キンチョウスタジアムで行われた天皇杯2回戦、Ｃ大阪と関西大学の一戦は、Ｃ大阪が杉本健勇のハットトリックなどで4-0と関西大学に快勝。順当に3回戦へと駒を進めた。

柿谷曜一朗、山口螢が日本代表で、キム ジンヒョンが韓国代表のため、それぞれ不在。さらに、南野拓実、丸橋祐介といった主軸も負傷欠場を強いられたＣ大阪。前線には杉本健勇、中盤には楠神順平、両サイドバックには椋原健太、新井場徹、GKには武田洋平が名を連ね、現状プレーできるフィールドプレーヤーが全員控えメンバーに入るという、限られた人数のなかでカップ戦の初戦に挑んだ。

ホームゲームながら、キンチョウスタジアムでは初めて白のセカンドユニフォームを身にまとったＣ大阪。試合では、赤のユニフォームの関西大学に2度コーナーキックを与えるスタートとなったが、7分に訪れた最初のチャンスをものにする。左サイドから楠神の右足でのクロスに、高さで制したのが、杉本。ヘディングシュートを叩きつけると、ボールは関西大学GK志村智久の手を弾いて、ゴールに吸い込まれた。

期待の生え抜き大型ストライカーの先制点で、主導権を握るかに思われたＣ大阪。しかし、その後は、「前半かなり暑くて、この時間というのはあまり慣れてなくて、ちょっと足が止まってしまうという場面が1人1人あったのと、僕らより関大のほうがボール支配率があって、ボールを回されていたのは、僕らもやっていて感じていた」と杉本も言うように、司令塔の和田篤紀を中心とした関西大学のパスワークによる反撃を受ける場面が目立った。

ただ、「ちょこまかやっているだけでは、相手とすれば、怖くなかったと思う。崩しているようで崩せていないというのは、見てくださった方にもそう思われたと思うし、やっている自分たちもそう感じていた」と関西大学の主将・都並優太も振り返るように、ペナルティーエリア付近まではうまくボールを回して攻め込みながら、肝心のシュートという場面まで、なかなか持って行けず。一方、Ｃ大阪側からみれば、「あそこで踏ん張れたから、楽な展開になったんじゃないかなと思う」（武田）。

前半を1-0で終えたＣ大阪。だが、指揮官はハーフタイムに、「モチベーションの問題だけじゃない！　相手のほうがボールをかなり回していたし、ボールを取り切れていない！」と、選手たちに猛烈な檄を飛ばし、チームの引き締めを図る。そして、エジノ、椋原に代えて、横山知伸、小暮大器を投入。ボランチのシンプリシオをトップ下に上げた形にして後半に臨むと、その意気込みがすぐに結果となって表れる。
後半が始まって3分後の48分、敵陣ハーフウェーライン付近で扇原貴宏が相手からボールを奪うと、そこからシンプリシオがスルーパス。前線へ抜け出してそのボールを受けた杉本は、相手GKをよく見て、冷静にゴールへと流し込んだ。

2-0とリードを広げたあとも、ミスが散見されるなど、決して万全の戦いをしていたわけではなかったＣ大阪。それでも、「相手に『回させている』感じでやっていれば、別に問題ない」とGK武田も言うように、守備面で慌てることなく対応。関西大学の選手たちに「球際も相手のほうが強いし、こぼれ球、ルーズボールとかの反応も、相手のほうが速かった」（都並）と言わせるような、要所でプロの実力を見せつけたことで、大きな隙を与えることはなかった。

そのなかで、79分にはフリーキックの流れから最後は山下達也がヘッドで押し込むと、終了間際にはペナルティーエリアで楠神が倒され、PKを獲得。これを杉本がきっちりと決めて、今季から20番を背負う男が、プロ入り初のハットトリックを達成。終わってみれば4-0という大差で、Ｃ大阪は関西大学を下した。

リーグ戦3連続引き分けのあとの試合で、主軸不在のなか、アマチュア相手とはいえ、着実に結果を残したＣ大阪。「欲をいえば、4点、5点と、取るチャンスはあったので、そこで決めきるというところでは、まだまだ課題がある」と杉本も言うように反省点も残ったが、「（大学生相手の試合で）負ければ本当にプロの恥なので、今日は勝ててよかった」と小暮も言うように、プロとしての意地をしっかり見せることができた。

一方の関西大学は、2年連続J1クラブとの天皇杯2回戦だったが、今回もジャイアントキリングは果たせなかった。「今日の試合だけを見れば、大きな差はあるし、それに対して自分たちの力を出せなかったことも残念」と主将の都並は悔やんでいたが、「今日の試合で感じたことをどれだけ次につなげられるかというのが、個人としても、チームとしても、それに尽きると思う」と、この経験を活かすべく、ここからの学生リーグ戦などでの奮闘を誓っていた。

以上

2013.09.09 Reported by 前田敏勝