J1昇格プレーオフ出場圏内進出に向けてギアを上げたかった岡山にとっては痛恨のドロー。一方、2連勝の勢いを持って臨み、勝点3を積み重ねたかった愛媛にとっても厳しいドローだが、先制されながら1点を取り返したことはポジティブにも捉えられる。

前日からの雨をたっぷりと含むピッチに、断続的に雨が降り続くゲームとなったが、コンパクトなエリアでの奪い合い、速いテンポ、両チーム間を移り変わるポゼッションは見応えがあった。岡山の前線3枚はＦＷ清水慎太郎、ＦＷ押谷祐樹、ＦＷ金民均。愛媛はＦＷ河原和寿、ＭＦ東浩史、ＭＦ加藤大、出場停止明けのＦＷ石井謙伍が右ワイドに入った。岡山は天皇杯3回戦からあまりメンバーを代えずに臨んだ中3日のゲームで疲労が心配されたが、チャンスシーンを作り出していった。

岡山は立ち上がり、清水の折り返しのクロスに押谷が飛び込み、そのこぼれ球をつないだところから右ワイドの田中奏一がシュートを放ったが、これはＧＫ秋元陽太の好セーブに阻まれる。また前半15分には左ワイドの田所諒からのクロスに清水が頭で合わせるが、ゴールを捉えられず。愛媛は前半20分、河原のクロスに東が飛び込むが、こちらも合わない。岡山はフィニッシュで惜しいシーンが続き、愛媛は落ち着いて守備の対応をしながらボールを前に運ぼうとするが、前線の動き出しに欠け、「前の3人全員が足元にもらって、何かしようとして並んでしまった」（愛媛・石丸清隆監督）ため、岡山の守備に穴をあけられなかった。

ボールを奪い、意図のある攻撃から主導権を握りつつあった岡山。先制点が生まれたのは前半28分。金民均が相手ファウルを誘発し、ゴールまで30数メートルの位置で直接ＦＫを得る。押谷の蹴ったボールは、「コースはあまりよくなかったが、練習どおりの無回転で狙った」と話すとおり、愛媛ＧＫ秋元の指先を弾いてゴールに吸い込まれていった。この素晴らしいゴールに、追加点を重ねられなかったことは岡山にとって痛恨だ。追加点の代わりに後半31分、東へのファウルで、ＦＫを与えてしまう。キッカーは加藤。押谷の時よりもややゴールに近い位置から蹴ったボールが、バーよりやや低めにきれいなカーブを描いて決まった。

同点に追いつく前の後半22分、愛媛は河原に代えて身長190ｃｍのＦＷ渡辺亮太を投入しており、ターゲットが出来たことで、よりゴールに近づくプレーを可能にしていた。「前半、2失点目を許さなかったことが今日のすべて」と、ボランチの村上巧が振り返ったゲームは、愛媛の我慢と立て直す力が現れたゲームでもあった。また、ＤＦ園田拓也が左ヒジの脱臼で前半12分、ピッチを離れたが、代わりに入ったＤＦ小原章吾が遜色ない守備を見せた。ケガ人が続く中、「サブの選手が力を見せなければならない」という石丸監督の言葉どおりの好材料もある。

岡山・影山雅永監督が「最後の5分間は勝ちたくて、守備から前に運んでゴール前に入っていき、持てる力をすべて出してくれていたと思う」と話したように、岡山はこれまでの似た状況の時より、追加点に近づいていた。個人のテクニックの冴え渡るＦＫでドロー決着となったが、J2第37節の中で、このゲームもまたJ2らしい激しさに満ちたゲームだった。しかしサポーター、ファンが望むものは、流れの中から生まれるゴールと勝点3。今節の内容が次節にどのような影響をもたらすのか。可能性があり、戦い続ける両チームの1週間後が楽しみだ。

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2013.10.21 Reported by 尾原千明