愛媛の石丸清隆監督が「素晴らしいピッチコンディションを提供してくれた。本当に感謝したい」と語ったように、とりぎんバードスタジアムの芝生に水がたまることはなく、グラウンダーのパスにも影響は出なかった。それでも昼過ぎからの雨が試合中も強い勢いで降り続き、両チームの選手やファン・サポーターに打ちつける中で行われた一戦は、土壇場でスコアが動き、1―1の引分に終わった。

前半は鳥取が、愛媛のボールホルダーを良い形で追い込んでボールを奪い、多くのチャンスを作った。鳥取はこの日、負傷離脱から4月以来の復帰となる柳川雅樹がセンターバックに入ったのを始め、右サイドバックに初挑戦の森英次郎、ボランチの一角に本来は左サイドバックの武田英二郎を起用するなど、先発陣を大幅に入れ替えたが、前田浩二監督が試合後に「守備については、プレスと、スタートポジションにセットするというメリハリが、以前までのゲームよりもしっかりできた」と振り返った通り、守備で主導権を握ることができていた。
ただ、相手ゴールに近づいてからのラストパスやシュートの精度が低く、また愛媛守備陣の最後の踏ん張りもあって、相手ゴールに迫っている割に、決定機と呼べるものは少なかった。最大のチャンスは28分、ゴール正面からＤＦドゥドゥが左足で狙ったが、わずかに左に外れ、先制することができない。

一方の愛媛は、ＭＦ村上巧の「セカンドボールがなかなか拾えなかったことと、自分たちのミスから相手に良い形でボールを奪われたのが、相手のペースになった要因」という言葉通り、ルーズボールへの出足が遅く、簡単にボールを奪われてリズムに乗れない時間が続いた。それでも無失点でしのぎ、攻撃ではセットプレーのチャンスが何度かあったほか、24分には東浩史の惜しいシュートがあったが、こちらも得点は奪えず、0―0で後半へと折り返した。

スコアが動いたのは後半立ち上がりの50分。前半からリスタートでの正確なキックでチャンスを演出していた愛媛ＭＦ加藤大が、右ＣＫをニアサイドに送ると、中央まで流れ、「抜けてくるのを予想していた」という園田拓也がヘッドで押し込んだ。押され気味だった愛媛にとっては貴重な、逆に鳥取にとっては嫌な流れとなるゴールだった。

その後は、何とか追い付きたい鳥取が攻撃姿勢を強める一方で、愛媛も何度かカウンターで突き放すチャンスがあったが、決めることができない。だが82分、鳥取ＭＦ武田英二郎が、ルーズボールの競り合いでの接触プレーで退場処分。数的優位に立った愛媛が、より勝利に近づいたかと思われた。

それでも鳥取は、武田退場後にドゥドゥを前線に残してパワープレーに転じ、スローインもドゥドゥがロングスローで投げ入れるなど、懸命にゴールをこじ開けにかかる。その執念が実ったのは、3分と表示された後半アディショナルタイムの92分。左ＣＫからの岡本達也のヘッドを愛媛ＧＫ秋元陽太がはじいたところを、ドゥドゥが左足で蹴り込み、劇的な同点ゴールとなった。

結局、そのまま1―1で引分。愛媛は9月11日に行われた26節の延期分、栃木戦に続く連勝を逃した。石丸監督が「相手が退場してからの対応が、チームとして経験不足というか、バタバタした。非常にもったいないゲームだと感じます」と振り返った通り、最後の最後で踏ん張れず、勢いに乗り切れないシーズンを象徴するような結果となった。

鳥取は、22節以来の未勝利が11試合に伸びたものの、リーグ戦の連敗を3、天皇杯を含む公式戦の連敗を4で止めた。敗れていれば、先に試合を終えていた岐阜に抜かれて最下位に転落するところだったが、かろうじて並び、得失点差で21位に踏みとどまっている。ただ、内容は最近数試合では最も良く、チャンスの数も多かったが、それを決められずに逆に先制され、苦戦を強いられる展開は、こちらも愛媛同様に、今季の苦しいチーム状態を象徴していた。

次節は、アウェイの岐阜に乗り込んでの、Ｊ2残留争いの大一番。この日の引分を「今後につながる勝点1だと思う」と振り返った前田監督は、その次節について「決戦になると思っている。アウェイですが、チームが一つになって、絶対に勝点3を取ってくる覚悟で臨みたい」と、強い口調で語った。

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2013.09.16 Reported by 石倉利英