一枚のレッドカードがゲームを一変させた。前半31分から数的不利の戦いを余儀なくされた群馬だったが、その状況に耐えることができずに失点。サポーターの願いも虚しく、０−１ままタイムアップの笛を聞いた。岐阜との下位直接対決で屈した群馬はその差を３へと縮められて再び降格の危機の直面する結果となった。群馬にとっては悔やんでも悔やみきれない痛恨の敗戦だ。

序盤は両チームともにバイタルエリアまで迫りながらも決定打が放てない状態が続いた。だが23分、群馬・永田亮太がペナルティーアーク付近でシュートを打つと25分には岐阜の美尾敦がバイタルへ切り込んで左足を振り抜く。互いに２列目がバイタルへ出入りし始めたことでゲームが動き出すかに見えた。だがその矢先に群馬に重大なアクシデントが発生する。

31分、自らの縦パスのミスをカバーしようとバイタルへ飛び込んだファンソンスが、杉山新をチャージで倒して一発レッドを提示される。故意のプレーではなかったがファンソンスの気迫が空回りする不運な結果。これにより群馬はサバイバルマッチの残り59分を一人少ない状況で戦わなければならなくなる。

前半をスコアレスで折り返した群馬は１トップに平繁を残して２枚のブロックを形成、岐阜の猛攻を気迫の守備で封じ込めていく。だが時間の経過とともにセカンドボールが拾えなくなり、DFラインがじわじわと後退していく。状況打破を図る秋葉監督は60分過ぎに秘密兵器を起用すべくピッチサイドで準備させるが、交代を待つ間にスコアが動いてしまう。

66分、群馬は右サイドで杉山新をフリーにすると間髪入れずにDFとGKの間へ低いクロスを放り込まれる。CB乾大知とクォンハンジンがカバーに入ったが、その間から抜け出したバージェが右足を伸ばしてゴールネットを揺らす。値千金のゴールを決めたバージェは「DFがついてきていたが先にボールに触ることだけを考えた」と喜びを爆発させた。ニアをカバーした乾大知は「クロスの精度が高く、どうしても届かないボールだった」と肩を落とした。岐阜のFWと群馬のCBの駆け引きが勝敗を分けた。

先行を許した群馬はロビーニョ、エデルを投入し平繁龍一との３トップで反撃を開始するが、再三に渡る決定機をGK時久省吾にブロックされて得点が奪えない。「最後は３人の個の力でゴールを狙っていったがチャンスを決め切ることができなかった。最低でも引き分けで終わらなければいけないゲームだった」（平繁）。試合終了の笛は、群馬から希望を奪うかのように無情に響きわたった。

岐阜は数的優位を活かして群馬から勝点３を奪い取った。順位こそ変動はないものの21位鳥取と勝点で並び、19位群馬とは１ゲーム差。この勝利で岐阜が得た戦果は決して小さくない。「数的優位の状況で逆に難しくなる部分もあったが落ち着いてゲームを運ぶことができた。この勝利は次の鳥取戦への大きな励みになる」（服部年宏）。岐阜は次節ホーム鳥取戦での最下位脱出を狙う。

群馬にとっては不運なゲームだったが痛過ぎる星を落とした。数的不利の戦いでドローに持ち込むしぶとさが求められたが、チームの未熟な部分を露呈。クラブの運命がかかる極めて重要なゲームでミッションをクリアすることができなかった。勝利を収めた岐阜は勝利プレミアを倍にして決戦に臨んだというが群馬は通常通り。この一戦にかけるクラブの方針の違いも結果に直結した。試合後、サポーターから激しいブーイングを浴びた秋葉監督は「まだ終わっていない」と呼びかけ、次節以降の立て直しを誓った。残り９試合、選手たちはサポーターのために戦う義務がある。

以上

2013.09.16 Reported by 伊藤寿学