はじめての大分ダービーは、お互いの新たな一歩となった――。
「オールドファーム」に「エル・クラシコ」、「ルールダービー」、「ローマダービー」など、世界には多くのダービーマッチがある。それらは、長い時間をかけて地理的な要因や様々な特性が加わりながら、次第に両者の間に敵対心が芽生え始めてダービーマッチへと発展した。
冒頭の言葉は、試合後の記者会見で大分トリニータの田坂和昭監督が語ったひと言だ。「同じ県でダービーが行われるということは地域の発展にもつながる。今後も“上のカテゴリー”でダービー続くように、お互いが上を目指し、クラブとして成長できばと思う」と続けた。
上のカテゴリーとは、やはり日本最高峰のリーグであるJ1である。大分トリニータは健全経営の下でJ1に定着することがクラブの目標である。そして、同じ地域に大分トリニータというリーディングクラブがあることで、今回はJ3への参加表明を断念したHOYO大分だが「Jを目指していないわけではない」(佐藤輝和統括部長)。大分のサッカー熱が上がれば、「いつかはJへ」という思いはある。両チームがJ1の舞台でダービーを繰り広げるのは壮大な夢ではあるが、可能性がないわけではない。56年ぶりに東京でオリンピックが開催されるようにスポーツの世界は、何が起きるのか分からない。
そういう意味でも今回の初の大分ダービーも何が起きるか分からなかった。試合の序盤は「周囲の勝って当たり前という雰囲気が選手のプレッシャーになった」と田坂監督が話したように、カテゴリーが2つ違うHOYO大分に苦戦した。また、直近のリーグ戦の先発メンバーから6人入れ替えたことで連係不足は否めなかった。マークの寄せが甘く、簡単にドリブル突破されシュートまで持ち込まれる場面が散見された。しかし、時間の流れとともに平静を取り戻し、守備組織を安定させることによって突破口を開いた。
28分、西弘則がドリブルで左サイドを突破し、クロスを森島康仁がピンポイントのヘッドで合わせ先制する。そして38分には辻尾真二のパスを受けた児玉新が1点目と同じように中央にクロスを供給し、それに詰めた森島が再び頭で合わせ、2点リードで前半を折り返した。
後半に入って以降も、局面でショートパスをつなぐHOYO大分のスタイルに苦慮することもあったが、「フィジカル、体力の面で疲れが出て、ミスが目立ち、ボールを動かすことができなかった」と結城治男監督が認めるように、HOYO大分のスタミナ切れとともに大分トリニータが主導権を握ったまま試合を終えた。
正直、後半に追加点を奪えなかった大分トリニータの試合内容は低調だった。バックアッププレーヤーの奮起が見られず、逆にHOYO大分に攻め込まれる慌てるシーンも見られるなど、チーム状況の危うさを露呈した面もある。だがそれでも、難しいシチュエーションで確実に得点して3回戦への突破を決めたことで、大分トリニータは最低限の結果を得て、面目を保ったと言える。
奮闘したHOYO大分は、キャプテンの生口明宏が「ホームなのにアウェイ」と苦笑いした雰囲気のなかで、守りに入らず自分たちの攻撃スタイルを貫いた。クロスバーにはね返された前半16分、CKのこぼれ球に詰めた山瀬彰也のシュート、後半58分のドリブル突破した島屋八徳のマイナスのクロスに合わせた日野竜一のヘディングシュートの2本がゴールに吸い込まれていれば、ジャイアントキリングの可能性はあったかもしれない。「トリニータが相手だったので正直倒したかった」と生口は悔しさを滲ませたが、「大分のサッカーファンやトリニータのサポーターにHOYOのサッカーを見せることができたし、アピールできた」ことは収穫だ。それはHOYO大分の健闘称え、試合後にゴール裏のトリニータサポーターから『HOYO大分コール』が起きたことが証明している。
大分トリニータとHOYO大分。この両チームの実力が伯仲しライバル関係になった時、真の大分ダービーと呼べる日が来る。まだまだ時間がかかりそうだが。
以上
2013.09.09 Reported by 柚野真也
J’s GOALニュース
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