「チームを代表して蹴らせてもらったのに外してしまって、申し訳ないし悔しい。でも過去には戻れないから、次の試合では『自分が勝ちに導くんだ』っていう強い気持ちでやりたい」
前節の群馬戦、前半にPKのチャンスを得ながら決めることができなかった堀米勇輝は、試合の翌日、そう話した。

３戦連続ドローからの敗戦で、４試合勝ちなしという状況になった熊本。順位は変わらないが19、20、21位との勝点差は詰まり、これからはサバイバルがさらに熾烈さを極めていくことになる。堀米が言う通り過去には戻れない以上、前を向いて１つ１つの試合で勝点を積み上げていくほかない。

熊本は今節、吉井孝輔が警告の累積で出場停止。これを受けて先発の布陣にどんな変化があるか注目されるが、19日朝に熊本に帰ってきた選手たちは30分ほどのリカバーメニューに取り組んだのみで、ゲームに焦点を置いたトレーニングは行わなかった。池谷友良監督代行体制になってからは、直前の紅白戦でも（４バックも含めて）複数の組合せを試すことが多いため、今節もどうなるかは実際にオーダーが出るまで読めない部分はある。

可能性として考えられるのは、吉井の位置に黒木晃平が入るか、あるいは橋本拳人をボランチに上げ、新加入の青木良太を最終ラインで先発起用するか、というところだが、中2日という日程を考えるとそれ以外の選択肢もないわけではない。いずれにしてもコンディションを整えることが最優先で、その点で新しい選手がスタメンに名を連ねる可能性も十分ある。とは言え、今節に向けて特別なことを取り入れる時間的な余裕はなく、ここまでの積み上げをベースに、前節できたことを継続、できなかったことを表現するように務めなくてはならない。

迎えるのはクラブ記録となる８試合負けなし（その間にやはりクラブ記録の６連勝を含む）で遂に４位に浮上した徳島だ。11ゴールで得点ランキング３位につける津田知宏と７得点で同18位のドウグラスという破壊力のある２トップ、そこへの供給源となる柴崎晃誠や大崎淳矢、さらに高崎寛之がベンチに控えるといった充実の攻撃陣に目がいくが、シーズン後半に入ってからの好調を支えているのはやはり守備。DF陣には負傷者が相次ぎ、今節もCBを務めていた青山隼が出場停止と状況自体は厳しいのだが、無敗の直近８試合で失点はわずか３に留めている。

前節も初出場を果たしたGK長谷川徹が危ない場面を防ぐ等、新しく出番をつかむ選手がしっかりと求められる役割をこなし、離脱者が少なくない中でもチームとして機能してきたことが、結果が出始めた大きな要因だ。前節の2-0という結果もスコア的には完勝だが、内容としては決して一方的に押し込んだわけではなく、シュート数も富山と同じ９本である。それでも無失点に抑えて取るべき所で確実に取っているのは、「相手のリズムの時に辛抱できている」（小林伸二監督）からであり、そうした戦い方で勝点を積み上げてきた自信が満ちてきたからだろう。

そうした徳島に対して（そして今シーズンの残り試合で）熊本に求められるのは、より攻撃のクオリティを高めること。前節に関しては「群馬のDFラインがコンパクトでスペースを見つけられず、閉じ込められてしまった」と藤本主税が表現しているが、徳島のDFラインも整っており、前の流動性でいかに綻びを作る動きを見せられるかが鍵。早い切り替えで相手の陣形が整う前にフィニッシュに持ち込むこと、常に背後を狙い続け、トライし続けることにくわえて、「もっと高い位置まで運んで、攻撃に人数をかけたい」（藤本）という思惑もあるため、中途半端にボールを失わない技術と判断の正確さ、そして効果的なサポートのための運動量と、適切な距離感を保つ全体的な押し上げも必要だろう。守備では２トップを抑えることが大きなポイントだが、津田らが潰れてからのサイドやボランチの飛び出しにも警戒が必要で、自陣１／３では何よりセーフティな判断を優先したいところ。

５月の対戦では熊本が3-0と圧倒して３連勝を飾ったのだが、全く違う状況で迎える今節。それでも、90分間を通しては自分たちがペースを握る時間も作れるはず。徳島・小林監督が言う「相手のリズムの時に辛抱できるか」、そして前回対戦時のように「いい流れの時に取りきること」（堀米）が、勝点３を得るための焦点となる。

以上

2013.08.20 Reported by 井芹貴志