２回戦のスコアは、両チームとも奇しくも５−１。横浜FMは八戸に栃木は福岡にそれぞれ大勝し、ニッパツ三ツ沢球技場で２年ぶりに公式戦で顔を合わせることになった。

前回の対戦も今回と同じく天皇杯３回戦、ニッパツ三ツ沢での戦い。「これだけパスが回ったのは久しぶり」（中澤佑二）という実力差を見せつけ、横浜FMが３−０で快勝した。当時からお互いの主戦場は変わらず、現在、横浜FMはＪ１で２位、栃木はＪ２で12位。成績だけを見れば、今回も前者が圧倒的に優位だと思われる。

が、しかし…。今回は前回以上に、栃木がジャイアントキリング成就の機運が高まっているのではないだろうか。なぜなら、今の栃木は「自信」という武器を携えているからだ。リーグ戦の前節、栃木はＧ大阪をホームに迎えて４−２の大金星を挙げたばかり。これで松本育夫新監督が９月に就任後、土つかずの３勝１分。波に乗るとはこのことである。
Ｇ大阪戦の勝利は決してフロックではない。むしろ、したたかだった。ある程度、ボールを回されても要所を締める守備で、破格の攻撃力を誇るＧ大阪に対抗。ボールを奪えば前線のサビア、クリスティアーノのブラジル人に預ける効率良いカウンターで攻める。結果、１トップのサビアが２点、トップ下と後半途中からインサイドハーフを務めたクリスティアーノが１点を挙げた。

ボランチのパウリーニョ、左サイドバックの三都主アレサンドロの存在も忘れてはいけない。パウリーニョはＧ大阪戦が、負傷による約４か月の長期離脱後の復帰２戦目だったが、終盤はアンカーの位置でどっしり構えるなど、速攻の起点になった。10月14日の「Ｊ２日記」によると、彼はブラジル時代、ウイニングイレブンで遊ぶ際は、選択モードで常に中村俊輔を選んでいたほどの“俊輔ファン”。それだけに今回の対戦を心待ちにしているという。

チーム一、Ｊ１でのキャリアを誇る三都主は、運動量こそ少ないが勝負所を知っている。先の試合では後半開始早々、素早いリスタートのFKでＧ大阪の虚を突き、サビアの２点目のヘッド弾を導く、正確無比なクロスを送った。また三都主と言えば、横浜FMのサポーターなら覚えている方もいるだろう。04年のチャンピオンシップ第２戦で当時、浦和に所属していた彼に先制FK弾を決められている。このブラジル出身４人のカルテットが躍動すれば、栃木にも勝機が出てくるはずだ。

逆に横浜FMは、彼らが実力を見せる前に、点差を広げて勝負の決着を早くつけたい、というのが本音か。今週末には、リーグ戦の首位・広島との大一番が控えているだけに、なおさらそう思うはず。メンバー的にもマルキーニョス、中澤、中村らのベテラン勢を温存する可能性があるかもしれない。２回戦でハットトリックを決めた藤田祥史をはじめ、普段の控え組の勇躍が不可欠である。
週末のリーグ戦が気になるのは、まだＪ２プレーオフ進出の可能性を残す栃木も一緒。しかし、Ｊ史上初の70代の監督である71歳の情熱家・松本監督なら、この一戦も全力で臨むと考えた方がいい。その両チームのテンションの差がどう出るかも興味深い。

以上

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2013.10.15 Reported by 小林智明（インサイド）