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【J1:第29節 川崎F vs 磐田】レポート:1週間で攻撃性を取り戻した川崎Fが、ビハインドを跳ね返し逆転勝利。リードを守れず敗れた磐田は、ダービーとなる次節にも降格の可能性(13.10.20)

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勝者と敗者とを分けたものがあるとすれば、それはメンタリティだった。川崎Fは、つい1週間前の完敗(ヤマザキナビスコカップ準決勝)を払拭し、強い気持ちを取り返した。風間八宏監督は失われていた攻撃性を取り戻すことを主眼に、この1週間を準備。水曜日の天皇杯・東京V戦を受け、さらにその戦いを洗練させて磐田戦に臨んでいた。短い準備期間にも関わらず、攻撃性の復活を信じて選手たちを奮起させ、実際に攻撃性を取り戻した川崎Fは、磐田を迎えた90分間を強気に進める。

決して能力的に劣るわけではない磐田はしかし、守勢のまま時間を過ごす。その戦いぶりは、例えば第26節に川崎Fが等々力に迎えた鳥栖のようだった。この試合の鳥栖は、結果的にワンチャンスをものにして川崎Fを相手に勝利。この試合に代表されるように、川崎Fは強固な守備ブロックを敷くチームを攻めあぐねてきた。そうした川崎Fのこれまでの試合内容を踏まえれば、磐田が川崎Fの攻撃を耐え、ワンチャンスの得点に活路を見出していたとしてもおかしくはない。
そういう意味で、73分の攻撃は磐田にとっては狙い通りのものだった。稲本潤一のパスミスを反撃の契機とした磐田は、鮮やかなカウンターを阿部吉朗のゴールで締めくくり、先制点を奪う。

試合終了までは、アディショナルタイムを含めて20分あまり。逃げ切るには少々時間があるが、逃げ切れない時間でもない。安田理大はその時のピッチ上の雰囲気について「残り15分あって、そこで守備の意識になったのかな。守ったら勝てるみたいな」と振り返る。その結果、攻勢を強める川崎Fとのパワーバランスが変化し、磐田は自陣に押し込められる時間帯が始まることとなる。

先制点を奪われる前に交代を準備していた中村憲剛は、失点直後にピッチに入る。その中村は「個人的には途中から出ているので、ヤバいという感じよりも、とにかくボールを受けてチャンスを作ったりということをやらなければと思っていました。どうやって同点にするのか。とにかく押し込む。ゴールに近いところでプレーしなければと思っていました」と振り返る。
この中村の投入について、小林悠は次のように述べている。
「自分とレナトが高い位置を取り、(田中)裕介とノボリ(登里享平)が高い位置に上がるようになっていて、その間で受ける選手が今は(山本)真希しかいなかった。(大久保)嘉人さんもFWの位置まで上がっていたので、憲剛さんが入ってくるとボールもうまく運べますし、そういう意味ではスイッチというか、逆転しに行くぞという意味でやりやすかったです」
つまり中村の投入は、1点を追いかけるという状況とともに攻撃性を引き出すサインとなっていたのである。73分の失点を境に「相手が1点を取って守ろうという意識が強くなった」と話す田中裕介は「相手の守備がよく、いい感じで引いていた」と磐田の守備を評価。ただ、そこで辛抱強く攻撃を続けたことが逆転劇につながったと述べている。

引いて守る相手に対しては、ミドルシュートが効果的だと言われるが、それを実行したのが84分の山本真希。このシュートは、チョ・ビョングクに阻まれるが、これによって得たCKからジェシが同点ゴールを蹴り込む。「慌てたりはしてませんでした」とその瞬間を振り返るジェシは、これが等々力での初ゴール。「アウェイゲームでは4〜5点取れてますが、本当にこの等々力でゴールしたいと思っていたので、今日は本当に心臓が口から出るくらいに感激した試合でした」と独特の表現で語る。

降格圏を脱するためにも勝点3が欲しい磐田は、ここから反撃を試みる。サイドからの攻撃を見せた磐田の攻撃は川崎Fにとっての脅威となった。磐田が自信を持って90分を戦っていたら、もしかしたら違う結果になっていたかもしれない。そう思わせる程度にはいい攻撃を繰り出していた。

1−1のまま迎えた後半90+4分。川崎Fは中村が自ら得たFKをゴール前へ。そのワンプレー前にもFKを蹴ることで感覚を掴んでいたという中村のキックは、絶妙な位置へと飛ぶ。GK八田直樹を越えたボールはDFに当たり八田の下へ。しかしこれがこぼれ、身をくるくると翻しながらも大久保がかかとに当てて押し込む。際どいシュートだったが、副審がゴールを認めてこれが決勝点に。それを見届けた中村は、ピッチ上に笑顔で倒れこみ、そしてガッツポーツを繰り返した。
「正直後半の73分かに入れられて、あそこからひっくり返せるのはそうそうないと思う」と話す田中裕介は「辛抱強くやって、ファウルだったりCKだったりでしっかりやった結果でしたね。天皇杯もあったので水曜日からの(中2日の)連戦で今日も相当疲れましたが、それ以上に勝ちたい気持ちが出たのかなと。最後はあれ、ご褒美かなと思います」と試合を振り返った。土壇場で磐田を逆転した川崎FがACL圏内への可能性を繋ぐ大きな勝点3を手にした。
一方、途中交代でチームにアクセントをもたらした安田は「こういう負け方をするのが、この順位にいる理由だと思う。ポジティブなことを言える状況ではない」と述べている。
磐田は次節、ホームで清水と対戦。安田は「来週ダービーやし、ダービーで落ちることは絶対に、ダービーで負けてさらに降格に近づくことは絶対にしたらあかんし…」と口にするが、この逆転負けにより、磐田は次節にもJ2降格となる16位以下が決まる可能性がある。追い詰められた磐田にとって、熱を帯びたダービーマッチを迎えることとなる。

以上

2013.10.20 Reported by 江藤高志
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