伝統のビッグトーナメント「天皇杯」が日本各地で行われている。２回戦から登場するJクラブに挑戦するのは、J入りを目指すプロチームもあれば、アマチュアの精鋭、大学生などさまざま。トーナメント戦の醍醐味といえば、やはり下位リーグ所属チームが上位リーグ所属チームを破ることだろう。
昨年はJ２の千葉が準々決勝まで駒を進めたが、ベスト８のうちJ１勢が７チームと、大会自体はそれほど荒れなかった。一昨年はベスト８のうちJ１は５チームで、京都、FC東京のJ２同士の決勝で最大のサプライズが起きた。今年はどんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

大分銀行ドームでは、公式戦初となるJ１の大分トリニータとJFLのHOYO大分の『大分ダービー』が実現した。
まずは挑戦者として挑むHOYO大分だが、JFLでは11位と順位を見れば良くも悪くもないという評価になるが、２年目の結城治男監督の下で着実にチームも選手個々もレベルアップしている。このチームの特徴は局面でのショートパスを主体とし、独特のパスサッカーを追求している点だ。最近は「自分たちのサッカーを展開しながら臨機応変に対応できるように」（結城監督）と、１０５m×６８mのコート全体を使ったサッカーも展開し、ダイナミックさも加わった。
J経験者のFW中嶋雄大を軸に、リーグ戦９得点で得点ランキング６位の島屋八徳、トリニータU―18出身のテクニシャン山瀬彰也、エースナンバーを背負う福満隆貴など20代前半の攻撃陣に勢いがあり、彼らが勢いづけば大番狂わせの可能性もなくはない。
これまで大分トリニータとは練習試合で幾度と対戦しているが、ガチンコ勝負では今回が初めて。「気負うことなく普段通りのプレーをすればいいし、我々にはそれしかない」と結城監督は平常心で戦うことを強調するも、選手は否が応にもモチベーションは高まっている。一泡吹かせてやろうとの思いは強い。

迎える大分トリニータは本来であれば胸を貸す立場であるが、リーグ戦では厳しい現実を突きつけられている状況なだけに盤石ではない。「公式戦であり、カテゴリーの異なるチームとの対戦は難しさがあるが、勝つことが大前提」と田坂和昭監督は結果にこだわるようだ。
今週１週間は試合開催時間の13時に合わせて練習を行い、選手の生活リズムを整えた。また、メンバーを固定しておらず、これまで出場機会に恵まれなかった選手やコンディションのいい選手を優先に起用する予定だ。
先発が濃厚なGK清水圭介は、「得点や失点で状況が動いたときがポイントになる。気持ちの変化を抑え、マイナスの部分を取り除きたい」と気を引き締めた。ここまでのリーグ戦ではわずか１勝しかしていないチームに足りないものは、後方にいる選手が試合全体を見てコントロールできなかったことと清水は承知している。だからこそ自分が流れを変えたいという思いは強い。
清水以外のチャンスをもらった選手も、リーグ残り10試合の起爆剤になり得る存在だ。「勝つことが特効薬」（田坂監督）である。リーグ戦につながる結果と内容で、忘れていた勝利の味を思いだしたい。

大分ダービー、郷土の誇りを懸けた一戦は大分銀行ドームで13時キックオフ！

以上

2013.09.07 Reported by 柚野真也