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【第93回天皇杯 3回戦 広島 vs 熊本】レポート:冴え渡る予測とアイディア、そして勇気。広島、スコア以上の内容で、熊本に完勝。(13.10.15)

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熊本・池谷友良監督は、対広島戦のゲームプランを綿密に組み立てていた。
「ボールポゼッションは巧いが、そこからの遅攻よりもむしろ、広島の怖さはカウンターにある。しっかりと守って、相手にボールを持たせる中でこちらがカウンターのチャンスを狙おう」
そのプランを現実化するためには、できるだけ長く無失点の時間をつくらねばならない。得点がとれないと、上のカテゴリーのチームの方が焦ってくる。そこに必ず、スキができるはずだ。

しかし、池谷監督のもくろみは、開始直後に潰えた。
キックオフから青山敏弘・塩谷司のパス交換、そして石原直樹へのクサビ。そこでのフリックを読んだ吉井孝輔が一度はボールをカットする。しかし、佐藤寿人の読みはその上をいった。ボールが落ちる地点を予測して奪い返すと、青山にパス。熊本の悔いは、この選択を読んで、青山に厳しくプレスをかけられなかったことだ。「個の力の差」と池谷監督は語っていたが、それはドリブルやパスだけではなく、予測も含まれる。広島はできて、熊本は遅れた。
あとは、水が流れるかのごとく。青山のダイレクトパスは、高萩の「スルー」を経由して左サイド・清水航平の足下にピタリ。突破からのクロスは、ニアで高萩が囮となったことでフリーとなった石原にピタリ。ヘッド。ゴール。0-0の時間は、わずか30秒で終わりを告げた。

熊本は先制されたショックから中途半端なプレーが頻発したが、広島は決定機を逃し続ける。それはこの試合唯一の甘さ。「前半のうちに追加点をとるべきチャンスは数多くあった」という森崎和幸の指摘は、正しい。45分間で試合を決めることができた可能性すら、あったのだ。
後半、池谷監督は右サイドにベテラン・藏川洋平を投入し、守備の安定を図る。さらに61分、古巣の広島サポーターからも拍手を受けていた藤本主税をベンチに下げ、この試合がケガからの復帰戦となった堀米勇輝を起用、勝負に出た。だがその2分後、池谷監督があまり警戒してはいなかった「ポゼッションからの遅攻」で広島が追加点をあげる。
最終ラインでボールをまわす広島に対し、熊本は低めの位置で5-4-1のブロックをつくり対応。ともすれぱ予定調和となりそうな展開を壊したのは、ストッパー・水本裕貴のドリブルだ。より深く、ペナルティエリアまであがってきたストッパーに熊本は戸惑い、DFの距離感が難しくなった。
水本は自らの突破で相手を中に引き寄せ、左に展開する。山岸智はフリー。普通ならここで一気にクロスといきたいところだが、経験豊富なサイドアタッカーは、中央の状況を見て敢えてタメをつくった。「いつでも自分で仕掛けるぞ」という危険な香りをまき散らした山岸のプレーを警戒したCBが中から外へ流れる。水本のプレーが勝負手なら、山岸は王手。チェックメイトだ。
この瞬間、熊本は崩れていた。ゴール前にいた水本と佐藤寿人にはマークがついていたが、石原はフリー。山岸の突破の対応に人数が割かれたためだ。そこに、山岸のクロスがピシャリ。予測の達人=佐藤寿人が石原の折り返しに驚異的な瞬間スピードで反応で前に出て、落下するボールをバイシクルシュート。好守を見せてきた畑も、さすがに対応できなかった。

もし、この2点目がなかったら、熊本が同点に持ち込む可能性もゼロではなかった。途中投入の堀米と仲間隼斗が躍動感を見せ、ドリブルとスルーパスで何度か好機をつくったからだ。4-2-3-1にシフトチェンジした池谷監督の采配も当たり、89分には堀米の左クロスからウーゴが合わせる決定機もつくった。それだけに、前半の熊本を消沈させた先制点同様、2点目がこの試合に渋い輝きを与える。

熊本戦は、今後の広島に大きな示唆を与えた。試合の入りから集中し、アグレッシブに仕掛けることの重要性。後ろからの勇気ある攻撃参加とアタッキングサードでのアイディア。もちろん、横浜FMを相手に同じことができるかどうかはわからないが、それでも仕掛けるのが広島のアイデンティティだろう。

熊本の未来に、この試合が何を残したか。それは、これからの選手たち次第だ。広島と熊本にはスコア以上の差は厳然と存在する。それは池谷監督が「同じシステムをとるチーム同士、参考になった点は?」という記者の質問に対して思わず苦笑いを浮かべたことからも、理解できよう。ただ、藤本主税の「もっとやれたはず」という言葉も、後半の躍動によって証明された。大迫・堀米・仲間。若くて活きのいい選手たちを中心に、チームがこの敗戦で何を考え、どこを目指すのか。それによっては、この試合は熊本にとって、大きな転機となりうるはずである。

以上

2013.10.15 Reported by 中野和也
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