人は、守るべきものが増えると強くなれる。
その強くなる要素には、さまざまなものが含まれている。
そこに至るまでの結果や自信、守るべきものへ責任感、そして自分自身のプライド…。
それらを賭けた大一番ともいえる一戦が、今節のベストアメニティスタジアムで行われる。
鳥栖は、後半戦に入って良い流れで戦っている。特に直近の4試合は3勝1分と戦う側も見る側も満足できる内容といえる。その大きな要因は、2人の選手の加入で引き出された『鳥栖らしさ』に尽きる。相手に合わせて器用に戦術を変えたり、真正面から受けて立ってねじ伏せたりすることができているわけでない。ただ、どんな相手でも、鳥栖らしさを出せれば結果が出ているのである。前半戦は、わかっていてもそれが出せなかった。相手から研究されたり、らしさを封じ込める戦術を用いられたりと、2年目の苦しさを味わってきた。そこに、主力選手のケガが加わった。そこでクラブが打った手は2人の選手の期限付き移籍だった。CB菊地直哉とGK林彰洋が加わると、相手には関係なく『鳥栖らしさ』が復活してきたのである。読者諸兄には、この鳥栖らしさの説明は不要だろう。ここでは、『コンパクトな守備』とだけ表現しておく。
対する湘南のポイントは、鳥栖の『コンパクトな守備』を崩せるかどうかにある。3バックからの前線へのフィード、前線の選手のポジションチェンジなど、多彩な攻撃のパターンを持っているだけに鳥栖の守備陣を慌てさせるような仕掛けを見せると流れは一気に湘南に傾く可能性を秘めている。また、曹貴裁監督の選手起用も鳥栖にとっては不気味である。天皇杯で結果を出したFW大槻周平やテクニシャンのMF大竹洋平、高い位置でのプレーができるDF宇佐美宏和ら、高さや強さ、上手さでの幾通りの組み合わせが可能である。鳥栖のGKとDF、DFとMFの間で彼らが思う存分に力を発揮すると湘南の一方的な展開になる可能性も秘めている。
サッカーには、絶対的なセオリーはない。それは、鳥栖対湘南の前回の対戦を見ればわかる。今季の初対戦は、3月9日の第2節・Shonan BMWスタジアム平塚での試合だった。序盤から鳥栖はFW豊田陽平にロングボールを集め、湘南陣地の奥深くで試合を進めていた。それが崩されたのは、湘南の一本の速いクロスからだった。先制点は、苦戦していた湘南があげた。その後も、鳥栖が主導権を握って攻め続けたが、途中交代で入ったFW野田隆之介のシュート一本しか決めることはできなかった。
今節は、メンバーもおかれている状況も当時とは全く異なっている。勝利への過程ではなく、勝利という結果だけを求められる試合となる。14位の鳥栖、16位の湘南、ともにJ1残留のためには叩いておかないといけない相手と言える。爽秋のナイトゲームは、熱い試合となりそうだ。
サッカーを見る理由は事欠かない。
地元のチームだからや贔屓にしている選手が所属しているからなど、人それぞれである。
先日、ある方から「選手交代で流れが変わるところが面白い」と奥深い理由をお聞きした。
ワンプレーで攻守が交代するサッカーは、試合の流れを引き寄せる妙策を取りにくいスポーツでもある。
ボールデッドの時にしか選手交代が行えないということは、一瞬とはいえ冷静に現状を知る機会ともいえる。
ピッチに対するベンチからのメッセージで、選手交代ほどわかりやすいものはない。が、その交代がピッチの中で選手たちが感じている(求めている)ことと一致するのかどうか。
そんなサッカーの奥深さも楽しんでみたい。
サッカーを見る理由には事欠かないのだから。
以上
2013.09.13 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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