「いまクラブは経営的に厳しい状況にあるが、我々はチームとして、それをはね返す姿勢を見せなければいけない。我々がクラブを愛していて、何が起きようと、その気持ちに変わりはないことを示さないといけない」(マリヤン・プシュニク監督)。16日にクラブの経営危機が発覚して以来、福岡が初めて迎える公式戦。それは勝利はもちろん、自分たちの想いを余すことなくピッチにぶつける試合でもあった。
そして、下部リーグ降格の危機に瀕している鳥取にとっては、プロとしての意地とサッカーへの想いをかけた試合。レベルファイブスタジアムまで足を運んでくれたサポーター、遠い空の下でチームに熱い想いを送るサポーターとともに、自分たちの想いをぶつける試合だった。
誤解を恐れずに言えば、内容そのものは決して高いものではなかったかもしれない。しかし、それぞれの想いをぶつけ合った試合は激闘そのもの。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に、多くの選手がピッチの上に倒れ込んだことが、それを物語る。
前半、試合をコントロールしたのは鳥取だった。ボールを持つ福岡に対して、いち早くブロックを形成したかと思えば、ここぞという所で高い位置からプレスをかけて福岡にチャンスを与えない。そして奪ったボールはシンプルにつないで左サイドへ展開。永里源気の突破を活かしてチャンスを窺う。そして12分、その永里が先制ゴールを奪う。ピッチ中央で実信憲明からのパスを受けた永里は、ひとつ、ふたつとボールをつついた後、左サイドを駆け上がってきた森英次郎に展開してゴール前へ。そして、森のクロスに対する福岡のクリアボールが目の前にこぼれたところを迷わずに振り抜いた。
その後も鳥取のペース。福岡はボールを持つものの攻撃のスイッチを入れられず、持ち味である攻守の切り替えの速さが影を潜めた。さらに43分には古賀正紘が体調不良でピッチを退き、アディショナルタイムには2枚目の警告を受けたプノセバッチが退場処分になるアクシデントにも見舞われる。この時点では、福岡がゴールを奪うシーンを予想することは難しかった。
しかし、後半になるとジワジワと流れが変わりはじめる。「2点目を取りに行く、プレスに行くというところ、いつ、どのタイミングで行くのかということを、もっとはっきりさせれていば、もっと楽に、2点目、3点目を仕留めることが出来たゲームだった」とは記者会見での前田浩二監督の言葉だが、鳥取の戦い方が曖昧になったことが要因だった。
福岡は右サイドでアグレッシブに仕掛ける三島勇太。左サイドから精度の高いクロスボールを送る尾亦弘友希。そして中央では石津大介が積極的にボールを受けてゴールを目指す。10人の劣勢をはね返そうと必死で走り回る選手たち。クラブへの想いを声に変えて選手に届けるサポーター。その想いがひとつになって鳥取に襲い掛かる。そして74分、その想いがゴールに結実する。
堤俊輔からのフィードを受けた石津がドリブルを仕掛けてから右足を一閃。相手DFに当たったシュートは勢いをなくしたが、絶妙なコースへコロコロと吸い込まれた。石津の執念、チームの想い、そしてファン、サポーターの熱い心でもぎ取ったゴールだった。
ここからは、ともにゴールを目指す激しい展開に。それぞれに決定的なチャンスを作り、それぞれが体を張ってゴールを守る。そして4分のアディショナルタイムが経過。想いをぶつけ合った試合はドローで試合終了のホイッスルを聞いた。
鳥取にとってはもったいない試合だった。狙い通りに試合を進めながら後半に入って戦い方が曖昧になったこと、何度か訪れた2点目を奪うチャンスに決めきれなかったことが悔やまれる。それでも「前半はいい内容だったし、後半もボールを持つ時間も多かった。その中で、最後のところの精度を上げていけば勝利は取れると思っている」と話したのは永里。残り5試合にJ2残留をかける。
そして、「いま置かれている状況の中で全てを発揮しベストを尽くした。選手たちに感謝したい。そして、私の感謝の気持ちをサポーターに捧げたい。この難しい状況の中、1試合を通じて、ずっと私たちを応援してくれた。本当に感謝している」と試合を振り返ったのはプシュニク監督。苦しい状況に追い込まれながら、福岡に関わる人たちと一体となって、いま発揮できる全てをぶつけた試合。それは、プシュニク監督の、選手の、ファン、サポーターの、そして福岡に関わる全ての人たちの想いがこもった試合だった。間違いなく、福岡にとって、今シーズンで最も心に残る試合になった。そしてこれからも、福岡は自分たちの想いをピッチにぶつけ続ける。アビスパ福岡は止まらない。
以上
2013.10.21 Reported by 中倉一志
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