J昇格初年度ながら誰もが驚く快進撃を続け、シーズン終盤となった現在(第37節終了時)でも6位につけている長崎。もはやJ1昇格プレーオフへの切符も夢ではない場所に立っている。ただし、チーム内のほとんどの選手が昇格をかけてシーズンのクライマックスを戦うような経験をしたことはこれまでにない。現在、長崎の選手の多くは注目を集める興奮と共に、未だ体験したことのない状況に大きなプレッシャーを感じている。
これまで長崎の選手たちは残留という目標を達成した時でも、決して次の目標となりうる「J1昇格プレーオフ進出」という台詞を口にしなかった。なぜならそれは、誰かが定めたわけではないがチームにおいて絶対に口にしてはならないタブーだったからだ。
初めてJリーグに参入した長崎という若いチームが勝つためにはチャレンジャーという立場を上手く利用して、選手は常にプレッシャーから開放されていなければならなかったし、「J1」や「プレーオフ」という単語を発することは自分たちを呪縛してしまうことに繋がる行為になるとして避けられてきた。チームにおいて、いかに選手が伸び伸びとプレーするかということが最も大切にされてきた。そして、かわりに選手全員が祈りの言葉のように口にするのは「自分達のサッカーをするだけ」という言葉だった。彼らは、愚直にそれだけをエネルギーにしてきた。躍進という結果は後からついてきただけに過ぎない。
だが、シーズンが佳境に入ったこの時期、キャプテンの佐藤由紀彦選手は自らチームのタブーを破り「自分はJリーグ1年目で『長崎、良くやったよね』で終わらせたくないんですよね」と言い放つ。これまで多くの苦難を経験してきた彼だから考えがあってのことだろう。佐藤選手の今の気持ちと、J1昇格プレーオフ進出をかけて戦うチームについて聞いてみた。
Q:佐藤選手は近頃、「もがく」という言葉をいろいろな場面で使われていますが、具体的にはどのような意味なのでしょうか?
「そうですね。シーズンも佳境に入って下位チームの追い上げや上位チームとの対戦などですごくプレッシャーがかかる時期なんですけど、長いサッカー人生で昇格をかけたシーズンを経験できることはなかなか無いので、逃げずに恵まれていると考えて楽しむと言ったら変ですが、ポジティブに考えることが「もがき」という事になるでしょうし、あと高木琢也監督は練習から高いレベルのものを選手に求めますが、何を伝えたいのかと考えて、できるまで徹底的にやることも「もがき」ですね。
Q:同じように、「信じる」という言葉も佐藤選手の口から良く聞きます。いろんな「信じる」があると思うのですが、佐藤選手の言う「信じる」にはどのような意味があるのでしょうか?
「まず、選手に関して言えば、自分がJ1昇格プレーオフに出て、勝ち抜いて、J1でプレーする姿をより多くの選手が「信じれる」か、それを想像してシンクロできるかですよね。サポーターに関して言えば、「今年、1年目で良くやってるよ」ではなく、「絶対J1に行くんだ」というための鼓舞の仕方を僕らにしてくれたら、すごく力になるし、それは相手チームにとっては物凄い脅威になる。全体で戦って、そこをみんなでこれまでやってきたことを「信じれる」かどうかになるでしょうね」
Q:佐藤選手は残り試合をプレーヤーとしてどのような気持ちで望まれますか?
「残り試合で必ずピッチに立って、結果を残したいですね。ただ出るだけではダメで、それだけでは自分の存在価値は無いので、必ず得点に繋がるようなプレーをしたいです」
Q:最後に、サポーターに対してメッセージをください。
「この状況にいることに僕たちも恵まれていると考えて頑張りますので、皆さんもこの状況を楽しんで、ぜひともスタジアムに足を運んでください。応援よろしくお願いします」
佐藤選手がタブーを破ってまでチームメイトやサポーターに伝えたい気持ちとは、プレッシャーに対してポジティブに向き合うことではないだろうか。覚悟を決めずに今季の最後を迎えたくないのだろう。佐藤の性格が良く現れている。おそらく残り試合、長崎の選手は全員がJ1昇格を「信じて」戦うだろう。また、それを支えるサポーターも「信じて」鼓舞するだろう。スタジアムが一つになった時、もう怖いものはない。
以上
2013.10.25 Reported by 植木修平
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