本文へ移動

今日の試合速報

夏休みはJリーグに遊びに行こう! 全国で180,000名様ご招待!
夏休みはJリーグに遊びに行こう! 全国で180,000名様ご招待!

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第30節 名古屋 vs 大宮】レポート:2人の“闘将”の気迫が手繰り寄せた2カ月ぶりの勝利。執念に満ちたパワープレーを成功させた名古屋が、大宮に逆転勝利(13.10.28)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
サッカーボールは勝利への執念で上回った方に味方する。勝点3に飢えるチーム同士の一戦は、まさしくその定説通りの結果を呼んだ。あくまで勝利を目指して攻めの姿勢を貫き続けた名古屋が、弱気を見せた大宮を逆転。2人の“闘将”の気迫が、チームに2カ月ぶりの白星をもたらした。

前半の45分間は、両チームの現状と成績を反映するような展開が繰り返された。ともに上位を狙えるだけの戦力があることは、名古屋は夏の連勝を、大宮は前半戦の戦いぶりを見るに明らか。しかし現在の名古屋と大宮は、どこか歯車が噛み合わず、時に空転するような戦いに終始してきた。この日も守備の危ない場面ではどちらも体を張って切り抜けるのだが、攻撃面でフィニッシュの精度を欠き、なかなか得点に結びつけることができない。名古屋はケネディと永井謙佑の精力的なフォアチェックが効果を発揮するも、奪ってからの速い攻撃の意識が徹底されておらず、崩しの局面で意図が合わないこともしばしば。引いた位置からのカウンターを狙った大宮もノヴァコヴィッチやズラタン、チョヨンチョルの個人能力に頼る部分が大きく、攻撃に厚みを持たせるような意識はそれほど見られなかった。

均衡する展開に最初のくさびを打ち込んだのは、大宮だった。37分のコーナーキック。ノヴァコヴィッチがするするとペナルティエリアから抜け出したところを、キッカーの上田康太は見逃さなかった。「練習でやった形ではなかったんですが、ノヴァはああいう受け方をたまにするし、チャンスと思って良いボールを蹴ることだけを考えていました」。次の瞬間、待ち構えるノヴァコヴィッチにピンポイントのフィードが届くと、きっちりとミートされたボレーシュートが名古屋ゴールに流し込まれた。「あれはスーパー。誰が悪いとかない」(永井謙佑)と相手も脱帽するビューティフルゴールで大宮が先制。その後、名古屋もチャンスは作ったが、無得点のまま試合は折り返された。

ここでまず、名古屋のピッチ上の闘将が動いた。ハーフタイムが明け、後半のピッチにメンバーが散る中、田中マルクス闘莉王が前線のケネディを大きなジェスチャーを交えて鼓舞。その身振りからは「後半はもっとアグレッシブに行くんだ!」と、奮起を促しているように見えた。闘莉王は前半から積極的にオーバーラップを仕掛けるなど、チームに勢いを与えるべく身を削っていた。後半はさらにその傾向が強くなり、中盤から前で闘莉王が攻撃に参加している場面はいつも以上に増加。DFラインでの仕事もこなしつつのマルチタスクぶりには目を見張るほどだった。

名古屋の勢いを後押ししたのは、ベンチの闘将だった。61分、攻守に良い動きを見せていた永井に代えてDFのダニエルを投入し、ケネディと闘莉王を前線に並べるパワープレーを発動した。これにはすぐさま大宮の小倉勉監督も反応し、ニールを中盤に入れる4-3-3へフォーメーションを変更。ニールには状況に応じてDFラインに加勢するように指示していたようだが、名古屋の切り札の破壊力はその想定を上回っていた。63分から立て続けにコーナーキックを獲得し流れを加速すると、67分、コーナーキックの流れたボールを拾った田中隼磨がケネディへ絶妙のクロスを送る。相手DFとの競り合いのこぼれ球の行き先には闘莉王。粘り強く、しかし確実に押し込み、まずは同点に追いついてみせた。田中隼のケネディを活かすクロスには定評があるが、FW顔負けの闘莉王のゴールへの嗅覚はさすがの一言である。

この一戦では、ストイコビッチ監督の采配も冴えわたった。逆転への一手として、後半開始から中村直志に代えて田口泰士をピッチに送り込んでいたが、彼のボールをさばく能力が後半の良いリズムを生み出していたことは間違いない。同点に追いついた後の75分には小川佳純に代え、この日はベンチスタートだった藤本淳吾を起用。サイドに開いてボールを受け、積極的にクロスを上げさせることでパワープレーの威力をさらに引き上げる好循環を生み出してみせた。待望の逆転ゴールはそうした流れの中から生まれたのだから「パーフェクトなタイミングでの交代だった」という自画自賛もうなずけるというもの。ケネディと闘莉王への対応に追われる大宮を尻目に、藤本は左サイドから好クロスを連発。得点こそ生まれなかったが、彼のプレーは大宮にとって脅威そのものだったと断言できる。

試合は86分、右サイドからの田中隼のクロスをケネディが落とし、DFとGKとの混戦を闘莉王が制して名古屋が逆転に成功した。闘莉王が一度触ったボールはGK北野貴之に当たるも、再び闘莉王の足に当たってゴールに吸い込まれるあたりは執念のなせる業か。大宮の小倉監督も「球際のところでしっかり当たったものが、また相手に当たって入ってしまう、そういう部分は相手の得点を入れたいという気持ちが強かったから」と、闘莉王の意志の強さに脱帽。ストイコビッチ監督も「負けが続いている状況から盛り返していくには、闘莉王のような気持ちが必要」と背番号4の気迫を高く評価した。
全てを精神論で片付けてしまうのは良くないが、大宮が後半失速したのは「前半は先制して、守備もちゃんとできて良かったけど、後半は守りの意識が強くなってしまってなかなかラインも上げられなかった。前半みたいに前に飛び込めなくなった」(チョヨンチョル)ことが原因であることもまた確か。守りに入ることがイコール弱気ではないが、後半の大宮が精神面でも後手に回ってしまったことは否めない。

この勝利で大宮と順位を入れ替えた名古屋だが、パワープレーによる2得点での勝利を手放しで喜ぶわけにはいかない。玉田圭司は「今日はこれが正解だったけど、続けていくかはわからない」と言い、小川は「トゥさんがDFに専念していることがチームがうまくいっている証拠」と複雑な表情を見せる。上位も残留も争わない現状において、緊急手段でもぎとった勝利に勝点3以上の価値はない。その点で、闘莉王の言葉は名古屋がすべきことを過不足なく見事に言い表している。
「正直、自分たちは今シーズンJ2には落ちない。上位へ進出するのもほとんど可能性はない。その中で何が目標なのか。自分たちのプライドのため、そしてこの状況でも声援を送ってくれているサポーターのために男気を見せ続ける、それだけでも十分なモチベーションだし、それを胸に残り4試合を戦いたい」
次戦の相手は優勝争いの最中にある横浜FM。男気を見せるのに、これ以上の相手はいない。

以上

2013.10.28 Reported by 今井雄一朗
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/07/29(月) 00:00 ハイライト:岐阜vs鳥取【明治安田J3 第23節】