この日の神戸はJ2リーグ残り10節の戦いを視野に入れ、チームの底上げを担う“新戦力”を試した。GK植草裕樹と右サイドバックの和田倫季が今季初先発を飾り、戦線復帰したセンターバック河本裕之や左サイドバックの相馬崇人、左サイドハーフの高柳一誠らもスタメンに顔を並べた。2トップは田代有三と有田光希。前半の立ち上がりから和田が右サイドを積極的に駆け上がり、神戸が奈良クラブを押し込んだ。
だが、奈良は8月に加入した岡山一成をセンターバックに配し、最後の最後で神戸の攻撃を跳ね返していく展開。12分にセンターバック橋垣戸光一が負傷退場した後も粘り強い守備を見せていた。
均衡を破ったのは、神戸の吉田孝行だった。30分過ぎに左サイドの高柳からパスを受けた三原雅俊が、中央の田代へ鋭いグラウンダーのパスを通すと、田代が相手DFを背中に背負いながら後方の吉田へ。それを吉田が豪快に蹴り込んだ。
勢い付いた神戸は34分過ぎのCKから、クリアボールを左サイドにいた和田へつなぎ、逆サイドの北本へセンタリング。フリーの北本がそれを絵に描いたような見事なボレーで追加点を挙げた。その後も神戸が何度か決定機を作るが、結局2−0で前半を折り返した。
後半。動いたのは奈良だった。DFラインに入っていた長身の岡山を前線に配すと、3バックから4バックにフォーメーションも変更。その意図を矢部次郎監督は「(前半は)ちょっと相手をリスペクトし過ぎて、相手に合わせてもったいないと感じる部分もあったので、後半は自分たちが主体的にやろうとしました」と振り返る。両サイドバックが高い位置を保ち、攻撃的なスタイルへとシフトした。
だが、その出鼻をくじくように、神戸の吉田が47分にダメ押しの3点目を決めた。
奈良は90分に岡山のヘディングシュートで一矢報いたが、全体的には神戸が終始ゲームをコントロール。7日後に控えたアウェイ長崎戦(9/15@長崎県立)の「いいシミュレーションができた」と安達監督も納得の内容で初戦を突破した。
最後に興味深いサイドストーリーがあったので記しておく。横浜F・マリノス時代のコーチと選手という間柄だった神戸の安達監督と奈良の岡山一成の話だ。
戦前、安達監督は岡山について「アイツは人間的にタフでいい選手。人間として好きだし、まだ選手として頑張ってやっていることがうれしい」と話していた。だが、対戦となると話は別のようで、3−0で迎えた87分に神戸は長身の金聖基(キム・ソンギ)を投入し、河本裕之、北本久仁衛のエアバトラー3枚を配して“岡山封じ”に出る。ただし、結果的にはそれが裏目に出て90分に岡山にゴールを決められてしまった。
「正直、岡山対策でソンギを入れたのですが、逆にアイツに火をつけてしまったみたいで(笑)」と安達監督は会見で苦笑いを浮かべた。それとは対照的に、4年ぶりに公式戦でゴールを挙げた岡山は「試合が終わってから亮さんに『なんだよ〜俺に点を取らせたくなかったのかよ』って言いに行きました(笑)」と満面の笑み。かつての仲間に課せた“包囲網”を意地でかいくぐった岡山に対し、安達監督は「逆に作戦失敗だったかな(笑)」と、悔しくもあり、うれしくもあるような柔和な表情を浮かべていた。
以上
2013.09.09 Reported by 白井邦彦
J’s GOALニュース
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