本文へ移動

今日の試合速報

ルヴァン 準々決勝 第1戦
ルヴァン 準々決勝 第1戦

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第32節 札幌 vs 岡山】レポート:後半アディショナルタイムの同点劇。札幌と岡山。ともにプレーオフ進出を目指す両チームにとって、この勝点1は今度、どういった意味を持つのか。 (13.09.02)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「基本的には、勝点3が1になったと思っています」
試合後の会見で札幌の財前恵一監督はそう振り返った。つまりは、勝つべき内容の試合を引き分けにしてしまったということなのだろう。

この試合、立ち上がりから札幌が岡山陣内へと攻め込んでいく。テクニックのある前田俊介とスピードのある内村圭宏のコンビに、三上陽輔、荒野拓馬という若いアタッカーが積極的に絡んで細かくパスを回す。16分ころには右サイドでテンポよくボールを動かして相手ゴールに迫り、スタンドを沸かせた。

個人技という部分では、トリッキーなプレーを繰り出す前田が主にフォーカスをされがちだが、一瞬の判断で最良のプレーを選択できる内村のセンスにもまた、ある種、天才的なものがあると評してもいいだろう。この試合でもファーストタッチでスペースへと持ち出したり、ちょっとしたボールの転がしで視野を広げたりと、見事なプレーぶりで攻撃に勢いを与えていた。この内村と前田との連係は見る者の視線を集めるし、J2の中ではトップレベルのアイデアを持っていると言えるだろう。そして彼らに触発されたかのように三上、荒野も崩しのアイデアを捻り出し、テクニカルなパスワークで攻め続けた。

ただし、そうした前半の札幌を「攻撃の形がなかなか作れなかった」と財前監督は見る。確かに、細かなパス交換で狭い局面から攻撃を繰り広げていたが、必要以上に難しいパスを選択してしまっていた感は否めない。「シュートまではまったくいけていなかったという印象」と指揮官は手厳しく続けた。シンプルさを欠いたというころだろう。

そして39分。前線へと動き出した三上に向けて前田が狭いコースを通すパスを狙ったが、これが相手DFに引っかかり、そこからのカウンターで岡山に島田譲、押谷祐樹とつながれ、最後は桑田慎一朗に蹴り込まれて先制点を許してしまう。

そうした試合は後半へと折り返すのだが、札幌は風上に立ったこともあり、前半とはうって変ってシンプルに縦にボールを運ぶ戦いにシフトチェンジする。すると48分に内村が、53分に三上が蹴り込んであっさりと逆転に成功。前半は何本ものパスを巧みにつないで相手を崩しながら無得点だったのが、手数をかけないシンプルな攻めに転じたとたんに相手にミスも出て続けてゴールが生まれるのだから、あらためてサッカーというのは面白い。

ただし、この試合の焦点はここから先の展開にあるはずだ。
2−1のスコアでリードした札幌は、一般的な考え方でいけば、その後は守備ブロックをセットし、同点を目指す相手を引き出しておいてカウンターを狙う戦い方を徹底すればよかった。だが、この日の札幌はそうしたことはせず、リードを奪ってからも積極的に前に出て行った。

これについて財前監督は「前半からムダなバックパスに対しても相手が結構プレッシャーにきて、結局蹴る場面が多かったので、基本的には前につけてもう一回もらうという形でということで、ハーフタイムに指示を出した」、GK杉山哲も「チームとして、3点目を取りに行こうという意思統一ができていた」と言う。

なるほど確かに財前監督の分析は的確だと思うし、札幌にとってはホームゲームであること、若い選手の力を引き出すべくアグレッシブなスタイルのチーム作りを行っていることなどを考えると、必ずしも間違った試合運びだとは思わない。狙い通りに3点目が奪えていれば、勝利も決定づけることはできたわけで。
だがその結果、1点をリードしているチームがカウンターで脅かされるという、見方によっては拙い試合展開になってしまっていたこともまた、否めない。相手の岡山はカウンターを得意とするチームであることを考えても、リードしていながらも縦に急いだ札幌の戦い方は、リスクが大きかったように感じてしまう。

そして後半のアディショナルタイム。石原崇兆が蹴った右CKを近藤徹志が頭で合わせて、岡山が同点に追いついた。2−2となり、タイムアップの笛も鳴った。

あらためて試合を総括していくと、繰り返しになるが、やはりポイントは札幌のゲーム運びだったと思う。攻撃的な選手が多く、若くてイキのいいアタッカーの成長を促すことなどを考えると、リードを得てからもホームスタジアムで積極的に攻めたというのは、本質的なところでは正解なのかもしれない。ただしその一方で、結果として「前半からあれだけ攻めていながらも勝てなかったことは、あまりにももったいない」(荒野)試合にしてしまったことを考えると、目標であるプレーオフ進出を果たすには、守備意識を高めながら自陣でボールをゆっくり動かしてゲームをクローズするような、よりシビアな試合運びも今後は必要になってくるかもしれない。もちろん、攻撃的な姿勢を貫いて目標達成ができたならば、それがベストであることに違いはないので、今後の札幌の戦いには注目をしていきたいところだ。

また、アウェイで勝点1を得た岡山についてだが、1−2と逆転されてからの時間帯について「去年までの我々だったらあのまま終わっていたんじゃないかなと思います」と影山雅永監督が発したように、セットプレーながらも、最後に追いついた部分に非常に大きな手応えを感じたようである。

札幌にとっては「勝点3が1になった」という勝点1。岡山にとっては、成長の手応えとなった勝点1。ともにプレーオフ進出圏内に近い位置にいるチームだが、この試合で積み上げた勝点1が今後、どういった意味を持っていくのか、注視していきたいところだ。

以上

2013.09.02 Reported by 斉藤宏則
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/09/08(日) 00:00 ハイライト:清水vs長崎【明治安田J2 第30節】