内容が伴わない中、浦和に2点を先行され、劣勢に立たされていた川崎Fを勝利に導いたのは、途中交代出場の森谷賢太郎と、大久保嘉人の二人の働きだった。
試合開始直後に川崎Fが見せた攻勢は、試合の進行とともに封じ込められてしまう。川崎Fは、前線で攻撃を司る3選手のうち、大久保にも中村憲剛にも縦パスを入れられず、攻撃はレナトのドリブル頼みとなった。
川崎Fが縦パスを入れられなかった背景に、浦和の献身的な守備があった。前半を通して消されていた大久保は、浦和の守備について「研究していた(川崎Fが研究されていた)」と話しつつ、その強固さを踏まえ「前半の浦和は完璧だったと思います」と話している。そんな浦和が研究の成果として実行していたのは、忠実なマンツーマンディフェンスだった。
大久保とともにマンツーマンディフェンスの対象となっていた中村も「浦和は相当うちを研究してきた。ほぼマンマークで、降りて行ってもツボさん(坪井慶介)とか山田さん(山田暢久)とか阿部ちゃん(阿部勇樹)もそうだし、くっついてきた」と振り返る。
縦パスを入れてもハードなマークでポイントを作ることができず、またパスが「ちょっとずれてたりして、取られることでちょっとずつ入れたくなくなる」(中村)という状況が生じる。結果的に川崎Fは、安全な最終ラインばかりでパスを回し、思うようにリスクを取ることができなかった。動きが制限された川崎Fは、そういう意味で浦和にコントロールされてしまっていた。
大久保をして「完璧だ」と言わしめた浦和は、前半終了間際の45分と後半開始直後の47分に興梠慎三が連続ゴールを決め、2−0と川崎Fを突き放す。前半からの試合展開を考えれば大久保が「(2−0にされて)まずいと思いました。今日は浦和強いなと。本当に強いと感じました」と感じるのは自然な反応であろう。またレナトも「(2−0から2点を追いついて)引き分けまでというのも難しい」と感じていたという。
そんな劣勢の川崎Fが挽回するきっかけとなったのが、ハーフタイムになされた4バックへの変更の準備だった。田中裕介によると4バックへの変更は2失点目後で「そういう形に変えるかもという指示はハーフタイムにあり、点を取りに行かなければというところでの変更だった」という。このフォーメーションチェンジにより、川崎Fは前線の選手が一人増え、それにより「ボールの回しもスムースになりました」(田中)という状況が生じる。攻勢に出る川崎Fに対し、浦和はマンツーマンディフェンスの担い手であった山田暢久が60分に。坪井慶介が69分に相次いで足をつらせ、交代を余儀なくされていた。中村によると浦和は2点目を奪って以降、守備に緩みが出ていたと話しており、フレッシュな選手の投入によってもその状況は打開できていなかった。
それまでも攻勢に出ていた川崎Fの反撃が始まるのは、63分の森谷の投入からである。中村は森谷の動きについて「賢太郎が間々で顔をだしてボールを受けてくれた」と振り返る。大久保も「賢太郎が入ってきて、あいつ自身がすごく前に行こうというプレーばかりですごく積極的で、それで周りも乗せられたというのはありますね。今までは途中から入って劇的に変わるということがあまりなかったので、賢太郎にとっては自信になったと思いますしチームとしてもプラスだと思います」と森谷のプレーぶりを賞賛。
森谷自身は「2−0で負けていたので、逆にやることははっきりしていてゴールを目指してプレーすることが求められていました。だからこそ気持ち的には楽でした」と謙遜するが、森谷の前方への推進力は川崎Fに力を与えていた。
森谷投入から4分後にレナトが1点を返し、浦和は自信を無くし始めたという。
「1点取ったことですごくがっかりしてた。これは行けると感じた」と中村。そんな状況で生まれた大久保の79分のミドルシュートによって浦和は自信を喪失。中村は「2−2に追いついた時には、(浦和の選手は)やばいという顔をしてた。これは行けるという雰囲気は出てた」と振り返る。田中も「相手は顔が疲れていて、3点目は行けるだろうと思ってましたし、嘉人さんのミドルの2点目。あれは精神的にも勇気づけられました。あれは相当すごかったです」と話す。
イケイケの川崎Fは同点ゴールの1分後に大久保が森谷の突破からの折り返しを流し込み逆転。2点を失う過程を考えればありえないような逆転劇を完結させる事となった。浦和を精神的に追い詰めたという意味で、大久保の79分のミドルシュートの効果は絶大で、それをもたらした森谷の効果的な運動量も見事だった。
アウェイゴールを2点失ったのは痛手であり、また試合終了間際の決定機を中村が外した場面を含め、2点差以上を付けて勝利できなかったことは残念だった。ただ、それにしても結果的にホームで先勝したこの結果が大きいのは間違いない。
一方の浦和は、固い守備から川崎Fの攻撃を封じ込め、2点を先行していただけに悔やまれる敗戦となった。ただ、得点差はわずかに1点だということ。アウェイゴールを2点手にしているということを考えると、勇気を持ってホームでのセカンドレグを迎えられるはずだ。先勝した川崎Fは、引き分け以上で決勝進出が決まるが、浦和にも挽回のチャンスがあるという意味でスリリングなセカンドレグとなることだろう。1ヶ月後の決戦がどのような帰結を迎えるのか、楽しみである。
以上
2013.09.08 Reported by 江藤高志
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