア内で切り返して内へとステップを踏む。その瞬間、星野へパスを出した小林竜樹が叫んだ。「打て!」。ペナ左から放たれたシュートは鮮やかな軌道を描いてファーサイドのゴールネットへと突き刺さった。「あの声がなかったらシュートを打っていなかった」(星野)。小林の声、そしてサポーターの熱い思いに応えた星野のJ初ゴールによって、群馬は勇気を得た。
追加点も星野のアクションから生まれた。ゲーム終盤に差し掛かり始めた後半25分、群馬は青木孝太がカウンターからボールを運び、チャンスをつかむ。混乱する岡山DFの裏へ走ったのが星野だった。青木のスルーパスを受けて星野が放ったシュートはGKにブロックされたが、そのこぼれ球を小柳達司が豪快に蹴り込んでゴールネットをせり上げる。追加点を演出した青木は「カウンターがうまくハマった。あの時間帯に2点目が取れたことが大きかった」と振り返った。
後半32分、群馬は左CKから後藤圭太にヘッドを叩き込まれて1点を失ったものの、チーム一丸となった守備で岡山のパワプレーを弾き返していく。そして、4分間の長いアディショナルタイムのあとに試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。死力を尽くして戦った選手たちは次々とピッチへ倒れ込み、天を眺めながら勝利の味をかみしめた。今季初先発で2ゴールに絡んだ星野の目には涙が浮かんでいた。群馬は次節北九州戦の結果次第で最下位回避が決定、J2残留へ前進した。
プレーオフ進出への希望をかけた岡山は、群馬の執念に屈して痛恨の敗戦を喫した。序盤からボールを支配し敵陣へ攻め込んだもののバイタルを突破することができず、カウンターから2点のリードを許した。攻撃では押谷祐樹をはじめ途中出場の荒田智之らが不発。セットプレーの1点に留まった。押谷は「もっと連動した動きが必要だった」と肩を落とした。この結果で岡山のプレーオフ進出の可能性は狭まったが、チャンスが完全に消えたわけではない。「可能性がゼロになるまで戦い続ける」(影山雅永監督)。岡山のシーズンはまだ終わらない。
群馬は逆境を跳ね退けて大きな1勝をつかんだ。クラブにとってこの勝利は単なる1勝ではない。秋葉忠宏監督は「今回の事件でチームは多くの信頼を失ってしまった。この勝利はもう一度、応援してもらうための第一歩。信頼回復は簡単ではないが愛されるクラブになるため精一杯の努力をしていく」と誓った。この1週間、群馬に関わるすべての人たちがクラブの存在について考えた。そしてクラブが地域に支えられていることにあらためて気づいた。不祥事によって自らの足元を見つめ直した群馬は、サポーター、スポンサーとともに新たな一歩を踏み出した。
以上
2013.10.28 Reported by 伊藤寿学
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