横浜FC、京都ともに、パスを繋ぐスタイルを標榜するチームだけに、サッカーとしては噛み合った試合が予想された。その意味では、現実に噛み合った試合となったし、サッカーの内容としては京都に一日の長が見られた試合とも言える。しかし、横浜FCのキャプテン、シュナイダー潤之介が「この時期はこういう勝ち方が一番いい」と振り返ったように、暑い夏場であり、また昇格に向けてぎりぎりの戦いが求められる時期だけに、勝敗を分けるのは、サッカー内容にプラスして最後の「ゴールラインを割る」、「ゴールラインを割らせない」泥臭さ。この試合では、横浜FCが忘れかけていた「泥臭さ」を思い出したことが最後の勝利に繋がった形となった。
「相手も来るけどうちも上回ろうということで、コイントスを取ったら風上を取る」(シュナイダー潤之介)という狙いで、前半風上を取った横浜FCだったが、前半の立ち上がりにピッチを制圧したのは京都だった。コイントスに負けた代わりに得たキックオフのボールから数分は京都の独壇場だった。しかし、横浜FCも高地系治のところでボールを収め、捌くことができるようになると、試合は膠着状態に突入。ともに、4-3-3、あるいは4-1-4-1といった同じようなフォーメーションがマッチアップする中で、中央よりはサイドの攻防の場面が多く、特に両チームともに右サイドを使った攻撃を繰り出す展開となる。京都が再び圧力を掛けたのは、前半終了前の7分間。しかし、この時間に横浜FCは体を張った「泥臭い」守備で対抗し、シュナイダー潤之介の好セーブもあり、前半を0-0で終える。そして、前半攻められる中で自然と表現できるようになった「泥臭さ」が、後半につながっていく。
後半に入って、横浜FCは寺田紳一の位置を少し低めに設定し、守備の時にはダブルボランチ気味のフォーメーションを取るようになる。「怖がらずにボールをしっかり受けるところと、(攻撃時に)1つ飛ばしたところを見たりしよう」と山口素弘監督が振り返ったように、この策で京都のプレッシングを受けにくくするとともに、攻撃時の展開力を向上させる。そして、57分に横浜FCは大久保哲哉、61分に京都は宮吉拓実を投入を投入。ここで交代によるペースチェンジに成功したのは横浜FCのほう。大久保投入により、明確に4-4-1-1のフォーメーションにして、大久保へのポストプレーをサポートする形を明確にした横浜FCに対して、京都は同じ形での攻撃を選択。31分に山瀬功治に代えて原川力を投入するが、京都に対する泥臭い守備の形を確立した横浜FCの壁に対して攻めあぐねる。そして、36分、横浜FCが育んだ泥臭さが結実するゴールが生まれる。高地のFKに大久保が合わせたボールが一度はクロスバーに跳ね返されるが、そのこぼれ球をペスンジンが押し込む。京都相手に体を張った守備を見せ続けたペに生まれた象徴的なゴールで横浜FCが先制すると、残り時間は京都もなりふり構わないパワープレーを仕掛けるが、横浜FCの守備のリズムがそのパワープレーを上回る。交代選手も含めて、ゴールライン上でゴールを割らせないプレーを見せ続けた横浜FCが、連敗を脱出する意味の大きな勝利を収めた。
横浜FCにとっては、勝利に必要だった泥臭さを思い出させてもらった試合になったのではないだろうか。山口監督は「内容的にはもっといいゲームを違う試合ではやっていたし、いいと思ったプレーも違う試合でもあった。そういう面よりももっと大事な、良く言うサッカーの本質的な面で球際であるとか運動量、そして気持ち的な面で相手よりいいプレーをしてくれた」と振り返ったように、良いプレーをしながら勝点を落としてきた日々に足りなかったものを取り戻せる試合になった。その事を思い出せたのが第29節というのは、昇格という目標を掲げた横浜FCにとっては遅すぎるかもしれない。ただ、この日中盤で輝きを見せた高地が「ああいうことができるのは、いつもそれができるということ」と述べたように、残り13試合でこの泥臭さを出し続けること。それができれば、必ず再び上は見えてくる。4位京都を破り、さらに横浜FC史上初めて同一シーズンで京都に全勝を決めたこの試合の意味は非常に大きい。
一方の京都は13本のシュートを放ちながら、無得点に終わった。シュート数で言えば、前半6本、後半7本と後半の方が多いが、後半のシュートの大半はパワープレーの時で、よりゴールに近づいたシュートという意味では前半の方が多かった。月並みだが、その前半にゴールを決めていれば、という試合になった。ただ、シーズンが押し迫り、昇格争いに向けた厳しい残り試合は、この試合のようなゲームが続くことが予想される。その決戦に向けて、この試合で出た課題を克服していくことが求められるだろう。
ともに立ち上がりのまずさから敗戦した前節の教訓を活かし、立ち上がりから攻守に全力を出した試合だったことは間違いない。サッカーとしての内容だけでなく、戦う姿勢が見えた、見応えのある試合だった。残り13試合、混戦J2がさらに楽しみになった。
以上
2013.08.19 Reported by 松尾真一郎
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