豊富な運動量をベースにアグレッシブに攻め続ける長崎。ホームのサポーターの声援を背中に受けてゴールを守り続ける福岡。ともにJ1昇格を目指す両チームにとって勝たなければいけない1戦は、バトル オブ 九州であることも手伝って、5分間のアディショナルタイムが終了するまで激しい戦いが続いた。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に、何人もの選手がピッチに倒れ込んだが、その姿は、この戦いが死力を尽くした戦いであったことを物語る。
90分間を通して自分たちのやりたいサッカーをしていたのは長崎だった。戦いの基本は豊富な運動量をベースにした高い位置からのプレッシング。ボールを奪うと、シンプルに長いボールを放り込み、セカンドボールを拾って人数をかけてゴール前に迫る。さらには、前への勢いを活かして相手陣内でFKを得ると、前線の高さを活かすべく、ゴール前へ合わせてくる。しかも、この日の長崎は高木琢也監督が「最近のゲームを考えれば『どうしたのかな?』と思うくらいアグレッシブに戦ってくれた」と言うほどアグレッシブさが際立った。開始5分に挙げた先制点は、ゲームに上手く入れずに緩慢な動きを見せる福岡と、とにかくゴールを目指して前へ出る長崎との差が産んだゴールだった。
だが、試合を制したのは福岡だった。その要因のひとつは、少ないチャンスを確実にゴールに結びつけたこと。いずれも長崎のミスが絡んだものではあったが、その得点に至るまでの経過に、雁の巣球技場でのトレーニングが凝縮された形で表現されていたことが大きい。まずは21分の得点シーン。ボールホルダーに対して激しくプレスをかけてボールを奪うのは、まさに福岡の最大のストロングポイント。そして、ボールを出した選手が動き出して、前を向いた状態で受け直し、そこへ3人目が絡むコンビネーションは、何度も、何度もトレーニングで繰り返してきた形だ。続く27分の逆転ゴールはPKによるものだったが、長崎のファールを誘った三島勇太のプレーの始まりは、トラップで相手を抜き去ったプレー。これもマリヤン・プシュニク監督が就任以来、繰り返し、繰り返し、選手たちに徹底していたプレーだった。
そして、もうひとつの要因は最後までゴールを守り切ったこと。そこには、東京V戦で逆転負けを喫した苦い経験が活かされていた。中原秀人は話す。
「どちらも勝っている状態で途中から選手が入って来たが、選手1人、1人がどういう役割をするのかについて、途中から入って来た選手と確認することが出来たし、入って来た選手がどういう配置で、誰にマークにつくのかがハッキリしていた。しっかりと狙いを持った守備が出来た。また、うちの場合は最終ラインの人数を増やすのではなく、中盤の枚数を増やして守るやり方なので、真ん中にいる自分がどういう守備の仕方をするのかが本当に大事。疲れて動けなくなった時に、どういう守備をするかを意識していた」
そこには、成功も、失敗も、すべてに正面から向きあい、自分たちを成長させていくという姿があった。
さて敗れた長崎は、これで5戦勝ちなし。今シーズン2度目の連敗を喫した。しかし、高木監督は胸を張る。「これ以上のことを望みすぎると大変だと思う。僕自身は今日のゲームは満足。負けてはしまいましたが、気持ちよく眠ることができると思う」と記者会見を締めくくったが、敗れたとは言え、90分間に渡って自分たちのサッカーを表現し続けた姿は、現在の順位が実力によるものであることを証明したことに加え、これからもJ1昇格争いを演じ続けるであろうことを示した。失点のきっかけとなったふたつのミスと、決めきれなかったことが敗因にはなったが、それらを教訓に変えて終盤戦の戦いに挑む。
そして福岡。「3連敗中は、自分たちのサッカーを表現しながら勝つことができず、今日の試合では、90分間を通して、ほとんど自分たちのサッカーができない中で勝点3を取れた。悪いなりにも勝ち方が分かって来たのかなと思う」と話したのは城後寿。目の前に立ちはだかっていた「勝ちきる」という壁を乗り越えたチームは、新たな経験を身に付けて更なる成長を目指す。
以上
2013.08.19 Reported by 中倉一志
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