このような結末を迎えると、誰か予想した人はいるだろうか。結果をご存じの方も多いと思うので、90分のシーンからお伝えしようと思う。
右サイドからの鳥栖のロングスローで入ってきたボールを湘南の選手がクリアした。そのボールを拾った鳥栖が、右サイドからのクロスを湘南ゴール前に送る。競ったのは、飛び込んできた鳥栖の選手と待ち構えた湘南のDFだった。ボールのコースが変わり、カバーに入っていた湘南の選手の頭に当たった。そして、そのボールはGKの股間を抜けて湘南のゴールへ…。結果的には、湘南のオウンゴール。これが、この試合の決勝点であり、鳥栖と湘南の勝点差が10(鳥栖30、湘南20)まで広がるゴールだった。
両チームのサポーター、およびサッカーを愛する読者の方は、ここだけをお伝えしてもこの試合のレポートにならないことは重々承知しているであろう。J'sGOALのレポートらしく、できるだけこの試合で起きたドラマをお伝えしたい。
この試合を迎えるまでの両チームの勝点差は7だった。14位の鳥栖、16位の湘南、残り試合を考えると負けられない状況は一緒だった。ピッチに立った選手たちのプレーからも、テクニカルエリアから指示を出す監督の姿にも、そこは十分に感じられた。
試合序盤から、ボールに対する執念は非常に感じられた。相手がトラップした瞬間に身体を寄せ、ドリブルで運び出したら身体を入れて、確実に自由を奪っていた。ボールに寄せることができないとみると、しっかりとした守備ブロックを引いてパスコースを消した。このようなプレーをお互いが行えば、そう簡単にゴールを割ることはできない。結果的に89分までは、0−0の状態が続いた。
鳥栖は、センターバック菊地直哉がDFラインをコントロールしてできるだけ高いポジションを取った。湘南のFWウェリントンが引いてボールをもらうシーンが多かったのもそのためである。空いたスペースを突こうとFW大竹洋平、FW菊池大介が動くのだが、鳥栖の前線がボールの出どころを抑えてそこにはボールを入れさせなかった。湘南のシュートが前半は4本、後半は1本に抑えられた要因はそこにある。
対する湘南も、センターバック大野和成を中心に高いDFラインを引いた。湘南は3バックを採用しているので、その両ワイドはMF宇佐美宏和、高山薫がケアをすることになる。鳥栖がサイドを起点にボールを動かすと、湘南の両ワイドMFは守備に入り5バックを形成することになる。この守備の意識は最後まで崩れることはなかった。中央でも、ボランチのハン グギョンが入ってきたボールを奪取し、セカンドボールを拾い続けていた。ここの連携を崩すのに鳥栖が手を焼いていたのは事実。セットプレーから惜しいチャンスは作れても、長短のパスで湘南DF陣を崩すことがなかなかできなかった。湘南にとって悔やまれるのは、72分にハン グギョンが足を痛めて交代を余儀なくされたことだろうか。
両チームのこの試合に賭ける思いは、見ている人たちに十分に伝わったに違いない。ボールに対する執念も、プロ選手を目指すサッカー少年たちの教材になるものと言えた。しかし、勝負の非情さが、最後の最後で顔を出した。
得点を目指してボールを前へ運ぶ者がいれば、それを阻止する者もいる。片方に得点が記録されれば、もう片方には失点となる。勝者がいれば、敗者もいるのである。J1残留に向けて大きな一歩を踏む出したチームがいれば、より苦境にさらされるチームもある。必死に戦っているからこそ、その結果が時には非情に映る。この試合に関して言えば、タラレバで試合を振り返る必要はないだろう。素直にワンプレーワンプレーを追い、争点に興奮し、結果を受け入れるだけである。90分間を戦った選手を批判することは誰にもできないと思う。それだけ、彼らは力を出し切って戦ってくれたのだから。今シーズンを振り返るとき、名勝負をあげる機会をいただくならば、是非とも真っ先に推したい試合だった。
勝負は表裏がハッキリしているものである。サッカーならば、勝者と敗者、得点と失点、攻撃と守備…。お互いに求める結果が同じだからこそ、その結果を分け合うことはできないのであり、それが勝負であり試合なのである。時にサッカーのおもしろさは非情でもあることを忘れてはならない。
以上
2013.09.15 Reported by サカクラゲン
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