土居聖真が相手のミスを見逃さずに落ち着いたシュートで先制点を奪うと、前半のうちに大迫勇也が追加点。後半にも山村和也、遠藤康がすばらしいゴールを決めて4−1の圧勝劇だった。
前節、浦和との直接対決に敗れたことは選手たちにも少なくない傷を残していた。「ショックは大きかった」と明かす青木剛。しかし、それを払拭する見事な試合運びを試合開始から展開する。
とはいえ、キックオフ直後にチャンスを得たのはアウェイの川崎Fだった。ルーズボールの競り合いに左サイドバックの中田浩二が飛び出し、その裏のポジションが空いたことを見逃さなかった稲本潤一が、飛び出した山本真希にパスを通す。山本の放ったシュートは強烈だったが、曽ヶ端準がこれを正面で弾き返す。鹿島が速攻に移ろうとしたがこれを奪われ、今度は大久保嘉人がミドルシュートを放つなど、1分以内に川崎Fが2度も決定機を迎える。その他にも小林悠が裏に抜け出すなど、アウェイチームの方が勢いを感じさせる立ち上がりを見せるのだった。
しかし、鹿島の闘争心が、その勢いを凌駕する。「取られたら2人で行こうと話していた」という大迫勇也と土居聖真が、ボールを失うと前線からすぐに相手のバックラインを追い回す。それに呼応して中盤の選手たちもボールを狩るように思い切り間合いを詰めてプレッシャーをかけていく。その勢いに気圧されるように、徐々に川崎Fの勢いは減退し、10分過ぎから鹿島が試合を優位に運ぶようになっていた。
「10分、15分すぎからは、自分たちで引いてしまったというか、何人かで形で変えてしまって、相手を受け入れてしまった」
試合後、風間八宏監督が解説したように、この時間帯から、鹿島の方がアグレッシブに試合を動かすことに成功したのである。
「こういう試合は何試合もやってきた。修正できないのが、いまのチームの課題」
大久保がほぞを噛んだように、試合の流れはその後変わらず、鹿島が4得点で川崎Fを退けた。
鹿島が川崎Fに4−1で勝利したのは07年9月1日以来のこと。あのときは前節に金沢でG大阪に1−5と大敗した直後だった。小笠原満男がイタリアから復帰し4連勝と波に乗った勢いを木っ端微塵に砕かれた仕切り直しの一戦。その大事な試合は、野沢拓也のフリーキックを皮切りに4−1と快勝し、消えたと思われた優勝への望みを繋げたのである。
今回は負ければ確実に優勝争いから脱落するプレッシャーがあったなか、土居聖真、伊東幸敏という若手が躍動した。むしろ、土居は先取点、伊東はレナトをシャットアウトすることで、チームに勢いを与えたと言っても過言ではない。セレーゾ監督が、就任当初から鍛えに鍛え、ここまで来たら大丈夫というところまで鍛え上げられた若手たちが、いま花開こうとしている。大きな補強に頼るわけでもなく、既存の戦力で陣容を充実させた指導力は見事だ。もっとタイミングが早ければ、優勝争いの先頭を走ることもできたかもしれないが、それでもまだなにが起きるかわからない位置に付けている。
「自分たちがまずは最後まで勝ち続けるということ。相手よりも自分たちのやるべきことをやり続ければ、と思っています」
監督を筆頭に、選手も残り試合をすべて勝つことに集中している。そして、この試合内容を続けていければ4連勝も難しくない。そう思わせるほど手応えを感じる試合だった。
以上
2013.10.28 Reported by 田中滋
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