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【J1:第30節 広島 vs 仙台】プレビュー:歴史を彩ってきた、素晴らしき「ライバル」との対決。広島と仙台、好勝負必至の予感。(13.10.26)

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手倉森誠監督は、広島にとっての「好敵手」だった。
2008年、J2で無人の野を行くがごとくの独走状態をつくりだしていた広島が、唯一勝てなかったチームが仙台。率いていたのは、その年に仙台の指揮官に就任したばかりの手倉森監督である。広島を徹底的に分析し、戦術を選手たちに身体の隅々にまで浸透させた指揮官の深謀遠慮が功を奏し、蟻がはいでることも許さないほどの強固さを誇る仙台のディフェンスが形成された。シーズン99点という破壊力を誇った当時の広島が、仙台からは3試合で2得点しかとれずに2分1敗。そんな素晴らしい守備組織をつくりあげたのは、まぎれもなくルーキー監督・手倉森誠の手腕の証明である。

初めて対戦したのは2008年5月6日。広島ビッグアーチ(現エディオンスタジアム広島)に仙台を迎えた広島は当時、現在まで綿々とつながる「広島スタイル」を確立させたばかりで、選手たちは自分たちのサッカーに大いなる自信を持っていた。実際、ほとんどの局面で広島がボールを支配し、シュート数は17対8。ほぼ圧倒的に広島が仙台を押し込んでいた。だが手倉森監督は選手たちを落ち着かせ、コンパクト性を保ち、そして何よりも球際で激しく、厳しく戦わせた。その成果が後半アディショナルタイム、中原貴之のゴールとなって結実。試合後の会見で若き仙台の指揮官は「今でも、本当に勝ったのかな、という気がする」と表情を紅潮させ、息も弾ませていた。

それ以降の広島対仙台の対戦において、実は広島に負けはない。だが、最近2試合こそ連勝しているものの、それまでの5試合で1勝4分と多くの試合を勝ちきれなかった。広島が勝利した試合を見つめ直しても、アディショナルタイムでのゴールだったり、一度は同点に追いつかれたり。今年7月17日、2-0と広島が仙台に初めて2点差以上をつけて勝利した試合にしても、後半は立て続けにビッグチャンスを創られ、西川周作のピッグセーブによって何とか凌いだ戦いだった。

つまり、手倉森監督率いる仙台と広島は、常にギリギリの試合になることが、歴史的にも必然。どちらかが一方的に、内容も点差もつけて勝つということはない。互いに球際も激しく、よく走り、よく鍛えられたチーム同士が見せるせめぎ合いは、好勝負実現確率が実に高い。

手倉森監督といえば、ユーモアの中に包みこんだ言葉のやりとりで、試合前から駆け引きを仕掛けてくることでも知られる。今回の対戦前も、紅白戦を回避した梁勇基(腰痛)と太田吉彰(左脚痛)について「広島戦出場は無理。そう書いておいてください」と発言。その上で「武藤雄樹の調子がいい」とも語った。

その発言が本当かどうか、それが問題なのではない。そう発言することがメディアによって広島側に伝わることで、少しでも揺さぶりをかけようという意図なのだ。本当に梁と太田がケガで出られないのかもしれないし、本当は間に合うのにそう言ったのかもしれない。真意を知るのは、仙台の指揮官のみだ。

広島・森保一監督も、当然、そのニュースは読んでいる。その上で「ウチも誰々が試合に出られないって、言った方がいいかな」と笑った。しかし彼は一方で、こうも語っている。
「仙台はここ5試合負けなしで来ているし、いい状態にあると思う。しかし相手がどうであれ、我々は残り5試合、全ての戦いで勝つんだという気持ちで、選手たちはトレーニングしてくれた。まずは、明日の仙台戦、サポーターの皆さんの前で、勝利する。それだけです」

前節、横浜FMとの首位決戦で敗れ、3位に転落した広島にとって、連覇という大きな夢を果たすには、もう勝つしかない。「点をとられなければ負けないという自負はあるけれど、これからはどういう試合であっても『勝つ』という覚悟が必要」と水本裕貴が語った時の鋭い目線は、そのままチームとしての決意の現れだ。仕掛けられた駆け引きに乗ってしまうほど、経験は浅くない。

好敵手・手倉森監督は今季終了後、U-21日本代表監督就任が内定している。仙台をJ1へと導き、優勝争いを演じ、初のACL出場権獲得という結果を残した名将と、仙台は一時の別れを余儀なくされる。ここ最近の仙台の好調ぶりと手倉森監督の去就がリンクしているのかどうかは定かではないが、選手たちの想いに格別なものがあることは間違いあるまい。広島と仙台、互いにモチベーションの方向性は違うが、共に強い気持ちで臨む明日の決戦。繰り返すが、好勝負実現確率が非常に高いこのカード、見逃せば後悔する。幸い、広島を覆っていた雨雲は少しずつ遠ざかり、明日は晴の予報である。

以上

2013.10.25 Reported by 中野和也
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