9月になってしまった。
「なってしまった」というのはあまりにも主観すぎて、9月になるのを待ちわびていた方には申し訳ないが、本当にそう思っている。なにしろ、外出の際にウインドブレーカーを持って出る日がいよいよやって来たわけで(必要ない場合も多いが)。
7月の中頃から8月の途中にかけては、その気温の高さに「うっとおしいなあ。早く冬になんねーかなあ」とボヤいていたくせに、いざ秋が近づくと、なにやら寂しげな気持ちになってしまうのだからワガママなものである。単なるオッサンのくせに、意味もなくちょっと感傷的な気分にもなってみたりして。
きっとたぶん、熱い夏だったんだと思う。
ベトナム代表FWレ コン ビンの加入後、札幌においてはこの選手についての話題が多く、いや、多すぎると感じている人もいるかもしれない。でも実際、札幌というクラブを取り巻く環境のなかで「ベトナムの至宝」の加入というのは、この夏をより魅力的なものにしてくれたと感じているし、報じられて然るべきものだとも感じている。そして、サッカー以外の部分の楽しさも生んでもらったような気がしている。
個人的に最も印象に残っているのは、ビンが加入して最初のリーグ戦となった8月11日の第28節・横浜FC戦(○2−0)だ。
ビンはさっそくベンチ入りを果たし、スタンドには多数のベトナム国旗が揺れていた。地元出身の選手が大半を占めるチーム構成でありながらも、あらたに国外からチャレンジをしにきた選手に対する温かな歓迎ムードは本当に素晴らしいと思った。
この日、母国の英雄が出場するかもしれないとあって、スタンドには札幌市在住のベトナム人の姿も見られた。残念ながらビンは出場しなかったが、ベトナムの人の感想を聞いてみようと思って試合後に話を聞きに行ってみた。
ベトナム人男性、歳のころは40歳くらいだろうか。その男性に筆者は「ビン選手が出場しなくて、残念でしたね」と会話の導入として声を掛けてみたのだが、男性から返ってきたのはこんな言葉だったのだ。
「それはそうですけど、でも、とても楽しい気持ちでいっぱいです。サッカー観戦がこんなに楽しいなんて、知りませんでしたから。いやあ、本当に楽しい」
男性はそう言葉を発しながら、試合後に選手がゴール裏のサポーターと喜びを分かち合っているほうにずっと視線を向け、拍手を続けていた。
推測するに、きっと男性はプロサッカーを観戦するのは初めてだったのだろう。そしておそらく、北海道に住んでいるとはいえ、札幌の選手についてもそんなには知識はなかったのだとも思う。この日の試合には日本代表選手が出場していたわけでもないし、海外組がいたわけでもない。それでも初めて観戦に訪れた男性をこんなにも楽しませることができるのだから、Jリーグのスタジアムというのは非常に魅力的だと、あらためて感じさせてもらうことができた。J1、J2に関わらず、初めて観戦に来た人をもこんなに楽しませるわけだから。筆者にとっても、ベトナムの人と会話をする機会を得られたし、こちらも楽しかった。
さて、リーグ戦もいよいよ残り10試合ほど。楽しさや、悔しさというのが日増しに膨らんでいく時期がやってきた。そう考えると、ウインドブレーカーを手に外出する季節も悪くない。もしかしたら、心のなかでは待ちわびていたのかもしれない。日本各地のスタジアムでたくさんの喜怒哀楽を生む、エキサイティングな9月になってほしい。
以上
2013.09.12 Reported by 斉藤宏則
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