来年、消費税が8%に上がるころは横浜FMにとって久しぶりのACLで、中村俊輔にとって初のACLでのプレーを見ることを楽しめそうだと思っているが、当事者は4位の鹿島にも優勝の可能性が充分にあるだけに首位の椅子の背もたれに体重をあずけて座る気にはなれないだろう。第1クールの甲府戦では勝点2を失った気分になる引き分けだっただけに、優勝のためには想定外のことが起こっても勝点3を持ち帰らないといけない甲府戦になる。また、甲府(A)、広島(H)、大分(A)、名古屋(H)、磐田(A)と続く対戦を見ると、残留争い中のチームとアウェイで戦い、ホームで上位やビッグクラブと対戦するので、常に張り詰めたテンションの相手との試合が続く。
残留最後の椅子(15位)に座っている甲府は第22節からリーグ戦3勝2分という素晴らしいペースで勝点を積み重ねてきたが、14位の鳥栖も16位の湘南も終盤に来てペースアップしているので、14位に順位を上げることも16位との勝点差を増やすこともできていない。前節は6試合ぶりにリーグ戦で敗れ、下位のチームが全部横並びになるのかと思っていたら湘南がギリギリまで浦和を追い詰めた末に同点に追い付かれて勝点1を積み上げた。この結果、15位甲府と16位湘南の勝点差は5に縮まった。今節も含めて残り7試合なので2連勝・2連敗でひっくりかえる勝点差は緊張感と危機感を持ち続けるいい刺激になっている。
パトリックとジウシーニョをシーズン途中に獲得し、新しい最大値を見出す3−4−2−1にシステムを変更してから、高いペースで勝点を積み重ねているJFK甲府。5−4−1にもなる堅い守備で失点を減らし、パトリックの腕力のあるキープや突破をオンでもオフでも活かして決定機も作っている。シャドーの位置でキープ力も出てきた。決定力の女神様には微笑んでもらえていないが、パトリックは充分に相手に脅威を与えているし、決定機3〜4回に1回は決めてくれる。今節は決定機3〜4回に2回くらいにバージョンアップしたいところだけど、まずは守備の堅さを発揮しないと勝負にならないかもしれない。
富澤清太郎が出場停止の横浜FMだが、守備の課題よりも最近は得点力が少し低下していることのほうが問題だろう。ただ、甲府戦でもそうなるとは限らないし、甲府は最大限の警戒をして迎え撃つ。中村俊輔だけでなく、日本代表の齋藤学、マルキーニョス、兵藤慎剛、中町公祐、ドゥトラら点を取りそうな人ばかりのチームだけに、守備における横浜FM対策が重要になってくる。この辺りは今週の練習で城福浩監督は時間を割いていたし、前日練習を就任以来初めて非公開としたところに何かありそうな気がする。システムを3−4−2−2にするような奇策では無論ないだろうが、甲府の最大値を出すことよりも対策に軸足を置くオプションがどんなものか注目したい。「最大値を出すことと対策のバランスを取ってやっているが、相手対策をやらないでも勝てるのが一番いい」(城福監督)ということだが、今の横浜FMの現状と甲府の現状と立ち位置を考えると対策は必要。
出場選手の平均年齢ランキングを見ると1位は甲府(29歳)で2位は横浜FM(28.2歳)なので、ベテラン対決でもある今節。また、平均アクチュアルプレーイングタイムは甲府が5位(56分51秒)で首位の横浜FMが18位(52分09秒)。このデータだけをみるとベテラン選手が多い横浜FMはセットプレーなどの機会に上手く時間を使って、ベテランの質の高い技を活かして首位に君臨しているのではないかと推測できる。横浜FMは先制時の勝率が81.3%(2位)でもあるので、甲府は攻撃も大事だが堅い守備を取り戻したいところ。中村、齋藤、マルキーニョスというスペシャルな選手がいるだけに意外性のあるプレーにも対応しなければならないが、そこは対策を活かしつつ最後は個々の判断力でしのぎたい。残留を早く決めたいが14位の鳥栖、16位の湘南がなかなか負けないだけに広島や鹿島に勝ったような試合で勝点3を積み上げないといけないが、今節は城福監督の繰り出す対策に注目して見れば、いつもと違った面白さがあるかもしれない。天気予報はサッカー向きではないが、是非スタジアムでいつもとちょっと違うかもしれない戦いを見てほしい。
以上
2013.10.04 Reported by 松尾潤
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