前節神戸は、福岡との試合に勝利はしたが、CBのイグァソンが累積警告で出場停止となってしまい、今節の北九州戦の先発は金聖基が予想されていた。しかし安達亮監督がスタメンに選んだのは、リハビリから復帰したばかりの、ベテラン北本久仁衛だった。その狙いを安達監督は「北九州の攻撃がダブルボランチ含め、後ろから鋭い縦パスがFWと攻撃的MFに入って来る。特にFWの2人に入ってしまって、そこで自由にボールを扱われると厳しい。非常にコンディションも良かったし、北本は1対1に強いので、そういう役割で北本を思い切って使った」と、試合後に説明していた。その狙いは見事にハマり、北九州は前を向かせてプレーをさせてもらえず、ペナルティエリア内でも自由を奪われた。しかし神戸の攻撃も、サイドからは何度もチャンスを得てはいたが、中を固める北九州の守備に苦しみ、ゴールを奪えずにいた。相手のカウンターに細心の注意を払いながら、ゲームを進めて行く両チーム。そんな中、先にゴールを奪ったのは、押されていたホームの北九州だった。中盤でボールを受けた八角剛史が、右サイドの小手川宏基に預けると、フェイントからゴール前にクロスを上げる。「最近、そこにいることが多いので、今日もいいボールが来て（決められて）良かったです」FWとしての、得点感覚を取り戻した渡の、ホーム3戦連発のヘディングシュートで先制した北九州。しかし、その後も神戸の攻勢は変わらず、何とか無失点で前半を終わらせたに過ぎなかった。

FW2人の動き出し、3人目の飛び出しに欠けていた神戸の攻勢に、安達監督は後半開始から着手した。ボランチの田中英雄に替え、FWの松村亮を投入。前半FWの位置でプレーしていた森岡亮太を、ボランチにポジションチェンジ。その策は見事にハマり、後半始まって4分後、松村はプロ初ゴールとなる、貴重な同点弾を叩き込んだ。そこからは、完全な神戸ペース。執拗な攻撃を何度も仕掛け、北九州守備陣をペナルティエリアに貼り付けた。北九州も、GK武田博行のファインセーブ、キャプテン前田和哉の間一髪のクリアで何とか凌ぐが、ペナルティエリア正面で、渡がたまらずファウルを犯し、神戸にFKのチャンスを与える。ゴールまでは約30m。その距離を、迷わず右足で振り抜いたのは、この日35歳の誕生日を迎えたポポ。綺麗な放物線を描いたシュートは、GK武田の手をすり抜け、ゴール左隅に突き刺さり、神戸は逆転に成功。反撃に出たい北九州は70分に、相手DFの不用意なバックパスに反応した池元友樹が、相手GKと1対1になるが、シュートは僅かに左に逸れ、ビッグチャンスを逃してしまう。逆に神戸は、77分に小川慶治朗が相手DFのミスを逃さず、追加点を奪って点差を広げた。

その後、ゴールを決めた小川が不用意なファウルで一発退場。アディショナルタイムに、16節以来の出場だったナムイルウに来日初ゴールを献上し、点差を縮められたが、何とか北九州の反撃を凌ぎ切り、3−2で神戸が勝利を飾った。今季3度目の3連勝で、アウェイの連敗も4で止めた神戸。首位のＧ大阪が長崎に敗れた為、勝点差は2に縮まった。それでも「まだまだ課題が多いなという風に、北九州さんに教えてもらったゲーム」と安達監督も、勝利こそ手に入れたが、内容には不満気は表情を試合後浮かべていた。天皇杯を挟んで、次節は3位長崎との対戦。長崎も、首位のＧ大阪を破って、前半戦で見せていた勢いを取り戻している。この直接対決に勝利すれば、勝点差は12まで広げられ、J1昇格をグッと引き寄せられるに違いない。今節で見せた課題が、その試合で解消出来るか、神戸にとって大きな山場になる。

ホームで敗れてしまった北九州。またもや3連勝とはならなかった。ミスを逃し、ミスを許せば、勝利は遠のくのをまたも思い知らされてしまった。すぐ5日に、延期となった熊本戦が控えている。無くしたモノを取り返すのは、勝負の世界では勝利からしか取り返せない。熊本戦での、選手たちの奮起に期待している。

以上

2013.09.02 Reported by 坂本真