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【J1:第25節 川崎F vs 広島】レポート:両チームのエースが封じられる中、川崎Fが技術力で勝利(13.09.15)

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大久保嘉人、佐藤寿人と、両チームのエースはともにシュート0。しかし、試合結果は2−0と川崎Fに軍配が上がった。エース以外の選手の質の高さと、点を取る術を持っていたという点で、川崎Fが広島を上回る試合となった。

中村憲剛が鮮やかに西川周作のニアサイドを射抜いた前半10分の先制点は、風間八宏監督が作ってきたサッカーの一つの到達点として語られるべきものである。
マイボールのスローインから後、中継映像で確認できる範囲で川崎Fは25本のパスを繋ぎ中村憲剛にフィニッシュを託した。その間、相手に触られたのは1度だけ。24本目のパスを受けた田中裕介が、ドリブルでゴールに向けて仕掛けた場面のみだった。試合開始直後の、体力的にも問題のない広島を相手に、ほとんどボールを触らせることなくバイタルエリアにボールを運んだのである。

もちろん過去にもパスを繋いで相手を攻め崩した得点がなかったわけではない。ただ、相手は堅守で鳴らす広島である。直近の試合ではその評価が訂正されるべき状況ではあったが、それにしても千葉和彦、水本裕貴、塩谷司を並べた最終ラインは強固で、ここに両ウィングバックが帰陣して5枚の壁を構成。更に広島は中盤の4選手が最終ラインの前に防衛線を形成し、こうして作られる守備ブロックは非常に固くなる。そして川崎Fはそうやってゴール前に枚数を揃えるチームにことごとく苦戦してきた。だからこそ、ほとんどパスのみで崩したこの先制点は、中村のファインゴールと相まって、意義深いゴールとなった。近い将来、風間監督率いる川崎Fのサッカーを振り返った時、この得点が転換点として語られることを予感させるゴールだった。

風間監督は常々「相手は関係ない」のだと言い続けてきた。その意味するところは、どれだけ相手がいようとボールを失わなければ相手は何もしようがない。ボールを持つことで主導権を握れる、ということ。それを試合の中でゴールという結果で見せてくれた訳だ。
試合を通して川崎Fはマイボールの時間を増やし、枚数をかけて広島陣内に攻め込む。これに対する広島の反撃は、右サイドのファン・ソッコのドリブルでの仕掛けや、青山敏弘や森崎和幸を起点とした、佐藤寿人や清水航平といった選手をターゲットとした縦パスを基本としたもの。しかしこうした広島の攻撃はセンターバックの井川祐輔とジェシとを中心とした川崎Fの守備陣が跳ね返し続けた。そもそも広島は、守備に重点を置くため、その攻撃は散発となりがちで厚みを持たせることが難しい。それでも前半43分に高萩洋次郎が技巧的なミドルシュートを放ち、川崎Fゴールを襲っている。結果的に西部洋平のファインセーブに阻まれノーゴールに終わっているが、これが決まっていれば試合の展開はまた違っていたのかもしれない。

川崎Fは前半終了間際の45+2分に、中村の頭脳的なスルーをきっかけとしたカウンターでレナトが2点目を奪う。
「(森谷)賢太郎が運んだ時にミズ(水本裕貴)が後ろにいて、レナトも背中にいるのはわかっていた。賢太郎のボールがゆっくりだったらコントロールしようと思ってたんですが、早かったので、これは触らない方がいいと。相手の人数が少ないのはわかっていたので思い切ってスルーしました」とその場面を振り返る中村に対し、森谷は「憲剛さんがああやってスルーしてくれて。普通に憲剛さんに出したんですが、あれは憲剛さんがいいスルーだったと思います」と述べている。
レナトとともにカウンターを成功させた大久保嘉人は「相手DFが2人とも向こうから流れてきたので、レナトからボールが来る前から引きつけてもう一度出してやろうと思っていました。シュートを打つと見せかけて、もう一度返してやろうと最初から決めてました」と話している。森谷が中村に出した強くて正確なパスと、中村、大久保の広い視野と冷静な状況判断によって生み出されたレナトのゴールだった訳だ。

その大久保は「打てば決まる気がする」と話すミドルシュートを習得し、この試合でもミドルを打てそうな場面が3度はあったという。しかし「(パスを)出してくれなかった。(森谷)賢太郎とかもそう。終わって言ったんですが『お前出せよ(笑)』って。そしたら『絶対に出さない。決めさせないよ(笑)』って(笑)。まあ、そうやって言えるってことは、みんなに余裕があるってことだと思います。いいことだと思います」と笑顔で振り返っていた。シュート0に終わった試合ではあったが、そうやって若手選手の軽口を笑えるくらいの余裕を見せた試合後だった。

0−2で迎えた後半。広島は61分のミキッチの投入を皮切りに攻撃的な交代采配を行い、前向きのパワーを出し始める。82分には千葉和彦を下げて浅野拓磨を投入。4バックへとシステムを変更して川崎Fゴールを目指した。86分にはその浅野が持ち前のスピードを見せ、川崎Fの右サイドをえぐるが、マイナスのクロスはペナルティエリア内に殺到した広島攻撃陣にわずかに合わず。紙一重の場面もあったが、川崎Fは広島の攻撃をしのぎ切り、2−0のままタイムアップ。風間八宏監督の就任以来3連敗中の広島に、ようやく内容が伴う形で勝利する事となった。

1点目に象徴される技術力を背景とした攻撃は見事ではあったが、風間監督に満足という言葉はまだ早そうである。というのも風間監督は試合後の会見で「もっともっと質を高めていかなければなりませんし、もっともっと自分たちがアイディアを表現できるようにしなければならない」と話しつつ「あと1本足元に入っていれば突破できる場面が特に前半は何本もあった。あるいは足元に入れてあげれば突破できているところを、スペースで競争になっている」と反省の言葉を忘れなかった。ただ、これはさらに良くなる可能性を示しているのだとも述べており「そういうところが細かくなっていけば、もっともっと面白い攻撃ができると思っています」と先を見据えていた。
なお、この試合の結果3連敗となった広島の森保一監督は「技術、戦術以前に球際の戦いとか、そこで走り負けないとかの部分」が問題であり「最後のところでやはり突き詰めてやっていく」と述べている。勝てていないからこそ、目先を変えるのではなく基本的なところに立ち返ろうという方針の表明であり、立ち返る場所の存在を示した言葉でもある。ここから広島はどのようにチームを立て直すのだろうか。

最後になるが、今節は上位陣が勝てなかった。そのため、3位広島の順位に変更はないが、川崎Fとの勝点差は5に(広島44、川崎F39)。またC大阪と引き分けた首位・横浜FM(勝点48)との勝点差も9に縮まっている。

以上

2013.09.15 Reported by 江藤高志
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