首位と最下位の対戦。横浜FMは前節、首位決戦を制し９年ぶりのリーグ制覇に向けて総力を結集して大分にやってくる。迎える大分は、Ｊ２降格が決まった直後の天皇杯、リーグ戦で連勝し、降格のプレッシャーから解き放たれ、今季ホーム初勝利に向けて邁進している。台風が過ぎ去り強風は残るものの、試合当日は秋晴れのなか好試合が期待できそうだ。

大分の残り５試合の目標は、来季につなげる戦い、そしてホーム初勝利である。降格が決まったＣ大阪戦の１週間前を３バックから４バックへの移行期間として準備を進めていた。「準備不足」でＣ大阪戦では採用しなかったが、その後の２試合は４−４−２にシステムを変更し、２連勝と結果が出ている。なぜ降格前に？というのはナンセンスだが、試合を重ねる度に成熟度は上がっている。
３バックから４バックへの移行は、一般的にその逆より時間がかかるといわれているが、来季に向けてどのチームよりも早く動き始めたチームにとっての挑戦である。為田大貴は「３バックに比べスペースの埋め方、マークの受け渡しなどわからないことが多い」と頭を悩ましているが、「だから声が出ているし、集中できている」と積極的にシステムの理解を深めようとしている。
今週は雨中での練習だったが、守備の成熟を図り、手つかずだった攻撃が意図を持った攻撃へと進化している。横浜FMの堅牢な守備を突破するのは困難なことであるが、数少ないチャンスをものにしたい。偶然のゴールでなく根拠を持ったゴールを好む田坂和昭監督。ここに来て『机上の空論』を『地上の正論』へと昇華させた感がある。まずは首位の横浜FMを球際での身体を張ったプレーで無失点に抑えることが勝利の大前提であるが、攻撃の『形』に注視したい。

対する横浜FMは、ヤマザキナビスコカップの準決勝で敗退し３冠の目標は消えたが、「三兎を追いかけて、結果として二兎を得ることができている」（樋口靖洋監督）。前節の首位攻防戦（○１−０広島）は兵藤慎剛、ドゥトラというレギュラー２人が欠場したなかで、佐藤優平、奈良輪雄太が持ち味を発揮し、勝利に貢献した。優勝を狙うチームに相応しく、選手層が厚さを増し、盤石な様相を呈している。田坂和昭監督は「守備のクオリティが高く、全ての起点となっている25番は、今年はすごい。その周りの中町（公祐）や齋藤（学）も上手く絡み、隙がなく穴がない」と認めている。
ここで触れるまでもなく、現在Ｊリーグでトップを走り続ける横浜FMの25番、中村俊輔。前回の対戦（14節△１−１△）では強風を味方につけ、17本のFKと15本のCKすべてが決定機になり得る高精度のキックを披露した。初めて憧れの選手を目の当たりにした丹野研太や木村祐志、為田などは「一流を見た」と舌を巻いた。大分銀行ドームに初めてやって来る中村のプレーを見に足を運ぶ、それだけの価値のある選手である。

台風の影響と長距離移動の軽減を図るため、横浜FMは試合の前々日に大分入りし、最高のコンディションを保つための調整をしている。最下位相手に慢心はなく、残り５試合を一気に駆け上がる覚悟だ。

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2013.10.26 Reported by 柚野真也