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【J2:第30節 神戸 vs 東京V】レポート:いい意味で取り越し苦労に終わった一日。背番号「10」の戦列復帰で神戸は連敗脱出!(13.08.22)

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この日、プレスルームには異様な空気が漂っていた。その理由は神戸・安達亮監督の発言に由来する。数カ月前の練習後、囲み取材に応じた指揮官は「3連敗したら、みなさんの前にはいないかもしれない」というコメントを残していた。
もちろん、それくらいの覚悟でシーズンを戦っているという意味だろうが、“3連敗”という具体的な数字だったため、神戸担当記者たちの脳裏に強く残ってしまっていた。“もし負けても監督、大丈夫ですよね”“とりあえず今日勝てば丸く収まる”といった会話があちらこちらで展開される。今季初の2連敗で迎えた神戸の今節は、今までとは異質の緊張感を含みながら始まった。

そんな記者陣の不安を払拭したのが、今季初先発の“ナンバー10”森岡亮太だった。前日練習後、森岡は「背番号が背番号なんで期待されているのは感じます。チャンスをもらえれば、結果を残すように頑張ります」と意気込みを話していたが、この日の練習が非公開だったため、この時点で森岡が出るかどうかも分からない状態。だから、当日のスタメン表を見た記者たちからは“来ましたね”“ついに”といった期待の言葉が口を付いていた。
それに応えるかのように森岡が魅せた。開始2分過ぎ、ボランチの田中英雄が縦パスを供給すると、それをギャップで受けた森岡が前にいたポポとのワンツーでタメを作り、ワンタッチで右サイドのマジーニョへ展開。8分過ぎには奥井諒のパスをバイタルエリアで受けた森岡が、絶妙のトラップから左サイドの小川慶治朗へ決定的なパスを供給。「10」という歯車を1枚噛ますことで、神戸の個性が本来の輝きを取り戻したようだった。小川も「亮太君は前線でタメを作れて、パスの精度が高いのも分かっている。だから迷いなくフリーランできた」と振り返っている。

そのいい流れが実を結んだのが18分。コーナーキックからのパスをエリア内で受けた森岡がドリブルを仕掛ける。東京Vの福井諒司が反応したもののファウルを取られ、神戸がPKのチャンスを得た。キッカーは森岡。神戸側のゴール裏では「10」と大きく書かれた特大ゲーフラが空を切るように乱舞する。大歓声の中で森岡は冷静にゴールネットを揺らした…と思われたが、もう一度やり直し。仕切り直しの2回目は甘いコースに入ったものの、なんとか決めることができた。このシーンを森岡はこう話す。「(やり直しについて)その場ではヒデさん(田中英雄)が(蹴る前にエリア内に)入ったという感じになっていたんですけれど、本人は止まっていたと言っていましたし、まぁ入って良かった。2回目は適当に蹴りました(笑)。思ったより内側に入って相手GKもビックリしてましたもんね(笑)」。冗談交じりに話す森岡には、相次ぐ故障に悩まされた暗い表情はなかった。

その後もしばらくは神戸がゲームを支配する。だが30分過ぎから東京Vが徐々にポゼッションを高めると、33分頃には右サイドの小池純輝のセンタリングをファーで受けた高原直泰が、絶妙の胸トラからシュートを放つ。35分頃には強化指定選手の端山豪がフワッと相手DF裏に送ったパスを、常盤聡がフィニッシュまで持ち込む。そして39分。右サイドバックの井林章が前線に送った浮き球パスを高原がヘディングシュート、GKが弾いたこぼれ球を小池が詰めて同点ゴールを挙げた。
この時間帯について飯尾一慶はこう振り返っている。「DFラインの裏にボールを落とすことで結構チャンスにもなったので、それを継続していこうという話をしました。神戸が最初みたいにプレスに来なくなったというか、前半20分くらいから中盤でフリーになってきたので得点できたんだと思います」。その後も東京Vの時間帯が続き、アディショナルタイムには鈴木惇のFKがポストに嫌われるなど、決定的な場面も何度かあった。だが、追加点が奪えないまま、1−1で前半を折り返した。

そして後半。ゲームの流れを変えたのは、やはり「10」だった。神戸の田中が東京Vの井林から高い位置でボールを奪うと、走り込んだ森岡へパスを送る。エリア内に侵入した森岡の選択肢は、自らシュートを打つか、逆サイドに走り込んだマジーニョにラストパスを送るかの2つ。選択したのは確実性の高いラストパスだった。追加点を決めたマジーニョは「監督からエリアの中にパワーを持って入ることを言われていましたので、その通りやったからボールが来たんが、森岡から本当にいいパスをもらえてゴールにつながった」と話す。悪い流れで前半を終えた神戸にとっては、まさに値千金のゴールだった。

結局、このゴールが決勝点となり、神戸が連敗を脱出。安達亮監督が「選手はよく走ってくれましたし、こちらの望むようなプレーをたくさんしてくれたので、非常に満足しています」と話すように、久々に試合内容に結果が伴う好ゲームとなった。
そして試合後のプレスルームでは“取り越し苦労になって良かったね”といった会話があちらこちらで花を咲かせていた。

以上

2013.08.22 Reported by 白井邦彦
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