今日の試合速報

ACLE MD2
ACLE MD2

J’s GOALニュース

一覧へ

【ヤマザキナビスコカップ 柏 vs 横浜FM】レポート:横浜FMを術中にはめた柏。最高のアドバンテージを握り、14年振りのファイナル進出へ大きく前進!(13.09.08)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
J1第18節の対戦で、柏は横浜FMに終始圧倒された。試合終了間際のオウンゴールで何とか追い付きはしたが、あの時の試合内容からすれば、今回のヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦では大苦戦は免れないと思われた。
しかしネルシーニョ監督の手腕たるや、恐るべし。あの前回対戦の経験を下に、横浜FMを封じる策を導き出していたようだ。

柏は、守備の仕方が明らかに普段とは異なっていた。守備の局面では、田中順也の位置が低く、栗澤僚一と同じ高さを取る。そしてその一列後方に、大谷秀和が構える陣形を作る。

「クリさん(栗澤)と(田中)順也がマチ(中町公祐)と(小椋)祥平に付く感じで、僕がトップ下にいる中村(俊輔)選手を見る形だった」(大谷)
「守備の時、僕はボランチの左というイメージ」(田中)
「自分とドゥーさん(近藤直也)の前にタニ君(大谷)をアンカー気味に置いたのが効いていた」(鈴木大輔)

これらの証言からすると、攻撃時の4−2−3−1から、守備に回った時には4−1−4−1へ陣形を変え、大谷がアンカーとなって栗澤と田中とで3ボランチを敷き、中村俊輔、中町公祐、小椋祥平をケアする形を取ったということになる。そして、これが狙い通りにハマった。横浜FMの中盤は非常に流動的であるためマークを受け渡す必要があるが、自分のゾーンに入った時にはタイトに潰しに行くという守備が行えていたことで、柏は横浜FMのパスワークの根幹を封じた。
つまりこれは、J1第18節の前回対戦で、中村にボールを持たれ、そこで起点を作られた上に、新たに生じたスペースを他の選手に使われるという、あの大苦戦の原因を分析し、田中を中盤の位置に降ろして中盤を3対3にすることで、ネルシーニョ監督は横浜FMのストロングポイントを消しにかかったわけである。

横浜FMの試合自体の入りは悪くなかった。ただ、この柏の出方が想定外だったのか、パスワークの“肝”を抑えられたばかりか、攻から守へ切り替わった後には「ボランチのところでサイドにはたかれて、クサビを入れられたくないから下がる。そうするとまたボランチを使われて遅れてしまった。地味に動かされた」(小椋)というように、タイミング良く外と中を使い分け、ボランチをサポートする狩野健太とジョルジ ワグネルらの動きもあって、明確な取りどころを見出せなかった。
自分たちがボールを持った時にはタイトなマークで自由にさせてもらえないが、逆に相手にボールを持たれた時はプレスに行くといなされる。誰が誰を見るのか、それがはっきりしておらず、散々動かされた揚句、攻撃のスイッチを入れるかのような縦のパスが入り、裏のスペースを使われ、後手に回る。「シュートを打たれた場面以外のところでも、失点には必ず理由がある」と中澤佑二が話していたのは、そういった部分での対応のまずさだろう。

実際に18分と44分の田中の2ゴールは、いずれも同じ展開だった。柏が誇る“レフティーモンスター”の会心のシュートが2本も炸裂し、GK榎本哲也にしてみればノーチャンスだったが、そこに至るまでの展開がほぼ同じで、2つの失点につながっていることこそ、横浜FMの対応に問題があった何よりの裏付けであろう。

相手を術中にはめた柏と、完全にはめられた横浜FM。その図式が結果となって顕著に表れ、さらに“決定力の差”が追い打ちをかける。
クレオがプレスバックにより端戸仁からボールを奪い、ブラジル人同士のコンビネーションから最後はワグネルが仕留める。横浜FMの選手たちの多くが、「自分たちのミスから」と悔やんだように、柏は相手のミスを見逃さずにしたたかに加点。一方、数多くのチャンスを作り出していた横浜FMは、柏GK菅野孝憲の好セーブや不運にも見舞われ、それらをことごとく外す。そして、そうこうしているうちに、前がかりの横浜FMに対し柏がカウンターを仕掛け、そこで得た好位置でのFKをワグネルが決めて4−0。なんという効率の良さだろうか。

両者の実力には4−0という大差がつくほど開きがあったわけではない。しかし、その結果を呼び起こす理由が存在したのも確かである。
ただ、柏がホームで大勝できたということは、三ツ沢での第2戦で逆の現象が起きたとしても全く不思議ではない。横浜FMは第1戦の反省点を今一度見直し、この敗戦をホームでの大勝と同時に逆転への糧にしたいところだ。

柏はアウェイゴールを与えず大差での勝利と、これ以上ない理想的なアドバンテージを握った。だが、まだ“前半90分”が終わったにすぎず、何も手にしたわけではない。少しでも油断をすれば、力のあるチームが相手だけに必ず足元をすくわれる。そこを肝に銘じ、14年振りの決勝進出を懸けて、第2戦へ臨む。

以上

2013.09.08 Reported by 鈴木潤
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/10/10(木) 12:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)ホイッスル #7「VARは見逃さなかった!退場になるファウルとは?」