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【J2:第30節 栃木 vs 山形】レポート:負けなかった栃木。勝ち切れなかった山形。双方ともに悔いが残るサバイバルマッチ(13.08.22)

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86分過ぎから唐突に降り出した大粒の雨は、ビハインドを背負っていた栃木にとって涙雨にはならなかった。

敗色濃厚の中、同点ゴールが生まれたのは90+3分だった。GK榎本達也が山形ゴール前にロングボールを送り込み、これをパワープレー要員のDF大和田真史が競り落とす。DFラインの背後へ転がったボールに鋭く反応した湯澤洋介が、ペナルティエリア内へと折り返す。ぽっかりと空いたスペースに供給されたクロスに対し、猛然と走り込んで来たのは廣瀬浩二。ためらうことなく左足を振り抜いたシュートにはチームメイトの、ファン・サポーターの思いが乗り移っていた。だからこそ、シュートブロックに入った西川翔吾の足も、GK常澤聡が伸ばした手も弾き飛ばせたのだ。土壇場で振り出しに戻した栃木だったが、1点を返すにとどまった。プレーオフ圏内の6位以内を狙う栃木と山形のサバイバルマッチは、共に1ゴールずつを挙げる痛み分けに終わった。

「今日は試合前から監督がセカンドボールとか、球際での戦いになると言っていたので、そこで負けないようにしようと思っていた」と山形のロメロ フランクが言えば、栃木の本橋卓巳も「そこ(球際)だけはおろそかにできなかった。そこで先手を取られるときつくなるので。なんとか食らいつこうと思ってプレーしていた」と、両チームとも局面の攻防で負けないことを意識して試合に臨んだ。そのことで派手さはないが見応えのある、非常に引き締まった展開が繰り広げられた。

緊迫した序盤にチャンスを作ったのは栃木。6分に高い位置でボールを奪った廣瀬のクロスから久木野聡がボレーシュートを放ち、15分にはFKから廣瀬がヒールシュートで山形ゴールに襲い掛かった。気合いの伝わる立ち上がりを見せた栃木だったが、第19節・神戸戦(2−2)と同じシチュエーションから自滅した。中島裕希へのクサビを當間建文が潰し、本橋と小野寺達也のダブルボランチがパス交換して攻撃に移ろうとした時だった。本橋のパスが小野寺に引っ掛かり、慌てて小野寺がGKに戻したバックパスに力はなく、後方から食い付いたロメロにかっさらわれる。GKとの1対1を難なく制したロメロは2試合連続ゴールを奪い、先制点をもたらした。栃木はほぼ思惑通りに試合を運んでいたのに、1つのミスからまたしても致命傷を負ってしまった。

痛恨の失点を喫した後も下を向かず五分に渡り合った栃木だが、相手を慌てさせるような攻撃を繰り出せない。なぜなら、クロスの精度と、ペナルティエリア内の動きに工夫が足りなかったからだ。そこで、後半の頭に杉本真に代えて菊岡拓朗を投入。この交代が奏功し、栃木の攻撃にリズムが生まれた。攻め手を見出しゴールの匂いが漂い始めたものの、菊岡を攻撃的なポジションからボランチに下げたことでややトーンダウンしてしまう。
「サイドでしっかりボールを保持されて、そこからのドリブル、パスだったりという回数が減った」
試合後に山形の奥野僚右監督がそう話した通り、菊岡を1列下げたことで勢いがしぼんだ。栃木の脅威が薄れたのとは対照的に、今度は山形が攻勢に回る。73分、75分、76分と、立て続けにゴールを脅かしたのだ。辛くも難を逃れた栃木は、冒頭のパワープレーから同点弾を決めて1−1に持ち込んだ。「たら・れば」になってしまうが、菊岡を下げることなく前目に配置していれば、もっと早い段階で追い付き、逆転までできたかもしれない。それだけに悔いが残った。

追い付かれた山形は勝点2を喪失した。その点に関して逃げ切れなかったことではなく、追加点を奪えなかったことを、奥野監督は反省点として挙げた。1点を追う栃木は前掛かりになり、それを逆手に何度か山形はカウンターを撃ち込んだものの、結局は実を結ばなかった。上位再浮上を目論む上で、「必死に来る相手に対して、もう少しのしたたかさ、もう少しの頑張り」(奥野監督)が求められるのではないだろうか。

一方、勝点1を拾った栃木だが、相変わらず失点は止まらず。故に未勝利の試合が11にまで伸びてしまった。山形同様に勝ち試合を増やしていくには、「先制して落ち着いて試合を運ぶことが、今後の課題になる」(大和田)。以前、松田浩監督は原点回帰する意味で、0−0の試合をするのもひとつの手、だと話した。軽率なミスがなければ山形戦で、それを達成できるだけの手応えは少なからず感じ取れた。次節はアウェイの岡山戦。勝点3を掴んで上昇のきっかけにできれば言う事なしだが、今の悪い流れでは高望みばかりもしていられない。まずは相手を完封することに主眼を置き、それを勝利に繋げるためのステップにしてみてもいいのではないか。そんな悠長なことを言っている暇はないが、栃木本来の姿を取り戻さない限り、勝点で10も開いた6位との差は埋まらない。とにかく、無失点。まずはそれを成し遂げる必要がある。

以上

2013.08.22 Reported by 大塚秀毅
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