日中は激しい雨に見舞われた、ニンジニアスタジアムのある愛媛県松山市。雨はキックオフの頃には上がっていたが、ピッチには水たまりができてどこでボールが止まるかわからない状況になっていた。そのピッチコンディションを考慮して、愛媛は「雨の日のサッカー」を徹底するスタメンで富山戦に挑んだ。前線には３バックで起用されるはずだったハンヒフンが入り、190cmの渡辺亮太とともにロングボールのターゲットになった。そして状況に応じて３トップの一角、重松健太郎が落ちてこぼれ球を拾い、２次攻撃を狙った。
こうして最終ラインからどんどん前に放り込むサッカーに徹した愛媛に対して、富山はサイドで一度起点を作り、そこからの早めにクロスを放り込み愛媛のゴールに迫った。しかし、愛媛はハンの代わりにアライールを最終ラインに置き、守備面での高さ対策も万全。園田拓也とロングボールを跳ね返して富山をゴールから遠ざけた。

こうして両チームとも長いボールが多い大味な展開になったが、その中で前半の愛媛は渡辺や重松がパンチ力のあるミドルシュートでゴールを狙う。一方で、富山はサイドからの攻撃とセットプレーも生かして反撃。前半40分には左サイドからのクロスを黒部光昭が落とし、白崎凌兵がシュートを放ったが、これはGK秋元陽太の体を張ったセーブに阻まれた。さらに後半11分には、右サイドから苔口卓也のクロスに黒部が頭で合わせたが、秋元の正面を突いてしまう。逆に愛媛は後半12分に重松がミドルシュートを狙ったが、今度は富山のGK守田達弥がファインセーブ。続けて愛媛は右サイドを突破した渡邊一仁のクロスにハンが飛び込んだが、シュートは枠をとらえられなかった。

結局、両チームとも最後まで決定打を欠いてゴールは奪えず。勝点１を分け合った。結果論ではあるが、今節は下位チームが軒並み敗れていたために、愛媛にとっても富山にとっても勝つことができれば大きな勝点３になっていただけに勝点２を失った喪失感は大きい。しかし、安間貴義監督は「根気強くやってくれて勝点１につながった」と振り返り、秋元が「勝ちたかったが、ゼロで抑えられたことはよかった」と収穫を語ったように、連敗と複数失点が続いていた両チームにとってはその両方を止められたことはポジティブにとらえられる。

また、両チームでＪデビューを果たした新戦力もチームに貢献。富山は内田錬平が最終ラインに入ったが、落ち着いたプレーで愛媛の攻撃に対応。連敗を止めるだけでなく、11試合ぶりの完封にも貢献した。一方の愛媛では初出場を果たしたハンが持ち味の高さとスピードを前線で披露。ゴールに向かってしかける姿勢も積極的で石丸清隆監督も高評価を与えた。こうして理想的な結果とはいかないまでも、収穫も手にした両チーム。この勝点１を次の週末からはじまる天皇杯や残りのリーグ戦の結果に結び付けたい。

以上

2013.09.02 Reported by 近藤義博