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【J1:第29節 柏 vs 甲府】レポート:サイドを制圧した柏が安定した試合運びで甲府の堅陣を突破。リーグ戦、6試合ぶりの白星を飾る!(13.10.20)

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柏の山中亮輔と甲府の柏好文、ともに高い突破力を有するサイドの選手のどちらが主導権を握るか、それはこの試合の勝敗を占う上では重要な鍵だった。そして、それは試合開始早々、田中順也とのリターンパスから左サイドのスペースを突き、いきなりクロスを放った場面にも象徴される通り、山中が優位に立つ。
柏は水曜日に行われた天皇杯3回戦、岡山戦に近い試合運びを展開した。基本布陣は3バックだが、攻撃の局面では頻繁にボランチの大谷秀和が左へ流れ、逆サイドでは3バックの一角である鈴木大輔が右サイドバックのような位置取りをして、ピッチ上を幅広く使い、揺さぶりをかけながら甲府陣内へと攻め込んでいく。特にビルドアップ、状況判断、機動力に優れた大谷が左サイドに流れることで起点ができ、山中を高い位置にまで押し上げていく。山中は積極的に縦へ仕掛け、自らの攻撃力で柏好文を深いゾーンに追いやり、相手の攻撃力を封じる格好となった。

そしてもう1つ鍵になったのは田中の存在だ。柏は岡山戦とは異なり、田中をトップ下に置き、工藤壮人とクレオの2トップでスタートにした。それには「ジウシーニョと(水野)晃樹が降りた時に、僕とクリさん(栗澤)のどちらかが見ると相手のダブルボランチにプレスを掛けづらくなる。順也を1つ落としてボランチを見させて、3バックは2トップに追ってもらう。その方が中盤で余り、落ちてきた相手のシャドーをつかめる」(大谷)との狙いがあった。
こうして各ポイントで甲府を上回った柏が圧倒的にボールを保持。岡山戦で課題とされた最後のシュートやクロスの部分も、完全に解消されたとは言い切れないまでも、山中のクロスに工藤が飛び込み惜しいシーンを作るなど、岡山戦に比べれば良化した印象を受けた。

守備に重きを置く戦い方は甲府の特徴でもある。自陣に押し込まれながらも、山本英臣を中心にした3バックが中央を閉め、保坂一成も縦パスを入れるコースを消し、見ている側からすればある程度狙い通りに進めていたようにも見えた。
だが、青山直晃は「今でやった相手とは違った」と、うまく守備がハマっていなかったことを明かし、さらに「スペースがないと思っていたはずのスペースをうまく使われた」と振り返った。確かに甲府は3バックと両ウイングバック、そしてボランチでスペースを埋めているはずなのだが、柏が右サイドは鈴木とキム チャンス、左サイドは大谷と山中、そこに前線の田中、工藤、クレオが絡んで攻撃を仕掛けてきたことで、甲府からすればサイドでは2対3の数的不利を作られ、3バックの一角がそのサポートに回ると「裏のスペースが空くし、行かなければ自由にやられてしまう」(青山)。
したがって、結局は良い形でボールを奪うことができず、単発的にボールを奪うシーンがあったとしても、それは狙い通りの守備で“はめた”形ではないため、武器であるカウンターへ転じることができない。「いつもより位置が低めで前にかける人数も少なかったから、あまりうまく回らなかった」と、古巣対決に燃えていた水野晃樹も厚みの出ない攻撃を悔やんだ。

「ハーフタイムでも我慢強くやろうとみんなが言っていた。後ろは0でしたし、こういう戦い方をすれば1点は入るという気持ちでやっていた」(栗澤)。何度も何度も圧力を掛け続けた柏の攻撃が実ったのが70分である。山中に代わって途中から出場した橋本和がサイドで仕掛けFKを得ると、田中の鋭いキックに渡部博文が頭で合わせて柏が先制する。流れの中から崩した展開ではなかったが、これもサイドを攻略し続けた結果である。
甲府は65分の土屋征夫の投入で勝点1に狙いを切り替えたと思われるが、失点を喫したことで平本一樹、三幸秀稔という攻撃の駒を送り込んで最後はパワープレー気味に攻撃を仕掛けていく。しかし後半アディショナルタイム、GK荻晃太に痛恨のキックミスが発生。これを拾ったクレオが落ち着いてゴールへ転がし、勝敗は決した。

局面でのミスを問うよりも、甲府にとっては完全に後手に回ってしまった戦い方にこそ、根本的な敗因がある。おそらく今後はスカウティングの結果、柏の戦い方を踏襲するチームがでてきてもおかしくはない。後手に回ってしまった今回の内容を修正することが、残留への近道になるだろう。
また、そういう展開へ仕向けた柏は本来の試合運びの妙を感じさせ、まだ攻撃面で課題が残るのも事実だが、タイトな日程を乗り越えて、ようやくかつての安定感を取り戻そうとしている。
11月2日、ヤマザキナビスコカップの決勝へ向けて、柏の調子は間違いなく上向きだ。

以上

2013.10.20 Reported by 鈴木潤
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