本文へ移動

今日の試合速報

ルヴァン 準々決勝 第1戦
ルヴァン 準々決勝 第1戦

J’s GOALニュース

一覧へ

【第93回天皇杯 2回戦 大宮 vs 岡山NE】プレビュー:起こすか下克上、見せるかJ1の貫禄。中国リーグの雄・ネクスファジ、NACK5スタジアム大宮に見参!(13.09.07)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スタメン起用が濃厚なベテラン橋本早十(左)と、彼に期待を寄せる小倉監督

大宮にとっての天皇杯緒戦、ホームNACK5スタジアム大宮に迎えるのは、1回戦で鳥取県代表・米子北高校を2-0で降したファジアーノ岡山ネクスト。J2ファジアーノ岡山傘下のアマチュアチームであり、以下、クラブ公式の呼称にならって『ネクスファジ』と表記する。

ネクスファジは2009年、ファジアーノ岡山のJ2昇格を機に、出場機会の少ない若手や故障明けの選手に試合経験を積ませて戦力強化を図る目的に設立された。JFL昇格を目指し、今年は地域リーグである中国サッカーリーグ(CSL)を戦っている。CSLは10チームがホーム&アウェイの2回総当たりで行うが、ネクスファジの成績は9月6日現在で12勝1敗の2位。各チームで消化試合数が異なり、1位のデッツォーラ島根が13勝1分1敗と2試合多いため、自力優勝が十分可能な位置に付けている。
つまり少なくともJFL下位相当の力を持つチームであり、選手もいったんは岡山のトップチームと契約するほどだから、その質も決して低くはない。基本布陣はトップチームと同じく、1トップ&2シャドーの3−4−3。全体をコンパクトに保って前線から積極的にプレスをかけ、速攻につなげる。日章学園出身で一昨年のJFAプリンスリーグU-18九州1部得点王の実績を持つFW藤岡浩介、JFAアカデミー2期生でゲームメイク能力に優れたMF幡野貴紀、裏抜けを得意とするFW竹内 翼、攻撃の牽引役であるFW新中剛史らのくり出すカウンターは要注意だ。
また、選手構成にはトップチームの都合が優先され、小所帯で回していかなくてはならないチーム事情から、多くの選手が複数のポジションをこなすこともネクスファジの特徴だ。CSLではベンチ入りのサブメンバーがたった3〜4人ということも珍しくない。1回戦で3バックの一角に入った山本拓矢はFW登録の選手だし、中盤から前の選手はボランチ、サイド、シャドー、どこでもできる(というよりやらなければならない)ため、それが流動的に動いてくるとなると、相手チームにとってはなかなか厄介だ。

一方大宮は、先週末のJ1第24節・横浜FM戦で勝利し、連敗をようやく8でストップさせた。残り10試合で上位争いを演じるためにも、ベストメンバーを組んで戦術や連携の熟成を図りたいところだったが、ノヴァコヴィッチとズラタンがスロベニア代表に、ニールがオーストラリア代表にそれぞれ招集されている。また金澤 慎がケガで離脱。さらには菊地光将が水曜日まで別メニュー調整、青木拓矢も水曜日に軽く捻挫して練習を途中で引き上げた。菊地と青木にはできれば無理はさせたくないが、その2人が入らなければベンチ入り可能なフィールドプレーヤーが4人という、なかなか厳しい状況だ(大学生の特別指定選手は天皇杯には出場できない)。「リーグ戦と同じつもりで勝ちに行く」という小倉 勉監督は、「リーグ戦に出ているか出ていないとかは関係なく、この試合に勝つためのメンバーを選ぶ」という。もちろん欲を言えば、「それがチームの底上げにつながれば」という結果も得たい。

注目の選手は橋本早十。今季はいまだ出場機会がないが、リーグ戦23節・川崎F戦では久々にベンチ入りした。その正確な左足のキックは歴代の指揮官から高く評価されており、小倉監督も「人に合わせるのはお前の良さだが、もっと受け手に要求してもいい。才能では中村俊輔や中村憲剛に引けを取ってないんだから」と彼に直接話すなど期待をかけている。ドリブルでボールを運ぶチョ ヨンチョル、高い戦術眼で前線とのリンクマンになる渡邉大剛の2枚以外に本職のサイドハーフが不足している大宮にとって、彼らとはタイプの違う橋本の復権は、残り10試合を戦う上で大きなポイントになるに違いない。

大宮としてはまず、試合の入り方に注意したい。忘れもしない2年前、福岡大学に下克上を食らったときは、開始直後にいきなり清武功暉(現サガン鳥栖)にペナルティエリア内までえぐられ、ゴールにこそならなかったものの大学生チームを完全に勢いに乗せてしまった。「あのときはふわっと入ってしまった。勢いに乗せてしまうと、相手はどんどん来て、逆にこっちは力を出せないままになってしまう」(上田康太)、その苦い記憶をくり返してはならない。「アグレッシブに前から来ても、慌てなければ問題はない。しっかり回して、必要であればロングボールも使って、自分たちのサッカーをする」(鈴木規郎)、守備では「ボランチから良いボールが出てきて、3トップがスペースに走ってくるので、そこをしっかり抑える」(上田康太)ことができれば、大宮の優位は揺るがないだろう。
ただ、もう一つ心配されるのは、13時キックオフの当日の天気と気温だ。ネクスファジは地域リーグで夏場の炎天下の中の戦いに慣れていて、その条件下でも運動量を落とさずにハードワークしてくる。9月初旬に行われる天皇杯緒戦で、Jチームが下位カテゴリーのチームに苦しめられる理由の一つがそこだ。大宮にとっては幸い、天気予報では明日は曇りのち雨、最高気温29度となっているが、ここ数日の変わりやすい天気を見ていると当てにならない。晴れて暑くなれば、もちろん岡山有利。天候がどちらに微笑むのか、そこも気になるところだ。

また、思わぬ邂逅という天皇杯ならではのドラマもある。ネクスファジを率いるのは岡山のトップチームのコーチでもある牧内辰也監督だが、大宮の長谷川 悠とは2011年の山形で選手とコーチの間柄だった。「コーチとしてサポート役だったからサッカー観とかは分からないけど、熱い人だった。久々に会えるのは楽しみ」と、長谷川は語る。そしてもう一人、牧内監督がかつてU-19日本代表を率いていたときの教え子が青木拓矢だった。「高校生のとき、初めて世代別代表に呼んでくれた。大宮に入って出場機会があまりなかったときも、代表では中心選手として使ってくれた。あそこで大きな経験をして成長できた」と振り返るように、青木にとってはまさに恩師だ。「あのときから成長した姿を見せたい」と、青木も対戦を心待ちにしている。

もう一つ気になる点として、この試合はNHK-BSの中継が入ることになっている。NHK-BSで中継される天皇杯は下克上が起こる率が高いことに定評があり、事実2年前の福岡大学戦もそうだった。大宮の選手も監督も「難しい試合になる」と口をそろえるが、相手を侮ることなくその危機感を持って戦えるかどうかが試される。また試合とは関係ないが、個人的には、ネクスファジのサポーターたちが「おーかやっまです、おっかやまです」のチャント(メロディは桃太郎)を歌ってくれるのかどうかも大いに気になる。2回戦ながら見どころの多いこの試合、足を運べる方はスタジアムで、遠方の方はテレビで、ぜひ楽しんでいただきたい。

以上

2013.09.06 Reported by 芥川和久
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/09/05(木) 00:00 ハイライト:川崎Fvs甲府【ルヴァンカップ 準々決勝 第1戦】