カテゴリーが違うチームが対戦する一発勝負のトーナメントでは、先制点をどちらがどの時間に取るかで勝敗が分かれることが多い。「今日は試合の入り方が良かった。そういう中でいい時間帯にケンペスが先制点を取ってくれたのもあって、今日はウチのゲームかなと（試合を）やっている時に思いました」と千葉の米倉恒貴が話したように、試合開始早々から立て続けに得点機を作るなど試合の入り方が良かった千葉が、それらの得点機を決められずに時間が経って焦ってしまう前に先制点を奪ったことが大きかった一戦だった。

千葉はＧＫの大久保択生、中盤の町田也真人、ＦＷの森本貴幸が今季の公式戦初スタメン。そして、今季は基本的に４−５−１システムだったのを森本とケンペスの２トップに変えて臨んだ。３分、米倉のアーリークロスに森本がボレーシュートで合わせて先制点かと思われたが、オフサイドでノーゴール。６分には伊藤大介のＦＫからケンペスがフリー気味でヘディングシュートもクロスバーの上、８分には再び米倉のクロスから森本がダイビングヘッドのシュートを放つが讃岐のＧＫ瀬口拓弥が好セーブを見せた。

讃岐は自陣に引いて守ることはせず、ＪＦＬでの戦い方と同様に前線から激しくプレッシャーをかけ、ディフェンスラインを高く維持して全体をコンパクトにして戦った。だが、動いて効果的なポジションをとりながらパスを出す町田が千葉の攻撃のリズムをいつもよりもテンポよくしていたこともあって、讃岐は思うようには千葉のボールを絡め取ることができなかった。また、攻撃ではパスやポジショニングのズレでオフサイドになったり、千葉の守備陣にボールを奪われたりしてなかなか得点機を作ることができなかった。

千葉は17分、ボールを奪うための『前へ』という意識が高かった佐藤勇人がプレッシャーをかけて得たボールから、ケンペスがＧＫとの１対１で冷静にシュートを決めて先制。23分には伊藤が米倉へ出したパスは讃岐のＤＦにカットされたが、「『前へ、前へ』という意識は僕の持ち味」という米倉がそのプレーを実践してボールへアタックに行ったことで追加点が生まれた。これで２−０とリードした千葉が一気に押し切るかと思われたが、31分、讃岐のアンドレアのシュートを千葉の大久保がセーブ。その後は讃岐のＣＫが続き、33分に波多野寛のヘディングシュートで得点機を作るが、ここも大久保がセーブした。

讃岐の反撃の時間帯は後半開始直後も続いた。千葉陣内に攻め込んでＦＫやＣＫを得たが、シュートの精度を欠いて得点機を作りきれない。この時間帯をしのいだ千葉は57分、ケンペスがボールを奪ったところからリズムよくパスをつなぎ、町田のクロスに『前へ』走りこんだ佐藤勇がヘディングで追加点。64分には伊藤のショートコーナーのボールを受けた高橋峻希が思いきりよくシュートを打つと、グラウンダーのボールは瀬口の手を弾いてゴールイン。高橋の千葉での初ゴールとなった。さらに88分、佐藤勇、森本とパスをつなぎ、米倉のクロスにまたもや『前へ』走りこんだ佐藤勇が右足で合わせてゴールを奪った。

讃岐は攻撃のストロングポイントのアンドレアの突破が、対面の千葉のサイドバックの米倉に封じられることが多かったのが痛かった。だが、敗色濃厚でもゴールへの意識は衰えず、80分にはアンドレアのクロスから西野泰正のシュート、90分にはやはりクロスから今度はアンドレアが決定的なヘディングシュートを見せるが、いずれもゴールポストの横。シュート数は千葉の11本に対して９本とほぼ互角も無得点と精度不足は否めなかった。

千葉はチーム全体で攻守両面での『前へ』の意識の高さが勝利につながった。調子を上げつつある森本、ＧＫ岡本昌弘を確実にバックアップする大久保に加え、町田が十分に計算できる戦力として結果を残したことは、今後のＪ２リーグの戦いに好影響を与えそうだ。

以上

2013.09.09 Reported by 赤沼圭子