本文へ移動

今日の試合速報

夏休みはJリーグに遊びに行こう! 全国で180,000名様ご招待!
夏休みはJリーグに遊びに行こう! 全国で180,000名様ご招待!

J’s GOALニュース

一覧へ

【第93回天皇杯 2回戦 川崎F vs 高知大】レポート:選手を入れ替えて臨んだ川崎Fが高知大に苦しめられるが、最後は地力の差を見せて逃げ切る(13.09.12)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1点を追いかける高知大の後半の入りはかなり良かった。川崎Fが持つ攻撃力にも怯まず、前線に人数をかけてボールを高い位置で保持し、セカンドボールを拾い続けて川崎Fを押し込んだ。
10分ほども続いた悪い流れのその時間帯について小宮山尊信は「ああいう時間帯もあるということはわかっているし、そういう時間帯だなと思っていました」と説明する。今までにも何度となく経験してきた嫌な時間帯の一つ。ただ、その時間帯に「隙」になり得るいくつかの際どいプレーが連続したことで、川崎Fは右サイドを破られる。後半開始早々の51分。右サイド深くえぐった塚本諒からの折り返しを、出口晋一郎が落ち着いて流し込み、高知大が1−1の同点に追い付く。

川崎Fがアラン ピニェイロの前半10分のPKにより勇気づけられ、等々力が大量得点を予感したのと同様に、高知大が押せ押せのムードになるのがサッカーという競技の面白さ。実際に、高知大を率いる野地照樹監督は試合後の会見で「1−1に追いついたときは『もしかして』ということも考えました」と語っている。老練な指導者をして夢を見させるのだから、出口の同点ゴールが若き大学生の希望になったのは間違いなかった。

逆説的ではあるが、高知大のこの試合のゲームプランは狂っていた。予想外に攻め込めたのである。
「ミーティングでは守っていこうという話だったんですが、意外とパスが回せたので、回せるなら回していこうということでやっていました」と話すのはトップ下でプレーした植木二朗。高知大に1ゴールをもたらした出口とともに攻撃の最前線で川崎Fに圧力をかけ続けた選手である。
また、高知大の左サイドを上下動し、出口のゴールをアシストした塚本も「もう少しディフェンシブに行こうと思ってたんですが、思ったよりも攻めることができた印象です。本当はもう少し守備を固めようという話はしてました。先生(野地監督)も前半は攻め過ぎてたということは言ってました」と振り返る。

この2人の言葉からもわかるように、川崎Fの試合内容はそれほど良いものではなかった。試合後の会見の場で、風間八宏監督に対し「一人ひとりの判断が悪かったように見える」という趣旨の質問が出たが、それに対する風間監督の答えがこの日の川崎Fのサッカーを言い表している。すなわち「それが個人戦術だと思います。いつも言ってますが、誰がやってもできるサッカーではなくて、一人ひとりがそれだけの個人戦術を持って…。ただし今日は出来なかったというところはあります」と暗に個人戦術に問題があったと認めている。それもそのはず。この日の川崎Fはメンバーを大幅に入れ替えて試合に臨んだのである。森谷賢太郎は、このメンバーでの紅白戦である程度の手応えを感じていたと話していたが、それは練習での話。公式戦の舞台とはまた勝手が違っていたということだろう。

そういう意味で1−1にされた川崎Fは危機的状況に立たされていた。だからこそ、64分の棗佑喜のゴールがチームを救った。すでに同じような場所で得たFKを壁に当てていた福森晃斗は、鋭く棗のポジションを確認。「棗さんについてるマーカーがあまり背の高い人ではなかったので、賢太郎くんと相談して棗さんに合わせよう」とFKを蹴る。ファーサイドに立つ棗は素早く落下点を認識し、そこに走りこみながら頭で合わせた。
「ゴールラインから出そうでもなかったんで。出そうなら折り返そうかと思ったんですが、前目だったので、体ごと行こうと思って。枠に飛ばすイメージです」と話す棗のヘディングシュートは、GKの伸ばした手の先を越えてゴールに転がった。棗にとって川崎Fでの初ゴールだった。

勝ち越しを許した高知大の植木は「まだ1点差ではわからないと思っていたので、声を掛け合ってモチベーションを下げないようにしてました。ぼくの中ではまだ行けると思っていました」と話すが、1点差の時間はわずかに3分間のみ。67分にアランが中澤聡太からのパスを持ち込み決定的な3点目を決めて試合の大勢は決した。
高知大は72分に宮川晃至が「普段、足をつるようなことがないキャプテンが足をつった」(野地監督)ことで、副キャプテンながらベンチを温めてきた山崎晋哉と交代。「とにかくまさかの登場でした」と山崎は自らの出場を振り返る。また野地監督も「ディフェンスの交代というのはあまりしたくなかった。ですが、これもサッカーですから仕方ないと考えています」と話す交代となる。この結果、高知大は交代枠を使い切り「もう1人出したい選手がいた」(野地監督)にも関わらず、それを使うことができなかった。90分間走り切ることで川崎Fを追い詰めはしたが、その代償はやはり高かったということなのだろう。

結果的に試合はこのまま終わり、川崎Fが3−1で高知大を下し3回戦へと駒を進めた。個人戦術ではまだまだ伸ばしていく必要のあるメンバーではあったが、結果を見れば順当なものとなった。なお、この日先発フル出場した高知大出身の實藤友紀は「(高知大が1回戦を)しっかり勝ってきているし、自分もやりたかった。こういう対戦って、たぶんなかなかないことなので、本当に自分のサッカー人生でいい思い出ができました。思い出に残る試合になったと思います」と試合を振り返っている。試合後のテレビのフラッシュインタビューに答えた関係で高知大の選手たちとともに場内を挨拶して周り、最後は高知大のスタッフや選手たちと記念写真に収まった。試合前には高知大のロッカールームに顔を出すなどしており、ピッチの内外で後輩たちとの邂逅を楽しんでいた。
また高知大の学生たちもプロ入りした先輩とのプレーを通じ、プロのレベルを痛感する。植木は「(實藤は)ぼくが入った時の4回生なので、本当に神のような雲の上の存在のような感じでした。プロですし、一つ一つのプレーの当たりが強くて大学時代とは違っていたので、そこは僕達との差は感じました」と試合を振り返っていた。
結果的に負けはしたが、大学生らしいがむしゃらさで川崎Fを押しこみ、一時は同点にまで追い込んだ高知大の戦いぶりは賞賛されるべきだろう。彼らにはインカレが残されている。實藤が果たせなかった日本一という夢をぜひ彼ら後輩が果たすべく健闘を祈りたいと思う。そして、悲願達成の暁には偉大な先輩に盛大に祝ってもらってほしい。

以上

2013.09.12 Reported by 江藤高志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/07/29(月) 00:00 ハイライト:岐阜vs鳥取【明治安田J3 第23節】