試合は、雲の切れ間から残夏の強い陽差しが差し込むｋａｎｋｏスタジアムで行われた。前半は、岡山がキレのあるパス回しから先制し、ゲームをコントロール。後半は2点のリードを許した岐阜が粘り強く好機を作り出すが、岡山が逃げ切って3回戦進出を決めた。

岡山はＧＫに真子秀徳、ボランチに仙石廉、左ワイドに久木田紳吾、トップに清水慎太郎が入り、岐阜はセンターバックに関田寛士、２トップは美尾敦とスティッペのコンビが入ったほかは、リーグ戦の過去数試合から先発メンバーを大きく代えずに臨んだ。立ち上がりは、左サイドバック・野垣内俊の突破やアーリークロスなど、岐阜の積極性が際立ったが、徐々に岡山がセカンドボールを奪ってテンポの良いパス回しで主導権を握る。

岡山は右ワイド・田中奏一の突破から、シャドー・金民均と石原崇兆、仙石廉が絡んで高い位置で小気味よくパスを繋ぐ。さらに金のシンプルな縦パス、清水をターゲットにした裏へのボールと、細やかにバリエーションを増やして岐阜ゴールに迫り、岐阜は左サイドハーフ・染矢一樹が縦横無尽の動きでチャンスを引き寄せる。
スコアが動いたのは前半20分。岡山の石原が中盤でボールを奪うと、ペナルティエリア前中央にいたボランチの島田譲にパス。これを島田がグラウンダーのシュートで決めた。「シュートコースもなくて、スピードも出なかったが、股を抜けたのでキーパーにもたぶんあまり見えなかったと思う。思いきって打ってよかった」と島田。

岡山の先制後、岐阜は自陣に引く時間を強いられたが、右サイドバック杉山新から染矢らを経由して野垣内がシュート、右サイドから崩して美尾がシュートを放つなど、岡山の隙を突いてスピードのある攻撃を仕掛ける。それぞれの持ち味を出す内容で緊迫感のある展開が続いたが前半31分、関田が一発退場となる。岐阜はやむなく柴原誠を下げてＤＦ新井辰也を入れて10人態勢を取るが、直後の前半34分、セットプレーから、岡山のＤＦ近藤徹志が決めて追加点を許してしまう。岐阜にとって厳しくなった前半の残り時間、「０−２で終わらせて後半につなげようと話していた」と染矢。

前半の岐阜はフィニッシュに持ち込めたシュートは公式記録ではわずか１本に終わったが、２点を追う後半の立ち上がりからアグレッシブにボールを奪いに行った。岡山はＦＷ清水が前半終了間際にケガでピッチを退き、代わりに上條宏晃が入った。上條は田中がパスカットして前に繋いだボールを絶好の位置で受けるが枠に飛ばせず、また岐阜もスピードを上げたいところで岡山にスペースを埋められる。この、少しばかりこう着し始めた時間にゴールを決めたのが、岐阜の粘りだ。後半９分、染矢が美尾のパスに抜け出し、フリーの状態でシュート。美尾と染矢の息の合ったコンビネーションが１点を返すゴールに実った。

岐阜は後半22分からＦＷバージェ、ＦＷ樋口寛規を投入。岡山にとってはリーグ戦・第26節の敗戦を思い起こされるメンバーで、バージェは前線でボールを収め、樋口はフィニッシュに持ち込み、岐阜の狙い通りの押し込みに苦しんだが、この日信頼されるＧＫとしての仕事を続けた真子は、「２点目はやらない」という気持ちで守っていたと言う。岐阜のシュートを真子がキャッチし、岡山が手にした天皇杯２回戦の勝利は、Ｊリーグ５年目の岡山がホームの地で初めて岐阜から奪った勝利でもあった。

岡山・影山雅永監督は戦前、「リーグ戦につながる爆発力が欲しい」と話していたが、ゴールへの最短距離を行く金民均、前線で洒落た絡みを続ける石原、強気に攻守に走った田中らが、リーグ戦ではこれまで出せなかった部分も発揮した。10人になって岐阜の選手は明確な役割をこなしたが、「天皇杯ですが、同じリーグのチームとの対戦だったから勝ちたかった」と美尾は話す。そして「すぐリーグ戦があるので、今自分たちのいる順位をもう一度受け止めて、上の順位に行くのはたいへんだけど、やっていかなきゃいけないし、やっていけると信じている」とリーグ戦への思いを口にした。

以上

2013.09.09 Reported by 尾原千明