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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第30節 熊本 vs 徳島】レポート:内容で圧倒しながら連敗を喫した熊本と、無敗記録を9に伸ばした徳島。最後の最後で見せつけられた、上位チームの勝負強さ(13.08.22)

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17対4と、4倍以上に上ったシュート数にも表れている通り、ボールを握って終始試合を優位に運んでいたのは熊本である。それでも、藤本主税が「決めるところでしっかり決めることの意味の大きさを痛感した」と話したように、得点を奪えず、逆にどんな形であれ相手に得点を許せば勝点を積み上げていくことはできない。連敗を喫した熊本はこれで19位に後退。依然、厳しい状況から抜け出せないでいる。

試合が動いたのは残りわずかとなった86分のこと。スローインからのリスタート、深い位置で粘った高崎寛之からのリターンを受けたアレックスが中央へクロスを送ると、片山奨典が一度はクリア。しかしこれを拾った津田知宏は、ボールを抑えることなく思い切って前に運ぶ。倒れこみながらも津田が左足で放ったシュートは南雄太の脇を抜けてポストを叩き、最初のアレックスのクロスに詰めたまま残っていた大崎淳矢の前に転がる。1−0。この1点が勝負を決めた。

とは言え、池谷友良監督代行が「89分はゲームを支配できたと思う」と話したように、試合の大部分で熊本が流れをつかんでいたのは確か。4試合ぶりに先発した齊藤和樹が頻繁に徳島DFラインの裏を狙う動きを見せ、また場合によっては下がってスペースを作る等、地味な動きを繰り返しながら攻撃の起点となる働きをしていたことも効いていた。前節の群馬戦を受け、「もう少し高い位置でボールを動かしたい」と藤本主税が話していたが、実際にこの試合では15分過ぎからボールが回り始め、ボランチも押し上げて組み立てに絡む場面を作った。藏川洋平が持ち上がって齊藤とのワンツーで抜け出した22分の場面や、藤本、原田拓、堀米勇輝、齊藤、そして藤本と、ワンタッチの小気味良いコンビネーションで中央を突破した33分など、徳島の選手たちが間合いを詰める前に、うまくアプローチを外していくボールの動かし方からチャンスにつなげている。最終ラインの橋本拳人やボランチの黒木晃平から何度も効果的な縦パスが入ったのも、そうした前線の動きも含めて「皆がいいポジションを取れていた」(堀米)からこそだ。
ただ、縦に入れたあとの展開やシュートに持ちこむためのもうひと工夫、そして細かい部分での精度等、得点に至らなかった理由はいくつかあろう。ハーフタイムに池谷監督代行は「クロスの時にはゴール前に入ろう」という指示を出しているが、特に前半に関してはボックスの外で回す場面が多く、徳島のDFラインを完全に崩しきる形は決して多くはなかった。後半、藤本に代えて仲間隼斗、さらに堀米からウーゴと前を入れ替え、前線でのポイントが増えて攻撃の幅が広がったのだが、前半同様に得点は奪えなかった。

逆に徳島は、「守備をしっかりやりながら耐えていれば仲間が点を取ってくれる」と話した長谷川徹の再三のファインセーブもあって、全員が身体を張って熊本の攻撃をしのいだ。ボールに対しての1つめのアプローチで取りきれなくても、1人が寄せて空いたスペースは他の選手が埋めるという地道な連動を繰り返したこと、また小林伸二監督も述べたように「最後のところで身体に当てるとか、『絶対にやらせない』という失点へのこだわり」から「際(きわ)のところで頑張った成果」(同監督)が、2試合続けての完封勝利につながった。さらには迷った末に配置を変え、キム ジョンミンを投入して前に圧力をかけたことも奏功したと言える。
こうした厳しい展開に持ち込まれながらも最後の最後で得点を挙げて勝ちきったことは、リーグ終盤に向けて間違いなく大きな自信となるはず。接触プレーで頭部を痛め、前半のうちに交代を余儀なくされたドウグラスの状態が心配されるが、誰が出ても遜色ないパフォーマンスを発揮する層の厚さは、昇格争いでも間違いなくプラスに働くことだろう。

対して敗れた熊本。ホームでのデビューとなったウーゴが見事なファーストタッチでスタンドを沸かせ、連携面でも大きな可能性を感じさせたり、組み立てが詰まったところでもボールを動かしながら作り直す場面が増えたりと、確かにポジティブに捉えていい要素は多い。しかし徳島と比較して違いが感じられたのは、ボールやゴールへの執着心の部分。例えば決勝点につながった津田の突破のような、個で打開する場面は少ない。ここ最近、「シュートかパスの判断が大事」ということを選手の口から聞くことが多いが、現状、その判断の精度はまだまだ高める余地がある。
「今日の負けの悔しさは、ピッチでしか取り返すことはできない」と池谷監督代行。幸い、徳島とは来月の天皇杯2回戦で再戦することが決まっているが、まずは中3日と迫った次節・北九州戦(8/25@うまスタ)で、やらなくてはいけないことがある。
 
以上

2013.08.22 Reported by 井芹貴志
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