『柏から世界へ』
ひと文字ひと文字が丁寧に描かれた6つのゲートフラッグが立ち上がり、入場する選手を迎え入れる。入場列の最後尾にいる工藤壮人はメインスタンド前で整列する際、ゴール裏へ視線を投げ掛け、サポーターからの熱いメッセージを受け取っているようにも見えた。
日立台の雰囲気に、おそらく選手たち全員が気持ちを掻き立てられたに違いない。サポーターの後押しを受けた柏の入りは素晴らしく、序盤からラッシュを仕掛ける。
その勢いもあり、先制点は比較的早い時間帯に生まれた。21分、セットプレーのこぼれ球を「コースは見えていたので流し込むだけだった」という工藤が右足インサイドのハーフボレーで丁寧に流し込む。ここまでの柏はホーム先勝のリズムを確実に掴んでいた。
だが、ここからアルシャバブも本領発揮。AFCチャンピオンズリーグ・ベスト8は伊達ではない。
アルシャバブの核となるのは外国籍の3選手、フェルナンド メネガッゾ、ラフィーニャ、マクネリー トーレスである。システム的には4−2−3−1の形ではあったが、メネガッゾとトーレスは奔放にピッチ上を動き回り、サイドにも頻繁に顔を出すことによって柏はマークが掴みづらく守備のマーキングが混乱させられる形となった。彼ら2人へのマーキングをわずかでも怠ると、1本のパスで局面を大きく変えられてしまうため、守備に追われる時間帯が増えていく。柏は試合序盤の勢いが削がれ、押し込まれる展開となった。
また、事前のスカウティングで右サイドのラフィーニャの個人技には相当警戒していたと思うが、マッチアップした橋本和が「速くて積極性があった。キーマンという感じだった」と振り返るように、スキル、スピード、アジリティーの全てで高いレベルを兼ね備えているあたりは、思わず「さすがはACL」と唸りたくなるほどである。
以前、茨田陽生がACLに関してこのようなことを話していた。
「ACLは相手の情報が少ない分、本当の実力が試される」
スカウティングによって相手チームのデータを豊富に持つならば、その長所を消すための策を事前に準備できるが、そうではない場合、手に入れた情報をベースにしつつピッチ上で選手たちが相手の能力や特徴を体感しながら、個人としても組織としても対応していかねばならない。
柏はその対応力ではアジアの舞台で高水準の力を発揮してきたからこそ、ここまで勝ち進むことができている。
前半終了間際にセットプレーのこぼれ球をメネガッゾに叩き込まれ、痛すぎるアウェイゴールを献上してしまい、ピッチ上での対応力を完璧に発揮できたわけではない。それでも後半からは中盤の守備のやり方を変え、メネガッゾ、トーレス、そしてアンカー気味のアブドゥルマレク アルハイバリを大谷秀和、茨田、レアンドロ ドミンゲスの3人でローテーションをしながらケアする形を取る。
そして、いまだ調子の上がらないレアンドロに代え、後半途中から澤昌克を投入することでアルシャバブの核を形成する中盤3枚の効力を消し、さらに澤がアルハイバリの周囲のスペースを使う、あるいは斜めへの動き出しで“中盤底の重鎮”の役目を持つアルハイバリを定位置から引き剥がすことで新たなスペースが生まれ、そこにジョルジ ワグネルや大谷が入り込んでゲーム終盤にようやく柏の攻撃が活性化された。
決定的なチャンスは作ったが勝ち越しはならず、結果論を言えばもう少し早く澤を投入してもよかったのかもしれないが、第2戦へ向けて“アルシャバブ攻略”の糸口がはっきりと見えたのは収穫でもある。
「1−1ではありましたけど、リスクを冒して負ける方が最悪でしたから、そういう意味では後ろは第2戦を考えながらの引き分けだったと思うので、決して悪い結果ではない」(大谷)。
“勝利”という望んでいた結果は手にできなかった。試合内容に関する不満も残れば、アドバンテージも握れていない。ただ、第2戦で勝負を仕掛けるための布石と考えれば、大谷の言葉通り1−1という結果は決して悪くはない。
「実際にプレーして肌で感じたので、次の試合では対応できる。アウェイの試合は今日よりも良い試合になる」。百戦錬磨の男、ジョルジ ワグネルは最後にそう言い残し、ベスト4進出への自信を覗かせていた。
以上
2013.08.22 Reported by 鈴木潤
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