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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【第93回天皇杯 2回戦 甲府 vs 福島】プレビュー:2年連続で福島ユナイテッドに負けることは許されない甲府。リーグ戦で足りなかった何かを手に入れるカギはトライできるかどうか(13.09.07)

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東京にオリンピックが来るかどうかに世間の関心が集まっているが、山梨では甲府が2つカテゴリが下のリーグ・JFL1年生の福島ユナイテッド(去年はJ2と地域リーグ)に「2年連続で負けることはないわなぁ」という興味が小さくはない。ザックは甲府から誰も連れて行かなかったし、次節は一週間後だから甲府は万全で戦える。サッカーと子育てはプラン通りにはいかないもので、やってみないと分からないけれど、天皇杯2回戦の福島戦だけは、どんな想定外のことが起こっても甲府は勝利という結果しか受け入れられない。

サッカーにロマンを求めることには甘美な魅力があるが、ロマンチックが過ぎると危険がいっぱい…。ただ、ロマンの香りがしないサッカーに魅力が足りないこともここ数年改めて感じる。リアリストでありながらロマンも求め続けるバランス感覚、そしてそのバランスの中で結果も出すことが難しいのだ。日本に住む日本人でありながらも、両者が高い位置でバランスを保っているチームをサポートする喜びを味わい続けたければ、Jリーグを鼻で笑ってバルサかマンUのサポーターを気取るしかない。甲府のファン・サポーターの多くは、大木武(現・京都監督)、安間貴義(現・富山監督)が監督のころは、後者に軸足を置く甘美を味わいながらサッカーに向き合い、その素晴らしさと難しさを経験したような気がするが、今は前者に軸足を置きながらもロマンを忘れないで、その新しいバランスを取ろうとしているのではないだろうか。3回の昇格と2回の降格を経験し、見る側の幅と深さも広がっているのだと思う。

昨年は城福浩監督ものとでJ2で優勝して3度目のJ1昇格を果たしたが、天皇杯は東北リーグの福島ユナイテッドに延長戦の末にPK戦で敗れている。お互いにレギュラーのほとんどを温存して臨まざるを得なかった一戦だったが、甲府は「負けたからよかった(24戦無敗で優勝)」と言えなくもない。城福監督は「去年は日程的にも厳しく、ターンオーバーでも勝てると思って全部変えた。ポジティブに捉えれば、(天皇杯で)負けたメンバーが紅白戦で必死にやってAチームが勝てなくなったのが天皇杯が終わった後のこと。負けたあとでポジティブな効果を探したらそうなる。そうしないといけない状況だったけれど、(福島に)勝ってAチームが勝てなくなるのが一番いいんですけどね」と、本音を1年後に話してくれた。現実的な部分をしっかり押さえつつ、ロマン(理想)を見据えるといってもいいのがJFK甲府2年目の現状だと思うが、今年の天皇杯に関しては「このチームに足りないものをもたらすトライをしたかった。そういう選手をレギュラー陣にまぶした」というメンバーで臨む。

ファン・サポーターだけでなく、記者も“まぶした選手”が気になるが、先発で出るか出ないかは別として、FW・ポッチケ、GK・岡大生、MF・若杉好輝(甲府U-18、第2種契約)あたりに加えて、ケガから回復してきたMF・羽生直剛らのプレーが楽しみ。甲府が勝って隣のヤマも順当に行けば3回戦はJ1湘南が相手。ここまでチャンスを手にできなかった選手にとってみれば、天皇杯で勝てば次のチャンスにつながるということになる。天皇杯要員などはいないから、自動的にチャンスが来るということはないが、チャンスが続くことは事実。昨年の天皇杯で先発して120分間戦い、PK戦では2本も止めた岡大生は、「今年は負けられないし、PK戦にはなりませんよ。声でディフェンスラインを動かしてピンチになる前に相手のチャンスを潰したい。危ない場面でも積極的にチャレンジして守備範囲の広さをアピールしたい」と、荻晃太と河田晃兵を追撃する気は満々。目の前の相手(福島)に勝つことに全力を傾けるが、3回戦、4回戦、5回戦と勝ち進んでJ1クラブ相手に結果を出し続けることも意識している。

福島はJ2甲府に勝った後、J1新潟にも勝ってベスト16入りを果たした昨年の天皇杯。難しい状況が続く福島県の星となる素晴らしい躍進だったし、タイトなスケジュールのもとでJFL昇格も果たしたことは尊敬に値する。開幕2連勝でJFL1年目をスタートした福島は、その後は勝ち切れずに下位にいるが、こんなことは大きな問題ではない。カテゴリーが上がれば難しくなるのは当然だし、困難な状況でも諦めずに戦い続けていることこそが福島県民の力になるのだと思う。JFLは憂さ晴らしのためのリーグではない。とんとん拍子で勝ち続ける以上に力になるのかもしれない。竹鼻快(GM)監督代行は、「昨年に引き続き甲府と対戦できることを光栄に思う。J1チームとの対戦は福島にとって貴重な経験。チェレンジャーとしていいゲームができるようにチーム一丸となって戦いたい」と2回戦にむけてコメントを寄せてくれたが、リーグ戦で感じているかもしれない閉塞感を打ち破る、思いっきりの良さを発揮したい一戦だ。業務提携した湘南から期限付き移籍で加入した吉濱遼平と白井康介の、湘南の暴れん坊DNAを感じさせる攻撃力、岐阜から加入してきたファビオの迫力、野田明弘の巧さに加えて、甲府でも愛された久野純弥の根性の走りと、福島をよく知らなくても武器はいくつも思い浮かぶ。今の甲府はかなり守備が堅いので、どうやってバランスを崩そうとしてくるのか興味があるが、去年の対戦よりは組織的なフットボールになるはず。

J1にカテゴリーを上げ、残留を最大で最低の目標にするために、ロマンに走りたい気持ちを少し我慢してリアリストとして戦う甲府。JFLにカテゴリーを上げて下位からなかなか順位を上げることが難しい福島。お互いに天皇杯では勝利という結果が欲しいが、それを新しい何かを通じて手にしたい。そのためにはトライすることが欠かせない。そしてそのトライからここまでのリーグ戦で足りなかったものをどっちが手にするのか。キックオフは13時。9月7日の天皇杯は山梨中銀スタジアムが一番熱く、暑くもなりそうだ(最高気温の予報は31度)。

以上

2013.09.06 Reported by 松尾潤
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