岡山・影山雅永監督の試合後のコメントは最高に歯切れが良かった。「勝因は相手よりも走りきったこと。奪う、出て行く、そして戻る。一つひとつのバトルを勝ちきる。スタジアムのサポーターの皆さんの声援を力に変えながら、走りきったことが一番の勝因じゃないかなと思っています」。この日キャプテンマークを巻いたＭＦ田所諒は、「『こういうゲームをしなければいけない』、というゲームが出来たと思います」と4試合ぶりの勝利のゲームを振り返った。

岡山が圧倒した前半だった。前半のシュート数は東京Ｖの「１」に対して、岡山は「11」。岡山は、誰かではなく、一人ひとりが自分の役割をより攻撃的に表現したことで流動的な連係が生まれ、フィニッシュに持ち込む回数を増やした。6試合ぶりに先発出場した岡山のボランチ・島田譲は、前線に上がって最終局面に絡み、右ワイドの澤口雅彦はパスワークから中へと切れ込んで行く。ＦＷ押谷祐樹、ＭＦ田所諒の飛び出し、ＭＦ桑田慎一朗のスルー、ボランチ・千明聖典のミドルシュート。そして奪って最前線へとボールを運ぶＤＦ竹田忠嗣、決定的刹那を作り出し続けるＦＷ石原崇兆と、脳内で何度も反芻したくなるシーン、姿があった。

対する東京Ｖは出場停止のMF鈴木惇、ＭＦ飯尾一慶に代わって、ボランチに高木大輔、トップ下に安田晃大が入った。安田の自在な動きは厄介で、ＦＷ高原直泰のアクセントとなるプレーは安定感があった。しかしテンポの速い目まぐるしい展開の中で、岡山の優勢が安定感を増してくるにつれ、防戦を強いられる。ペナルティーエリア内への侵入は許すことになったが、最終局面での守備は枚数も足り、また岡山の精度不足もあり、しのぐことができた。

「ラッキーな形であれ、前半のうちに点が取れたことは良かった」と桑田が話したように、前半の11本のシュートのうちの1本が決まったことがゲームを左右した。前半42分。セットプレーの流れで高い位置に残っていたＤＦ近藤徹志が押谷に合わせたクロスを送り、押谷がシュート。これはうまくヒットしなかったが、こぼれ球に詰めていた澤口がシュート。これをＧＫ佐藤優也が弾くが、再びこぼれ球に澤口が左足を振り抜いて、先制点を決めた。

後半に入ると東京Ｖの動きは改善。4バックに近いフォーメーションを採りながら、狡猾にボールを奪って前に運ぶ。しかし７３分、澤口のクロスがＤＦ石神直哉の腕に当たったというジャッジ。ＰＫのキッカーを務めた押谷は、上手い間合いで蹴って、岡山が大きな追加点を決めた。

東京Ｖは64分にＦＷ端山豪、76分にＭＦ中後雅喜を入れるが、この日、決定機を作ることは出来なかった。プレーオフ圏内進出を目前に足踏み状態となったが、前回3月の対戦時よりも、さらに攻守の切り替えの早さやハードワークが強まり、個の技術の高さにプラスして、厳しいＪ２仕様として全体がまとまっている印象がある。

岡山は加入後初出場となったＦＷ金民均、ＦＷ清水慎太郎との連係に今後の期待が膨らむ。岡山にとって今回は完勝と言える試合だったが、次節対戦する京都は、７月３日の味スタでのゲームで、東京Ｖを圧して５−０で勝利したチーム。岡山は3戦連続でゴールを決めた押谷が出場停止となるため、ゴールの奪い方に注目が集まる。

前節・熊本戦に引き分けた後、影山監督はこう話していた。「この連戦の3試合は本当に大切で、Ｊ２のこれからが見えてきてしまう可能性もある。（今回の東京Ｖ戦は、）個人としてもチームとしてもファイティングポーズをとり続けられるのかどうか、もしかしたらメンタル、強気なところが一番大事なのかと思います」。3日後の京都戦に向けた戦いはもう始まっている。

以上

2013.08.19 Reported by 尾原千明