大分が新潟を延長の末、1-0で下して4回戦進出を決めた。延長の前半2分、途中出場の後藤優介が決勝点を挙げた。新潟は大分の倍の10本のシュートを放ちながら無得点。延長に入り、失点場面で金根煥が負傷交代し、レオ シルバが退場するなどリズムをつかみきれなかった。
うれしさしかなかった。チームメートの祝福、サポーターの歓声に、その気持ちがさらにあおられた。「うれしいです。チームメートには『持っている』と言われました」。後藤は喜びをあらわにした。
ビッグチャンスをしっかりとものにした。延長の2分、カウンターから森島康仁が左サイドを突破。中央に出したラストパスに合わせて押し込んだ。「森島さんが仕掛けてくれたので、潜り込んで待っていた」。狙い通りの1発が4回戦進出につながった。
これが今季2試合目の公式戦出場だった。ただ、チャンスが巡ってこなくても、準備は怠らなかった。リーグ戦の前回対戦で3-2と接戦をものにした試合をベースに、新潟戦のポイントを分析。「最後まで走り切っていたから勝てた。この試合も走り切ろうと思った」。後半34分に途中出場してから、常に相手の背後を狙い、足を止めなかった。試合に出られない我慢の時期は、基礎から鍛え直すなど、地道に実力アップに励んできた。その成果が、チーム、そして自らにとっても大きな1点となって表れた。
リーグ戦前節で降格が決まり、その後、初めて迎えた公式戦。メンタル的な難しさはあったが、チームの気持ちは切り替わっていた。この試合、田坂和昭監督が就任以来通してきた3バックではなく、4バックを採用。4-4-2のシステム。相手がボールをキープしたときは中盤と最終ラインでしっかりとブロックを作り、跳ね返し続けた。
田坂監督は「トリニータの未来のためにも4バック導入が必要だと思った」と今後を見据えての策を強調した。そして「選手が準備してきたことを表現してくれた」と、降格のショックを乗り越えた選手たちをたたえた。
新潟は攻め切れずに勝機を逃した。失点シーン、森島の突破を許した直後に金根煥が足を痛めてプレー続行不可能に。失点の3分後には、レオ シルバが退場するなど不運が重なった。数的不利になった後も、セットプレーの流れからゴール前でボールを回すシーンもあったが、シュートに持ち込むことができなかった。
戦前予想された3バックとは異なり、大分は4バックで臨んできた。攻め込むシーンは作ったが、相手の脅威になるパス、シュートが出ない。「ラインが高かったので、もっと裏を突けばよかった」。岡本英也が言うように、相手が嫌がる部分を突く回数が多くはなかった。
リーグ戦も含め、新潟にとってホームでの敗戦は第16節F東京戦以来。リーグ戦では6連勝中だけに、この黒星で勢いを落とすわけにはいかない。キャプテンマークを巻いた本間勲は「あとはリーグ戦に集中し、全員が1つになることが大事」と気持ちの切り替えを促した。
大分は天皇杯での勝ち上がりがチーム全体のモチベーションにつながり、それが残りのリーグ戦で勝点を挙げていく力にもなる。
ともにこの試合で、シーズンの締めくくりに向けての目標が明確になった。
以上
2013.10.14 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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